ル・クレジオの中の「アコマ」(前編)
この日曜日(八日)、J・M・G・ル・クレジオ著『地上の見知らぬ少年』 (鈴木 雅生 訳 河出書房新社)を読了した。
→ 「アコマ・プエブロ」 「アメリカ合衆国ニューメキシコ州中部の367フィート(112メートル)の砂岩のメサの頂上に建設された、プエブロ・インディアンのアドベ建築の集落」。「現在は車道を使って上り下りができるが、かつては、砂岩に掘られた手製の階段でしか出入りする方法がなかった」とか。
再読である。以前、図書館から借り出して読んで気に入ったので、昨年末、敢えて購入し、年初から読み出していたもの。
クレジオの分身である少年は、ありうべき、それとも、あってほしいと願われたクレジオ自身のようである。
実際のクレジオは、二十歳過ぎて『調書』などの作品を書くような、稀有なほどに暴力的で破壊的な想像力を持つ人間。
自分自身をも破滅させかねないほどの感性と想像力に恵まれていた。
そんな彼だから、少年の日も、自然に対し、文明に対し、凶暴なほどの反感を抱いていた。
とてもじゃないが、『地上の見知らぬ少年』 に描かれるような、自然の風物や、さらには風物としての都市に親和し共感するような人間などじゃない。
そんなクレジオが中南米の文化に触れて、世界観・人間観が劇的に変貌を遂げた。
そんな時期の彼が書いた虚構と見分けの付かないエッセイなのである。
まあ、本書の感想など書くつもりはない(書く能もない)。
ただひたすらクレジオの奔放な想像力に圧倒されるのみだった。
若き日のクレジオの凶暴な想像力と裏腹な、自然で透明な、優しげな想像力。
その稀有な想像力の紡ぎ出す世界を堪能するだけである。
ところで、『地上の見知らぬ少年』 の中には、彼の世界観を変えただろう中南米などの地名が幾つも出てくる。
地名なんて、慣れ親しまない地のものだと、多くは奇妙な響きを感じさせられる。
その一つが「アコマ」だった。
奇妙な地名、などと思うのは、その土地に対し全くの門外漢たる小生の想像力の貧困さのなせる業に他ならない。
でも、気になるので、ちょっとだけ調べてみることにした。
その前に、「アコマ」と聞いて、小生は、やはり北米にある「タコマ」という地名を連想してしまった。
何か関連があるのだろうか(先住民たるインディアンが呼称していた地名から由来するという説があるが)。
小生には「タコマ」は、1980年代、輸出代行業の会社に在籍し、アメリカの貿易港として親しんだ地名だった。
← 瀬山 士郎(著)『はじめての現代数学』(数理を愉しむシリーズ 早川NF文庫) 「無限集合論からゲーデルの不完全性定理まで現代数学をナビゲートする名著待望の復刊」という。最初の数十頁ほどを読んだだけだが、なかなか面白い。80年代に刊行された本だが、復刊となるのも分かるような。このところ、文学関連の本が続いたこともあり、そろそろ理系の香りのする本に飢えてきたので、先日、年賀を買いに行った際に、数冊、理系の本を買ったのである。
初めて聞いたとき、変な音韻(音感)だと勝手ながら思った記憶がある。
せっかくなので調べてみたら、「レーニア山 - Wikipedia」に気になる記述を見つけた。
「タコマ富士」とも呼ばれる「レーニア山」は、「もともとは、地元のインディアン部族のピュヤラップ族 (Puyallup) が「水の母」という意味の tacobet と呼んでおり、そこから転じてタホマまたはタコマと呼ばれていた」という。
やはり、下記するように、「タコマ」と「アコマ」とは、語源的には、関連性が薄いようである。
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