神の粒子:大栗 博司『 重力とは何か 』
大栗 博司【著】の『 重力とは何か―アインシュタインから超弦理論へ、宇 宙の謎に迫る』( 幻冬舎新書)を土曜日、読了。
感想文モドキは既に書いているが、その時点では、読んでいる最中だった。
若干、食い足りないなんて、生意気なことも。
← 大栗 博司【著】 『 重力とは何か―アインシュタインから超弦理論へ、宇 宙の謎に迫る』( 幻冬舎新書)
小生にとっての驚きの叙述は、むしろ、本書の後半にあった。
半ばまでは、宇宙論、重力論関連の本を読みあさってきた小生には、事実、復習、おさらいの感があったのも事実。
無論、筆者独自の筋立てで、エピソードも交え書いてあるので、決して退屈したわけではなかった。
ただ、重力論の専門家、超弦理論の第一人者たる筆者の独擅場は、標準理論に至る歴史を語る前半ではなく、重力論と量子力学との統一を課題とする現今の中で、ホログラフィ原理も含め、筆者も深く関わる、研究の現状と課題を語るくだりに面白みが凝縮されていた。
その本書の醍醐味の部分で何が書かれているか、それは筆者自身に語ってもらうのがいいだろう:
第六章ではいよいよ相対論と量子力学を統合する「超弦理論」の話が始まります。「 超ひも理論」と呼ばれることもありますが、私たち専門家は「超弦理論」と呼ぶこと が多いので、本書ではこちらを採用します。個人的な話をしますと、超弦理論が素粒 子論の主流に躍り出たのは、私が大学院に進んだ年でした。自然界の最も奥深い真実 を知りたいと思って大学院に入った私は、それ以来この分野の研究を続け、今日に至 っています。本書の後半では、私自身がこれまで考えてきたことについてもお話しし ます。ホーキングの二つ目の大きな仕事は、相対論と量子力学の矛盾を照らし出す「ブラッ クホールの情報問題」を指摘したことです。第七章では、超弦理論がこの問題をどの ように解決したかをお話しします。この問題の解決の過程で、重力や空間の性質につ いての新しい見方である「ホログラフィー原理」が明らかになりました。ここが本書 のクライマックスです。重力の謎を追って本書を読んでこられた方は、ここでどんで ん返しにあうことになります。楽しみにお待ちください。
超弦理論は発展途上の理論で、未解決の問題もたくさんあります。たとえば、第一章 で提示する「重力の七不思議」もすべてが解明されたわけではありません。おしまい の第八章では、超弦理論の課題と将来の展望についてお話しします。

→ 本書のイラストは、一部専門家にトレー スしていただいたものを除き、すべてが 大栗 博司氏本人が 描いたという。「幻冬舎の編集局が「重力のホログラフィ ー原理」のイラストを気に入って下さり 、帯に採用して下さったのはうれしかっ たです」とは、本人の弁。「 『重力とは何か』 : 大栗博司のブログ」参照。
繰り返すが、本書の性格を手っ取り早く知るには、本人の談に接するのが一番である:
「 『重力とは何か』 : 大栗博司のブログ」
とにかく、「 昨年のノーベル物理学賞が、「遠方の超新星爆 発の観測による宇宙の加速膨張の発見」に与えられたことに象徴されるように、宇宙物理学の 発展は、これまで私たちの知らなかった宇宙の 姿を明らかにしつつあ」るのだし、近い将来、宇宙像が大変貌を遂げるのは間違いない。
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