我がヒートショックハウス(前編)
年初、まだ御屠蘇気分も抜けきらない6日午後、富山県朝日町の温泉施設で、入浴していた70代の男性2人が溺れて死亡するという事件(事故)があった。
温泉施設で高齢とはいえ、男性二人が同時に溺れて死亡する。
← 金子 邦彦【著】『カオスの紡ぐ夢の中で』(ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ) 本書は文庫本の形での復刊。複雑系研究の第一人者だという同氏の本を読むのは(多分)初めて。人気があった本だというが、ちょっと、数理に疎い素人をあまりに軽く見すぎている気がする。専門家だからこそ、マトリョーシカ風な入れ子の論理を弄ぶのも、一興なのだろうが、どうも、食い足りない。遊びつつ、夢中にさせられ、気がついたらとんでもない世界を垣間見せられていた、といった体験をさせてほしいもの。数式を用いないのは一つの工夫として、フラクタルやカオス理論などは、素晴らしい図像の一つも載せてほしかった。昨日の営業中にあっさり読了してしまった。やはり、理数系の啓蒙書というのは、欧米のものに一日の長があると痛感させられた。
当初は、出来事は謎めいていて、事件の可能性が当局の関係者を含め、考えざるをえない状況にも思われた。
一人ならありえても、二人が同時にってのは、ちょっと普通は考えられない。
その日、営業の日だった小生、夕方近く、取材関係者を乗せて、現地近くへ赴くことになった。
朝日町の温泉施設へ向かうのかと思ったが、とりあえずは、当地の警察署へ。
とにかく、事件性があるのか、それとも、事情はともあれ事故なのかの取材(確認)が先決。
事故なのに事件として大々的に報じるのも、先走りの謗りを免れない。
記者が何を取材しているのか、小生には分からないが、やがて、ラジオから流れるニュースで事件の概要が分かった(詳細は後記する)。
やがて警察の調べで「ヒートショック」と呼ばれる症状で亡くなったと判断されることになった。
しかし、少なくとも事件(事故)があった当初は情報が錯綜し、とにかく警察の調べを待つ状況に記者はあったようだ(← 小生の推測。記者は取材の詳細は一切、語らなかった)。
もしも、事件だったなら、謎めいた事件として富山県のみならず、全国で報道されたに違いない(恐らくは、ワイドショーにも採り上げられるに至ったことも考えられる)。
警察の調べを待つしかなく、得られる情報を記者さんが本社へメールしたのち、その日は、記者さんは本社に戻られた。
帰ったら夜の11時を回っていた。
記者さんを乗せて出発したのは、夕方五時前。
現地へ急ぐということで、雪の舞う中、高速道路を突っ走る。
事件現場へは、取材関係者は一刻も早く向かいたい。
他社の誰よりも早く正確で貴重な情報を得たいというのは、使命だろうし、当事者ではない小生にもその気持ちは理解ができる。
けれど…。
タクシーのスノータイヤは、経費節減ということで、一般車のスノータイヤより性能が劣る。
自分なりにギリギリのスピードで走るが、時に一般車に追い越されることもしばしば。
悔しいが安全重視である。
往路を走りながらも、脳裏は既に帰路には、路面はどうなっているのか、圧雪状態や凍結していたら、辛いなー、という思いが駆け巡っている。
幸いにして、10時過ぎには、所轄の入善署を出、別の署へ。
雪がチラついているが、路面は凍結していない。
夜半に向かって、気温が急激に下がるということはなかった。
それに、往路は高速道路だったが、帰路は、緊急性が薄れたこともあり、一般道を走ったので、普通に走ることができたのだった。
→ ル・クレジオ【著】『悪魔祓い』(高山 鉄男【訳】 岩波文庫) 本書も同日、読了。いかに、昨日の営業が…。クレジオの文学観・世界観を画期する評論というか妄想風エッセイ。全編、詩文。『地上の見知らぬ少年』への助走風な、モノローグ的世界。本書は機会を設けて、簡単な感想文を綴りたいものである。
さて、翌日以降、関連のニュースをフォローしていみると、どうやらかの出来事は、事件ではなく、事故という結論に至ったようである。
その原因は、「ヒートショック」
そのメカニズムは、テレビなどマスコミでもこの事故に関連して(季節柄でもあるし)盛んに報道(放送)された。
ここではメカニズムそのものには立ち入らない。
詳しくは、下記にて:
「ヒートショックの原因と対策」
ただ、交通事故死亡者より、ヒートショックによる死亡者の数がずっと多いことだけは銘記しておく。
「ヒートショック」が死亡の原因だったとなると、かの事件は小生にはより身近に感じられる。
「急激な温度変化にさらされることで血圧が急上昇、急降下する 「ヒートショック」が懸念され」るわけで、我が家での小生はまさにその脅威に日々、晒されている。
一人暮らしの小生、仕事を終え帰宅する未明の三時や四時頃は、家は真っ暗。
時には雪に家も庭も樹木も埋もれている。
既にその段階で心理的なショックを受ける。
誰も迎えてくれない寂しい我が家。
当然、家は真っ暗だし、寒い。
今の時期だと、家の中でも温度は五度を下回ることも、ごく普通のこと。
家に入ると、明かりを灯し、ストーブのスイッチを、ついでテレビのスイッチを入れる。
灯りが灯ると、それだけで僅かに心に灯が灯るようである。
ついで、とにかく、ストーブ(石油ファンヒーター)のスイッチを入れることで、暖気が部屋に流れ始める。
テレビを入れるのは、家の中に映像と音声を流すためである。
寂しさを灯りと音と映像で紛らわそうとする、いじらしい心性。
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コメント
一人だと、空き巣に入られたりしますから、僕は外出していても、部屋の灯りつけておきますね。電気代かかりますけど。
ヒートショック、高齢者のものじゃないですか?
僕ら中年もかかる恐れある、わからない。
うちも水曜日で母の命日迎えます、あっというま一年。
で、またセンター試験がやってきて、今年の現代文は木村敏でしたね。
投稿: oki | 2012/01/15 22:37
okiさん
一人暮らし、だけど、空き巣には見られない工夫、必要ですね。
小生は、断続的に灯りがオン・オフを繰り返す装置を使っています。
ヒートショックが深刻さを増すのは高齢者でしょう。
でも、実際、日々の入浴タイムには洗い場などの寒さを痛感しています。
okiさんも、もう一周忌なんですね。
歳月の経つのは早いものです。
センター試験で、「現代文は木村敏」!
現代の古典なんですね。
投稿: やいっち | 2012/01/16 20:44