寝た子を起こさないエネルギー源へ
近い将来の日本のエネルギー構造に占める原発の割合をどの程度にするか、ゼロを目指すのか、議論は揺れている。
世論の過半や政府の一部などは、「二〇三〇年代に原発稼働ゼロ」さらには「太陽光や風力など再生可能エネルギーの比率を、現在の約1割から3割に増やす」と主張している。
一方、そんなのは机上の空論だと、産業界や読売、産経新聞などは反論に懸命である。
つまり、原発の代替電源をどこに求めるのか、再生可能エネルギーは、どの程度までの普及が可能なのか、先が読めないではないか。
当面は、火力などに代替を求めるとしても、化石燃料を輸入せざるを得ず、エネルギーコストが高すぎる…云々。
小生は、再生可能エネルギーという観点よりも、寝た子を起こすエネルギー源なのか否かに、今後のエネルギー源を求める基準を求めるべきだと考える。
まずは、再生可能エネルギーとは何ぞや。
資源エネルギー庁の「 なっとく!再生可能エネルギー」なる頁には、「現在わが国の主要なエネルギー源である石油・石炭などの化石燃料は限りがあるエネルギー資源です。これに対し、太陽光や太陽熱、水力、風力、バイオマス、地熱などのエネルギーは、一度利用しても比較的短期間に再生が可能であり、資源が枯渇しないエネルギーです。これらは、「再生可能エネルギー」ともいわれます。石油等に代わるクリーンなエネルギーとして、政府はさらなる導入・普及を促進します」とある。
小生は、石油や石炭などの化石燃料は限りあるエネルギー源だから、再生可能エネルギーへのシフトを急ぐべき、というのではなく、石油や石炭、天然ガス(シェールガスなども含め)は、エネルギーが眠った状態にある。
それを燃える状態にし(実際に燃やす)眠った状態のエネルギーを開放してしまう、だから可及的速やかに、別のエネルギー源にシフトすべきだと考えるわけである。
むろん、原子力もなおさら、眠っている膨大なエネルギーをわずかな量の物質から解放してしまうので、論外なわけである(いうまでもなく、最終処理の不能性という問題がある)。
地球温暖化の危機が喧伝されて久しい。
石油も石炭も、ガスも原子力発電も、本来は眠った状態のエネルギーを人為的に外部に発散する形態のエネルギー源である。
そうでなく、これからは水力、波力、太陽光、太陽熱、風力などに代替電源を求めるべきと考えるわけである。
但しその理由は、限りがあるか否かとか、「一度利用しても比較的短期間に再生が可能であり、資源が枯渇しないエネルギー」だから、ということではなく、いずれも(多くは太陽に淵源するのだが)、現に地球環境に注がれ、多少の技術力を使うことで、すぐにほぼそのまま使えるエネルギー源だから、である。
つまり、エネルギー源として現にあり、現在進行形で地球環境を形態を多少、変えつつも巡っているエネルギー形態なのである。
いずれも、眠っている状態と化したものを技術で(人為的に)無理やり開放するのではない。
現に太陽光は常に光や熱として地球(にも)注いでいる。
いくら豊富な埋蔵量があるとはいえ、石油や石炭、ガス、ウランなど、放っておけばそのままに眠っているはずのエネルギー(源)とは性格を根本から異にする。
再生可能エネルギー源がクリーンか否かは小生は、論点があやふやに思える。
それは、原子力の平和利用だとか、クリーンエネルギーだと喧伝されたのと同じような失敗に陥る危険性を嗅ぎ取ってしまう。
どんな<クリーン>なエネルギー源だろうと、人間が生活や産業に使えば、ダーティなものになるリスクは常に高いと自覚すべきだろう(まだ、再生可能エネルギーの利用割合が少ないから、リスク面が見えていないだけだと思う。これは別の機会に、太陽光発電に関連して述べたことがある)。
そうした自覚と反省の上で、話を進める。
太陽光(太陽熱)が風力に、水力に、波力に、あるいは多くは太陽光(太陽熱)のままに流通している(植物のエネルギー源、栄養源でもある)。
人間は、その流通過程に分け入って、人間活動に使わせてもらう、つまり、現行の流通にワンクッションだけ入れさせてもらう、という考え方である。
この視点で、地熱もバイオマスも、いずれ熱として放っておいても大気中などに開放されるのだから、人間活動に使わせてもらうという視点で、やはりワンクッション、加えさせてもらうという考え方の範疇に入るだろう。
小生なりの単純に表現するなら、これからは地球環境のことを考え、現にいま起きている子(太陽光など)をエネルギー源に、そして寝た子(石油・石炭・天然ガス・原子力)を起こさないエネルギー源活用法へ、というわけである。
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コメント
雪氷熱なんてのもあるんですね。
原子力に頼るのは、最早古い時代になっているのかも、要は原子力は安いということだけでしょう。
新しい再生可能エネルギーはまだコストが高いかもしれない。
しかし未来世代への倫理という観点から、どんどん研究をすすめるべきでしょう。
日本には高い技術力があります。
今が文明の転換点と感じます。
投稿: oki | 2012/09/18 21:19
原子力は、見かけ上、安いだけで、実際は危険性の極度の高さを含め、実は一番、高い。
産業界は、既存の原子力施設への投資が陳腐化するのを恐れているだけ。
それと、アメリカからの報復が怖い。
再生可能エネルギーは、当面はコストが高いかもしれないけど、コスト競争に努めることで、海外での競争力も増すでしょう。
とにかく、今が転換点、岐路なのでしょう。
産業界などが懸念する原子力産業関連の技術ですが、廃炉の技術を極めることで、将来的に日本の存在感を高めることができると考えます。
投稿: やいっち | 2012/09/18 21:53
プラスチックの原料は石油だと思うのですけど、
石油を使い果たして、プラスチックが作れなくなったときに、
どれくらいの電力が必要になるのかな?
なんて思うのです。
プラスチックがなくなれば、人間にとっての地球は、電気なんていらないくらいに終わっているのではないでしょうか。
投稿: 青梗菜 | 2012/09/21 00:39
青梗菜さん
石油、20世紀には、何度も枯渇の危機が叫ばれ、そのたび、新たな油田が見いだされる、で、枯渇の時期が繰り下がるが繰り返されました。
そのうち、石油はある種の微生物が作りだす、なんて説も。
石油、そのうち、これまでは採れなかったような地域(地下深く)から有望な油田が見いだされるかもしれない。
プラスチックは、比較的新しい素材物質。石油から大量生産されるようになって注目されるようになった。
今も原料は圧倒的に石油ですが、生分解性プラスチック(グリ-ンプラ)がいろいろ研究開発され、いくつかは実用化されているとか。
日本バイオプラスチック協会なんてあったりいますね:
http://www.jbpaweb.net/
まあ、人間はいろいろ考えだす。
新たな製法にも、きっと功罪があるのでしょうが。
投稿: やいっち | 2012/09/22 21:27