裸足のダンス
人間は、どうしても、モノ を想う。思わざるを得ない。言葉に したくてならない。言葉にならない ことは、言葉に縋りつくようにして 表現する奴ほど、痛く骨身に感じている。
でも、分かりた い、明晰にこうだ! と思いたい、過ぎ行く時を束の間で もいい、我が手に握りたい、零れ落ちる砂よりつれない時 という奴に一瞬でもいいから自分が生きた証しを刻み付け たい、そんな儚い衝動に駆られてしまう。
でも、肉体は、肉体なのだ。肉体は、我が大地なのである。未開のジャングルより遥かに深いジャングルであり、 遥かに見晴るかす草原なのであり、どんなに歩き回り駆け 回っても、そのほんの一部を掠めることしか出来ないだろ う宇宙なのである。
肉体は闇なのだと思う。その闇に恐怖するから人は言葉 を発しつづけるのかもしれない。闇から逃れようと、光明 を求め、灯りが見出せないなら我が身を抉っても、脳髄を 宇宙と摩擦させても一瞬の閃光を放とうとする。
踊るとは、少なくともあの日見たダンスは、そんな悪足掻きをする小生のような人間への 、ある種の救いのメッセージのようにも感じられた。
肉体は闇 でもなければ、ただの枷でもなく、生ける宇宙の喜びの表 現が、まさに我が身において、我が肉体において、我が肉 体そのもので以って可能なのだということの、無言の、し かし雄弁で且つ美しくエロチックでもあるメッセージなのだ、と。
(「裸足のダンス」 (03/11/30)より抜粋)
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