「ももしき」か「ももひき」か(後編)
小生の乏しい古典の素養からも、「ももしきの」という枕詞があったような、朧な懸念も脳裏にちらついていたのだ。
ズボン下の「ももしき」と古典の「ももしき」が共に言葉としては正しくて、たまたま表記(発音)が似ている、つまり、似て非なる、ということもあっていいが、しかし、何かすっきりしない。
← 「神通川 舟橋の図」松浦守美(1824~1886) 株式会社 源 所蔵 「松浦 守美(まつうら もりよし、文政7年(1824年)‐明治29年(1896年))は、江戸時代後期から明治時代にかけての浮世絵師」。「明治19年(1886年)まで富山売薬版画の下絵を描いていた」という。(画像は、「日本一の神通川舟橋」より)
そこで、今日になってそのあたりのことをネットで調べてみることにした。
答えはすぐに出た。
なんたって天下の「Wikipedia」で調べたのだから、一発で判明する。
小生の脳(能)では、反論の余地がない。
「股引 - Wikipedia」なる項目がちゃんとあって、「股引(ももひき)は日本の伝統的ボトムスであり、下着としても使われた」と、冒頭に書いてある。
「安土桃山時代にポルトガルから伝わったカルサオ(カルサンとも)と呼ばれる衣服が原形とされる」なんて、雑学的知識もゲットしたが、使い道はありそうにない。
そんなことを誰彼に自慢げに講釈しても、誰も褒めてくれそうにない。
ん? じゃ、「ももしき」は?
世の中には、何事にも先人がいるもので、「ズボンなどの下に履く下着ですが、ももしき?それともももひき?」と問いかけた方がいるのだ。
答えは明瞭で、「日本語としては股引(ももひき)」であり、「「ももしき」は、江戸言葉の「ひ」と「し」の混同か と」だって。
そうか、小生、東京での30年に渡る暮らしで、江戸弁(方言)の発音に馴化してしまったのかもしれない。
ちなみに、「ももしきの【百敷の/百磯城の】」も、ちゃんとある。
枕詞であり、「多くの石や木でつくり築く意から、「大宮」にかかる」のだ。
「宮中。内裏。皇居」に関わる言葉!
→ 「富山大橋 (初代)」 「神通川に架かる富山市内の橋梁」で、間もなく架替工事が終わり、「2代目の富山大橋」が完成する。複線軌道が中央に設置されるし、車道も片側2車線となる。初代の姿が見られるのも、今のうち。小生にとっても、思い出深く、懐かしい橋である。(画像は、「富山大橋 (初代) - Wikipedia」より)
小生が畏怖する唯一の歌人・柿本人麻呂が、持統天皇の吉野行幸の折、作った歌に下記がある:
やすみしし わご大君(おほきみ)の 聞(きこ)しめす 天(あま)の下に 国はしも 多(さは)にあれども 山川の 清き河内(かふち)と 御心を 吉野の国の 花散らふ 秋津の野辺に 宮柱 太敷きませば ももしきの 大宮人は 船並(な)めて 朝川渡り 舟競(ふなきほ)ひ 夕河渡る この川の 絶ゆることなく この山の いや高知らす 水たぎつ 滝の都は 見れど飽かぬかも
間違っても、「ももひきの…」と言ってはいけない!
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コメント
なるほど、です。
国見さん、こんにちは。
百敷や古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり
僕は、初めて聞いたときに、
(今どきは流行らない)股引が、
古い軒先に干してあったことが思い出される、
そして、(股引の全盛期は)さらに昔の頃であった、
ってことか?
と思ったものです。
句ならともかく、歌で股引はすごいな、と。
股引や、で切ってるなんてすごすぎる。
もちろん違いましたけど。
投稿: 青梗菜 | 2012/01/21 20:54
青梗菜さん
> (今どきは流行らない)股引が、古い軒先に干してあったことが思い出される、そして、(股引の全盛期は)さらに昔の頃であった、ってことか?と思った
さすが青梗菜さんです。想像力の逞しく、健全なこと!
関係ないのですが、持統天皇の歌を思い出しました:
春すぎて 夏来(き)にけらし 白妙(しろたへ)の
衣(ころも)ほすてふ 天(あま)の香具山(かぐやま)
下着つながりでしょうか。
ああ、早く春が来てほしい!
投稿: やいっち | 2012/01/22 20:30