エロスの涙
車中での読書に(ふさわしい…かどうか危ういが)と、 ジョルジュ・バタイユ 著 『エロスの涙 』を車に持ち込んだ。
→ 球体関節を用いた人形(足首を 拡大すると関節が確認できる) バタイユと言うと、誰よりもハンス・ベルメールの世界を連想する。特に、 球体関節人形! 拙稿「 ハンス・ベルメール…球体関節人形 」を覗いて観るもよし。
ジョルジュ・バタイユ の書は、学生時代の終わり頃、友人等が大学を卒業したり、退学したりし、小生が仙台の地で一人ぼっちの暮らしだった頃、折々読んだものだ。
当時は今ほどにエロ本もなく、あっても物足りず、持て余す悶々たる不毛なエネルギーの行き着く先が、サドだったり、ムンクやエゴン・シーレ、ハンス・ベルメールそしてバタイユだった。
社会人になって、フリーター生活を3年、過ごしたあと、哲学も文学にも見切りをつけ、サラリーマンとなった。
自分の中の資質や創作志向には見切りを付けたはずなのだが、お金が多少自由になったことをいいことに、バタイユ全集を古本屋で見つけて、まとめ買い。
全部を読んだわけじゃないが、めぼしい作品は学生時代以来の再読と相成った。
バタイユの理解の上で彼に魅了されたとは言い難い。
町の書店などで見つかるエロ本では飽き足りない何かをバタイユなどの書のレトリックで目くらませていたような気がする。
← ジョルジュ・バタイユ 著 『エロスの涙 』( 森本 和夫 翻訳 ちくま学芸文庫)「エロティシズムは禁忌と侵犯の中にこ そあり、それは死と切り離すことがで きない。二百数十点の図版で構成され たバタイユの遺著」とか。
本書についての出版社による謳い文句によると:
「私が書いたもののなかで最も良い本であると同時に最も親しみやすい本」 と自ら述べた奇才バタイユの最後の著書。人間にとってエロティシズムの誕 生は死の意識と不可分に結びついている。この極めて人間的なエロティシズ ムの本質とは、禁止を侵犯することなのだ。人間存在の根底にあるエロティ シズムは、また、われわれの文明社会の基礎をも支えている。透徹した目で 選びぬかれた二百数十点の図版で構成された本書は、バタイユ「エロティシ ズム論」の集大成。
そう、 エロティシズムと死とのせめぎ合いを妄想していた。
絶望的なほどの悦楽の一閃。垣間見たかのような錯覚。
愉楽のほんの片鱗に圧倒され、波間を泳ぐ前に大慌てで安全な海岸線に引き返してしまう自分。
→ 藤野一友 『抽象的な籠 1964年』(1928/東京-1980/東京) 油彩・画布 162.5×131.0cm シュールな画風は、バタイユを思わせる? かどうかは別にして、ネットで〈発見〉した彼。実物を見てみたい。(画像や情報は、 「 見る/所蔵品・近現代美術 」を参照)
バタイユの思想とはまるで違う、低次元の泥沼を這い回り、ほんの一瞬、波間から顔を覗かせた最中、世の中の健康さに眩しさを覚え、また闇の海の底へと溺れ込んでしまう。
健全さへの嫉妬と恐怖。
そんな小生にバタイユなど論外なのである。
…なのだけれど…
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コメント
やいっちさん
こんばんは。
今日こちらでは一日、
寒さが弱まり暖かな陽気でした。
春特有?曇りがちで、生暖かな気温。
このまま春へ突入して欲しい。
「エロスの涙」について、
先日に少しばかりご紹介頂いた時から、
何だかとても気になっておりました。
今日は更に少し踏み込んだお話しを
うかがう事ができ、とても幸せ。
読み進む度、ざわざわと鼓動が高鳴る。
ちょうど開けちゃいけない扉を、
こっそり開けてしまった様な、そんな心境。
薄暗い闇の海の底で佇む姿をも、
覗いて観たい想い、欲求・・
さて・・
今夜はあまり飲めないお酒が、
とても美味しいので御座います。
投稿: のえるん | 2012/03/18 22:52
のえるんさん
天気、異変が続いてますね。
富山も今夜から明朝までは雪模様だとか。
日中には晴れるらしけど。
庭の梅、芽らしいものがいっぱい、見えてるけど、開花はまだ。
バタイユについては、以前、もう少し詳しく書いたことがあるので、今回の記事ではあっさり気味にまとめました。
http://atky.cocolog-nifty.com/manyo/2005/12/post_55b4.html
お酒、嗜む程度?
それが一番、賢いね。
小生は、冬の間、体を暖める意味あって、ワインを少々寝酒代わりに夜、寝る前、飲みますよ。
投稿: やいっち | 2012/03/20 19:50
やいっちさん
こんばんは。
やいっちさんも寝酒派ですか?(笑)
私も、就寝前に少しばかりワインをいただいております。
身体を暖かくしてお休み出来るので。
やいっちさんは、白がお好きなんでしょうか?
私は赤。
だけど、余りアルコールには強くありません。
投稿: のえるん | 2012/03/21 00:58
のえるんさん
小生は、ワインをほんの少々。
飲むのはロゼ。
あくまで、体を暖める程度に。
小生は就寝前にも読書したいので、酔うほどは飲まないのです。
就寝前の僅かな時間は、読書のための貴重な一時なのです。
投稿: やいっち | 2012/03/22 03:51