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2012/09/01

「半七」再び!

 残暑厳しい折、営業中の車中での楽しみは、暇を見つけての居眠り、遭遇した景色(素敵な人)眺め、そして読書である。
 この数か月、なぜかまた綺堂が読みたくなった。
 そう、「半七」の岡本綺堂である。

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← 岡本 綺堂【著】 北村 薫 宮部 みゆき【編】『読んで、「半七」!―半七捕物帳傑作選〈1〉』(ちくま文庫 筑摩書房)

 何年か前、帰郷して間もない頃、自転車を駆って市立図書館へ行き、CDやら本やらを借りまくった。
 そんな折、岡本綺堂が不意に読みたくなり、図書館にある文庫本を読み漁った。

 それから数年、また綺堂熱がぶり返したようである。
 車中で気軽に読むには最適の本。
 すでに古典の域に入っているからだろう、安心して読める。
 
 半七ものが懐かしく感じられるのには、やや変則的な理由があって、それは綺堂が東京芝高輪生まれだということもある。
 本ブログでも幾度となく書いてきたが、小生は高輪に十年近く暮らした。
 そのこともあって、高輪に縁のある作家にも勝手な思い入れをしてしまう。
 島崎藤村がその筆頭だが、そこに岡本綺堂が加わったわけである。

「捕物帳の元祖としていまでも高い人気を持つ「半七捕物帳」」とのことだが、「そんな「半七」に目がない二人(北村 薫/宮部 みゆき)が、名作二十三篇を厳選、二冊にまとめました」というのだから、安心して楽しめるというもの。

 小生は81年から高輪に住み始め、90年まで暮らし、その後大田区へ引っ越した。
 五年前、東京を引き払うことになる。
 東京には78年から在住していたので、30年ほど、東京暮らしを続けたわけである。
 帰郷して五年。東京に、昭和の東京に、大正や明治の東京に、そして江戸時代の芝や高輪、深川、向島、麻布への妙な郷愁感を覚えたりする。

 そのあたりの思いは、改めて書く機会があろう。

 富山は贔屓目に見ても、歴史や文化、伝統の厚みが薄い。
 歴史書や文献を少々読んだだけでは、生意気なことは言えるはずもないが、街中を歩いても、歴史を伝統を嗅ぎ取るのは至難である。
 むしろ、宮本輝などの作家のように、作家らが富山の町や村や道を、川沿いの土手を、どこかの店を訪ね接することで、ドラマを作っていくしかないような気がする。
 
 県などでは、富山の町を舞台とする映画作りに力を入れている。
 そのことで富山各地の町や風景が有名になる、舞台となった町を店を訪ねることで、映画や小説を反芻する楽しみが生まれる。
 その場所を歩くだけで歴史や文化、伝統に自分も関わっているような気になれる。
 
 それは幻想に過ぎないかもしれない。
 でも、幻想や町への思い入れがなければ、どんなに味気ないことか。

 

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