「津波低くする新型防波堤」だって!
予想される(あるいは実際に見舞われた)津波の高さを最大限に想定すると、対応する堤防の高さも相当なものになり、海岸に十数メートルもの高さの堤防を築かれたりすると、海辺(浜辺)の景観そのものが失われてしまう。
その前に、重厚で高い堤防を延々と築くというのは、現実性が乏しい可能性もある(作っても早晩、劣化する)。
津波対策をハード面で考えるアイデアは幾つか出ている。
過日は、松並木じゃなく、「常緑樹の堤防」というアイデアを紹介した。
これは、「日本の海岸地域で良く見られる松並木(人工的な植林)は、常緑広葉樹に比べ、津波に弱かった」こと、「人工的な環境作りが津波被害を大きくしてしまった可能性もある」とも考えられること、一方、「根が深い常緑広葉樹は、ほとんどが津波にさらわれることなく、元気に生きていて、波の威力を破砕する作用に働くと予想され」ることから出てきたアイデアのようだ。
さて、12日、読売新聞朝刊をつらつら眺めていたら、「津波低くする新型防波堤」といった記事が目を引いた。
小見出しに、「富山大講師ら考案」とあり、もしかして、読売新聞の富山版(地域版)だけの記事なのかもしれない(あるいは全国版向けの記事なのかもしれないが、分からない)。
せっかくだし、大きな意義を持つ情報に思えるので、「津波低くする新型防波堤」なる記事を一部転記の形でメモしておきたい:
「津波低くする新型防波堤」波を通過させ弱める 高さ10分の1に 景観にも優しく
富山大学の奥村弘講師(計算流体力学)らの研究チームが、波同士が打ち消し合う作用により、津波の高さを約10分の1に減らす新型の防波堤を考案し、特許を出願した。波をせき止めるのではなく、一定の間隔を開けて並べた角柱の間を通過させて弱める仕組み。4月頃に模型を使った水槽実験を予定しており、準備を進めている。(堀内佑二)研究のきっかけは、東日本大震災の大津波で、基礎部分が水深63メートルの海底に築かれた、岩手・釜石湾の「世界最深」の防波堤が破壊されたこと。奥村講師によると、従来型の防波堤は想定を超える大津波を真正面から受け止めた場合、決壊するか、波に越えられてしまう。
奥村講師と同大工学部の松島紀佐教授らが考案した「双胴型防波堤」は、上から見ると、細長いひし形の角柱を、海岸に直角に向くようにして海中に並べたもの。波は角柱の間を通過するとき、両側の壁に当たって斜めに反射し、波の山と谷で打ち消し合う干渉作用により低くなる。コンピューター上の想定実験では、波の高さを約10分の1にまで低減させることができた。昨年9月に日本流体力学会で発表し、特許も出願した。
波を低減させる効果は、波が高いほど大きくなるという。平常時には波をそのまま通すため、環境への影響も少ない。奥村講師は「大津波に備えて防波堤を高くする一方では海が見えなくなり、景観を損なう。新型防波堤と従来の防波堤を二段構えで使えば、より効果が期待できる」と話している。
(2012年1月12日 読売新聞)

← 瀬山 士郎【著】『はじめての現代数学』(ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ 早川書房) 文学書を読み続けていると、ふと、匂いだけでも理数系の本を読みたくなる。二十年以上も前の本の復刊。分かりやすくを心がけておられるのだろうが、それでも、難しい。でも、面白い。本書には、折々の脇道的言及がある。たとえば、埴谷雄高がこだわり続けた、観念・概念(言語)は、「虚体」も含め、いろいろあるが、「自同律の不快」もその一つ。これは、同語反復とか同一律とか、論理学では呼ばれるもの。同一律は自明過ぎて、弄る余地などなく、そのことがまた文系人間の典型である埴谷が、こだわりの挙句、独特の論理を展開した。それはそれで面白いが、数学者は、この同一律さえ、徹底して分析して、数学の門外漢には想像も理解も不能な理論を展開していく。資質の違いでもあるが、その違いを味わうのが楽しくもある。数学(や物理学など)のセンスのある人間が、文学を味わうってのは、至上の愉悦なのかもしれない。
いっそのこと、この新型防波堤の上に土を張り、常緑樹を植えておいて、緑の防波堤にするのも一興かもしれない。
関連拙稿:
「照葉(てりは)! あるいは常緑樹の堤防」
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