« シャドーエコノミーと募る不公平感(前編) | トップページ | 最近、セシウムの降下量が急上昇! »

2012/01/09

シャドーエコノミーと募る不公平感(後編)

 アフリカや中東の一部の国で独裁者が追放され、国のあり方が一変した(この先、どう変貌するか予測は難しいが)。
 その余波なのか、アメリカにおいても、かつての(今はなき)中産階級的発想をする人たちが、富があまりに一部の人たちに集まりすぎることに対する憤懣が爆発している。

Moon_028

← 八日(日)、暮れなずむ頃、玄関の外に出てみたら、月影が。久しぶりに見たなー、という感懐が湧く。ホント、富山(北陸)の地にあっては、冬に月影に恵まれるのは、僥倖と言えるほどなのである。

 アフリカや中東の事情と欧州やアメリカとの事情とは違うようだが、シャドーエコノミーの観点から見ると、案外と共通する側面もないわけじゃない。

 欧州においても、「不透明な格差社会で生きる彼らは、日頃から権力者や富裕層に対する不信感が強く、不公平感や被害者意識を強く持っています。「権力者や金持ちは、脱税し放題だ。こうした連中を放っておいて、我々のような低~中所得者層に犠牲を払えというのは言語道断だ!我々に犠牲を押し付ける前に、連中が手にした莫大な賄賂や未払い税金を取ってからにしてくれ!」…と叫び、これが政権交代をも含む政治の混乱を招」く可能性を孕んでいるわけだ。

 日本にしてもアメリカにしても、欧州危機の原因をなす経済とは一線を画す。
 しかし、いずれにしても、地下経済の横行でなく、堂々と富が一部の連中に集まる構造があるのは厳然たる現実であり、不透明な格差社会が多くの人々を苦しめ、国への不信の念の元になっているのは、否定しがたいのではなかろうか。

 年金にしても、高齢者(年金需給の現役世代)に対し、若者は需給の度合いがグッと減るのは確実と観られている。
 いろんな社会保障制度が破綻の危機を迎えている。
 その象徴が税の捕捉実態の歪さ、不透明さなのだろう。

 そう、「シャドーエコノミーの比重が高い社会では、アダムスミス以来唱えられてきた「公平」「中立」「明解」「簡素」という租税の4原則が整ってい」ないことのツケは、相当に高いものになる。
 国への信頼や国の威信が揺らいでしまうのだ。

 欧米の歴史を紐解くと、昔は、税の徴収人は、そうなること自体、特権であり、莫大な利益(収入)を伴ったという。
 現代でも、「ギリシャでは、税務検査官のことを4-4-2と呼ぶ。税金の4割が検査官のポケットへ、4割が納税者に残され、2割が国に入るということ。税務検査官は、企業の会計責任者と直で交渉し金銭封筒を受け取る、こうして彼らは、自分の実際の稼ぎを最低でも3~4倍は増やす」現実がある。
 無論、ギリシャだけじゃない。

 アメリカは、さすがに透明度が高いが、その代わり社会や経済構造自体が、金持ちにマネーがますます集まる仕組みとなっているだけのことだ。

 前述したように、構造がそれぞれ国によって違うとはいえ、「不透明な格差社会で生きる彼らは、日頃から権力者や富裕層に対する不信感が強く、不公平感や被害者意識を強く持」っている現実は、欧州だろうが中東だろうが、アフリカだろうが、中国だろうが、アメリカだろうが、、変わらないわけである。
 日本だって、同じになりつつある(既になっているのか)。


 財政状況が逼迫している。社会保障関連費用が毎年一兆円規模で増える現実がある、などと言いながら、日本においても、闇経済はますます社会を蝕んでいくのだろう。
 そして、不公平感が募っていくわけである。

「絆」や優しさ、癒しの大切さも分かるが、その前に(特に)若者は、社会構造の歪さにもっと怒るべきじゃなかろうか。
 何かが根本から間違っている、そのことに気づき、怒らなくて、若者とは呼べない気がする。


参照サイト:
EU首脳会議に世界が注目 いよいよ本格化する欧州危機と その裏に潜む「シャドーエコノミー」|永田公彦 パリ発・ニッポンに一言!|ダイヤモンド・オンライン
図録▽シャドーエコノミーの規模(OECD諸国推計)
地下経済 - Wikipedia

|

« シャドーエコノミーと募る不公平感(前編) | トップページ | 最近、セシウムの降下量が急上昇! »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

近代・現代史」カテゴリの記事

社会一般」カテゴリの記事

写真日記」カテゴリの記事

コメント

南欧はそもそも国など必要ない文化圏ですから、更に進めて最小限の社会保障と簡素な税制、小さな政府さえあれば十分でしょう。

社会の構造があまりにも複雑になるのは、複雑な社会保障と税制故にです。そうした現実を踏まえてここからは様々な処方箋がありますが、単純な社会保障として最低収入制度や税の簡素化などが話題です。

多くは新自由主義思想の範疇で練られてきた案ですが、機関投資家の投機が手厚い社会保障の財源となっているような訳で、出来る限り個人の財源の確保や投資を促し、徴税の簡素化こそが個人の投資意欲を高め行政の縮小と徴税率を向上させ公平感を生じると考えられます - 勿論機関投資が縮小すれば個人の投資先は投機的なものではなくて堅実なものとなって来るでしょう。

その意味では、正しく裏経済の膿を出すための簡素化なのです。例えばプールの税などはそもそも馬鹿げた話で、それならば一軒家に税を掛けて、集団住宅化を薦める心算なのかとなります。

むしろ、その種のけちな脱税よりも裏経済はマフィアやヤクザの経済規模が重要なのであって、麻薬やカジノなども合法化すれば裏経済は激減するのです。そのことが今日本でも話題になり、ドイツでも海賊党が躍進しているところの論点なのですね。一体、プールの徴税や日本の保険徴収にどれほどの無駄な税金が消費されているか考えてみれば分ります。

投稿: pfaelzerwein | 2012/01/09 19:29

pfaelzerweinさん

地下経済といっても、日常のささやかなものまで把捉しても、生活が息苦しくなるだけ。
(そうはいっても、イタリアやギリシャなど、かなりの数の金持ちたちの脱税が横行しているのは、社会の不公平感に直結しているように感じる。)
そう、闇社会での巨大なマネーこそ、把捉を目指したい。
問題は、カジノや麻薬を合法化できるかどうか。
カジノは、可能性がありそうですが、麻薬はどうなのか。
あるいは、医者の処方箋があれば、合法的に入手可能とするか。
タバコだって合法なわけだし。
タバコも、医者の処方箋に基づいて、購入が可能とするのも手のような気がする。

投稿: やいっち | 2012/01/09 20:31

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: シャドーエコノミーと募る不公平感(後編):

« シャドーエコノミーと募る不公平感(前編) | トップページ | 最近、セシウムの降下量が急上昇! »