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2012/03/20

灯台下暗し

「学部超え八雲研究 富山大プロジェクト」といった記事が19日の北日本新聞の朝刊の第一面に(!)でかでかと載っていた。
 趣旨は、ヘルン文庫の蔵書を手掛かりに、八雲の研究に取り組む人文学部教員ら=富山大附属 図書館. 明治の文豪、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の創作の原点に迫る研究 プロジェク トが4月、富山大人文学部でスタートする。八雲がそろえた蔵書の大半を収めた学内の「ヘルン文庫」を研究し、学部外からの参加も受け入れつつ、「耳なし芳一」など独特の作品を生み出した八雲の「知」のバックボーンを読み解く、というもの。

 なぜこれが北朝鮮の「衛星」その実、長距離弾道ミサイル発射実験疑惑などを差し置いて、トップ記事となるのか、幾分理解しがたい。
 それはそれとして、学生時代以来の小泉八雲ファンたる小生には興味津々のニュースではある。

 不思議なのは、富山大がヘルン文庫の体系的な研究に乗り出すのは初めて、だという点。
 えっ、そんな研究、とっくに行われてたんじゃないの、という素朴な疑問が湧く。
 しかも、「蔵書を手掛かりに、総合的に八雲の思想性などを解き明かす取り組みは全国的にもまれだという」ではないか ? !

「八雲はギリシャで生まれ、英国や米国、日本などで暮らした。若い頃から文学や歴史、地理、宗教史など多方面に関心を寄せ、本の収集に情熱を傾けた。没後、本の大半は旧制富山高校(現・富山大)に移り、現在は富山大附属図書館の「ヘルン文庫」に保管されている」という。
 小生は旧制ではなく、新制の(?)富山高校が母校であり、八雲ファンたる小生としては、勝手というか、こじつけ気味なのを承知の上で、縁を感じ、嬉しくなる。
 
「2400冊を超す蔵書の大半は、19世紀後半~20世紀初頭に発刊されたもの。ジャンルは文学や宗教、自然科学などと幅広く、入手困難なものが多い。進化論を提唱したダーウィン、昆虫研究に一生をささげたファーブルの著書など、専門性が高い書籍も目立つ」という。
 うむ! 確かに八雲の蔵書をつらつら眺めたくなる。

 情けないのは、小生が富山高校に在学中、新制・旧制の違いはあっても我が富山高校に八雲の蔵書のあることを知らなかったこと。
 高校生の頃、八雲の本というと、文庫本を何冊か読む程度で、伝記も含め、傾倒するようになったのは、学生時代も後半になってからだから、仕方ないのか…

 情けないついでに書くと、 小生は御多分に漏れず、漱石の文学(や人間味)にも惹かれてきた。
 文庫本の類では飽きたらず、社会人になってから、角川書店版漱石全集、さらには後年、岩波書店版漱石全集をも揃え、読み通したものである。
 なのに、我が母校である東北大学の附属図書館 に夏目漱石ライブラリがあることに、在学中、気付かなかった、少なくとも無頓着だった。

 図書館には一時期、入り浸るほど通い詰めたものだ。
 本は買って読みたがる小生だが、懐具合からして、そうも行かない。
 そこは友人からも含め、図書館などの蔵書に随分とお世話になってきた。
 東北大の図書館も、教室より長く滞在していた…

 灯台下暗し? 
 漱石にしても八雲にしても、一番読み浸ったドストエフスキーにしても、こと文学に関しては、本人の作品は読んでも研究書や評論の類は眼中にない、そんな自分の性分の故でもあろうか。

 不明を恥じるしかない。

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コメント

このヘルン「記事」については、かなり疑念を持っています。県内では富山八雲会の皆さんもふくめ多くの方の丹念なヘルン研究が脈々と行なわれています。記事の大きさの割に、大学の新しい動きをどう理解し、どう伝えようとしているのか、まったく理解できません。端的にいえば、記者の、取材不足、理解不足と言わざるをえません。
なお、やいっちさんはきちんと理解されていると思いますが、念のために言えば、〔旧制の富山高校、新制の富山高校〕と言えば、つながりがあるようですが、両校は無縁です。ヘルン文庫を富山にもたらした富山高等学校は、岩瀬の今は馬場記念公園のところにあった高等学校で、戦後富山大学の文理学部の母体になりましたが、新制の富山高等学校は、旧制の富山中学校(一番古い旧制中学校で、明治の創立時には今の商工会議所のあたりにありました。)の系譜を引く学校です。あらためて整理すれば、旧制の富山中学校→→新制の富山高等学校:旧制の富山高等学校→→富山大学文理学部です。

投稿: かぐら川 | 2012/03/22 22:07

かぐら川さん

この記事が一面トップというのは、理解しがたい。
そもそも、小生でも、八雲の蔵書を目にしたなら、或いは誰の蔵書であれ、そこからその人物の関心領域を想像しますし、その人物が作家や思想家であれば尚更、蔵書の有り様が気になってならなくなるでしょう。

研究に至らずとも、憶測は巡らすでしょうし。
八雲会も以前、本ブログで紹介したことがありますし。


旧制の富山高校、新制の富山高校の件に付いては全くその通りです。
母校に在学中も、八雲蔵書の話は一切、聴いたことがなかった

富山高校という字面だけに舞い上がっているわけです。

投稿: やいっち | 2012/03/24 22:14

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