タクシー客事情(3)
そうはいっても、車椅子など、通院の高齢者のお客さんは、(少なくとも富山など地方の)タクシーでは珍しいことではない。
私も、何度も、というより、一回の営業の中でも病院絡みの仕事のない日のほうが珍しい。
Aさんを何とかリアシートへ。
肩を貸し、あるい御婦人の脇の下に私の腕を差し入れ、支えるようにして、ゆっくり乗せたのである。
車内では四方山話に花が咲いていた。
私は黙って、いつも以上に丁寧な運転を心がけるだけ。
段々、目的地に近付いてくる。
二人の御婦人方は、どういう順番(ルート)で回るか、あれこれ議論する。
距離だけの合理性からすると、Bさん、ついでAさんである(と、話の様子から察せられた。別に聞き耳を立てているわけではない。ルートをどう選ぶかという内容には関心を持たざるを得ない)。
議論はやや堂々巡りしたが、先ずは歩行困難なAさん宅に向かい、ついでBさん宅という穏当な順路となった。
Aさん曰わく、わたし、歩くの大変だし、わたしを家の中まで送ってくれると助かるし…
(言外に運転手たる私の手伝いを期待していいのか、読めない、ということもあったのか。しかし、すぐに分かるが、介添え人が一人では、相当苦労させられる。)
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コメント
車椅子のお客はタクシー券とか貰われていたのかな?
介護制度でそう言う券ありますよね。
車椅子からの移動、介護の経験がないとわからないですよね。
当然コツがあるのです。
タクシー運転手にそう言うのまで求めると運転手は何でも屋になってしまいますからねえ。
このシリーズ面白いです!
投稿: oki | 2012/05/14 22:55
やいっちさん
こんばんは。
タクシーお客様シリーズ、
私もokiさんと同じくお気に入り・・
以前の大手銀行さん困ったエピソードも、
かなり深く印象に残っております。
しかし近所で乗るタクシーさんは
こんなに親切では無いような気も致します。
投稿: のえるん | 2012/05/15 20:09
okiさん
富山でも、福祉券は毎年、発行されています。
でも、距離にも依りますが、供与される福祉券は、何ヶ月も経ないうちに使われてしまうでしょう。
タクシーのお客さん、(少なくとも日中は)地方ではますますご高齢の方の利用が増えると思われます。
その意味で、介護の研修を受ける必要性は、高まるのでしょうね。
タクシーモノ、折々、書いていきます。
プライバシーの問題もあるので、細部の事実は一定の脚色が必要でしょうけど。
投稿: やいっち | 2012/05/15 21:21
のえるんさん
本タクシーシリーズ(?)、楽しんで頂けてる、嬉しいです。
タクシードライバーにもいろいろな方が居ります。
この中で書いたようなサービスは、(少なくとも富山では、或いは富山市では)ごく普通にドライバーがやっているように思います。
高齢化社会という実情を鑑みれば、こういった程度のサービスは、時代の趨勢、当然のことですよね。
投稿: やいっち | 2012/05/15 21:29