タクシー客事情(4)
Bさん一人では、玄関にはたどり着くのは無理に近いだろう。
Aさん宅からの連れ出しの際も、我が社のタクシーのドライバーが丁寧に付き添い手伝ったものと、容易に想像が付 く。
恐らくは、我が社の車椅子専用(設備のある)タクシーで普段は送迎しているのだろう。
玄関の戸を開けるのも一仕事。 鍵は秘密の場所に隠してあり、どう見ても、Aさん本人には、とてもじゃないが、出し入れ不可能に思える場所。
何とか取り出して、Bさんに鍵を開けてもらう。
車庫の段差を越え、次は玄関の中へ、そして玄関フロアーの廊下に上らせる。
ここは、上らせる、というより、廊下に腰掛けさせる、というのが正確かも知れない。 Aさんは、歩けないのだ。
彼女は、車内での会話でも、送ってくれさえすれば、わたし、膝は悪くないんだし、這ってでも、どうとでもするか ら、と何度も云っていた。
這ってでも、というのは本当だった。 手摺りの類は見当たらない。 また、仮にあっても、手摺りを伝っての歩行もままならないと思われるのだ。
彼女は実際、這って廊下を過ぎ、隣の茶の間へ。
Bさんは、Aさんの荷物を廊下に置く。
せめて気持ちだけでもと、荷物を茶の間の近くへと移動させる。
我々に出来ることは、これまでだ。
後のことは、身内の誰かが来て、やってくれるだろう…多分。
(本文中の挿入画像は、富山市内某所の夕景。5/13 撮影)
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