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2012/06/11

『 女犯―聖の性 』肉食妻帯宗 ! ?

 ひたすらな好奇心と、それなりの真面目な関心を以て本書・ 石田 瑞麿【著】の『 女犯―聖の性』を買った。
 本書を…この題名を書店の棚で見いだした際、正直、好き者の習い性が、本書に躊躇なく手を伸ばさせたのは、否定のしようがない。

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←  石田 瑞麿【著】『 女犯―聖の性』( ちくま学芸文庫 筑摩書房)

 女犯(にょぼん)! 男色! 稚児愛! 何と淫靡な!
 その助平心を得心の行くまで満足させてくれたかというと、やや否定的である。
 何たって、学術の書なのだから、禍々しい期待にストレートに応えてくれるはずもないわけである。

 先に進める前に、本書の内容を示しておこう:

「女犯」とは、性行為を絶たねばならない仏教の出家者が、戒律を破り女性と性的関係を持つことをいう。 日本で、僧侶における性と犯罪と刑罰はどのような変遷を辿ってきたのだろうか。 そこには表向きの戒律からは見えてこない、どろどろとした現実の歴史があった。 受戒制度の確立以後、国家法、武家法などによって厳罰・極刑が科されても、絶えることなく起こりつづけた 女犯。 古代・中世・近世におよぶ膨大な史料を丹念に読み解き、妻帯・密通・強姦・男色など女犯の全貌を初めて実 証的に解明、出家の世界の人間的な苦悩を見据えて、禁じられた性愛の真相に迫る、類稀なる仏教史。

 この本、何処かで目にしたことがある…でも、読んだ記憶は定かじゃない…と思ったら、本書は95年に単行本で出されていて、この手の本には目聡い小生、見逃しはしなかったのだが、どうやら、手にし、冒頭部分をパラパラ捲ってみて、凡人愚人たる小生の煩悩を癒やす夜の友にはなり得ないと、入手するのは断念した経緯があったのだと思い出された。
 今回、車中の待機時間の徒然に読み流してみて、やはり、本というのは、最後まで読まないと分からない、知り得ないものだと、つくづく思い知らされた。
 
 そもそも今回本書を手にした動機の一つには、好奇心もあるが、肉食妻帯が自由な浄土真宗の教理への違和感である。
 一面においては、分かるような気もするが、しかし、僧侶は仮初めにも聖職者のはずである。
 間違っても、そんじょそこらの生殖者ではないはずだ。
 信心の道に心身を捧げたからには、肉食も妻帯も、名誉も出世欲にも遠くあって然るべき、という素朴な思い、期待がある。
 凡人俗人と同じ生活を表立って送り、且つ、信仰の道にあるなんて、あり得ない、あってはいけない、そんな単純というか俗っぽい思い込みがある。

 俗の権力や名誉、愛欲から離れ、祈りに専心する、そうであってこその宗教人のはずではないか。
 実際、過去において、日本には厳しい戒律のもとに、神か仏に命を捧げてきた人達もいた……或いは、現在も居るのかもしれない。

 一方、俗人たる小生は、人間が名誉欲、出世欲、愛欲、詰まるところはあまりに人間的な本能、煩悩、衝動、激情から自由であることなど、あり得ない! としか思えない。
 そして実際、本書を読むと、俗塵を排するという異常なる環境にあるが故に、異常なる性愛の泥沼に、俗人凡人より深く深く溺れ込むこともしばしばだったのだと思い知らされる。

9784480842343

← 石田 瑞麿 著 『 女犯 聖の性 』(筑摩書房 ) 石田 瑞麿氏の本は、 『日本の名著・親鸞』(中 央公論社)以来かも。

 結局、全ての宗派とは断じないが、多くは現実的な道を辿っていった。
 どうせ、肉食も愛欲も、断てないものなら、正面切って、妻帯肉食は自由に、というわけである。
 無理はしないがいい! 酒だって刺身だって、喫煙だって、どうぞ御自由に、ってわけである。
 上田秋成じゃないが、浄土真宗は、肉食妻帯宗だ、と言うのも、得心が行く。
 肉食妻帯者として宗教活動を行うからこそ、常人の気持ちも理解できる…ってわけである。

 本書を読んで思ったのは、真の(何が真なのかはともかく)宗教者は、何処にいるか分からない、きっと見掛けからは、それと分からないような姿なのだろうなー、というかお粗末なもの。
 孤独にいつの日かの出逢いを待つよりないのだろう。

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