町工場界隈に住んでいたっけ
本書の解説は、元旋盤工で作家の小関智弘氏。
確か、東京は大田区の町工場で働いていた方で、印象的的な題名で銘記されてしまった、『 春は鉄までが匂った 』(ちくま文庫)などで有名な作家。
小生は90年頃から07年末まで、大田区の、まさに町工場の一角に居住していたこともあり、勝手ながら親近感を抱いていたものだ。
そうそう、小生が居住していた集合住宅も、元は何かの工場だった。
しかも、小生が住んでいた頃だって、三方は、工場。
繁忙期には、日中どころか、一晩中、ねじを切る旋盤などの機械の音が鳴っていた。
何か機械油の焦げるような匂いが漂ってきたりした。
終日の騒音や臭気に耐えかね、工場に、さらには当局(大田区)にまで抗議に行ったが、なしのつぶてだった。
ああ、この地区は工場地帯で、苦情など受け付けないんだと思い知らされたものだった。
隣の工場からは、何度か茶褐色の廃液がブロック塀越しに当方の団地に染み出してきて、抗議に行く、何てこともあった。
さすがに、不気味な色の廃液が浸潤していた辺りには、鉄板があてがわれて、以後、目立った液の漏洩はなかったような記憶があるが、だからといって安全になったという安心感はなかった。
いずれにしても、大田区が誇る、日本でも指折りの工場町で、少々のことは甘受しないといけないと、訳の分からない納得を自分に強いたりして、得心のいかない自分をどうしようもなかったものだ。
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