三文字熟語に寄せて
昨日の日記で、「頓珍漢」なる言葉を鍵に、駄文を綴った。
すると、この面白い言葉、というより、どちらかといえば、(耳で聞いた際の)音的な読みが愉しくなるような言葉、特に三文字熟語の言葉に興味が湧いた。
← 霙(みぞれ)や雪にも耐えて黄色が映えるばかり
すぐに思いついたのは、「素っ頓狂」や「突拍子」である。
「すっとんきょう」に「とっぴょうし」!
「突拍子(とっぴょうし)もない」という慣用的言葉があって、「とんでもなく調子はずれである。突飛である」といった意味。
意味の成り立ちは、「拍子」を突き破っているってことから来ているのか、なんて勝手に想像する。
では、「素っ頓狂」は?
まず意味は、「突然、調子のはずれた声を出したり、間の抜けた振る舞いをするさま。また、その人」だという。
「素っ頓狂」の「すっ」は接頭語だとか。
となると、この「素っ頓狂」も「頓狂」が土台の言葉のようだ。
「頓狂」とは、「だしぬけで調子はずれであるさま。間が抜けて調子はずれであるさま」だとか。
…でも、どうして「頓狂」がこういう意味なのだろう。
「頓」に秘密がありそうである。
「頓」の意味は、「学研漢和大辞典」によると:
1{動詞}ぬかずく(ぬかづく)。ずしんと頭を地につけておじぎをする。「頓首(トンシュ)」。
2{動詞}とどまる。とどめる(とどむ)。ずしんと腰をおろす。腰をおろして動かない。とんとおく。とんととまる。「困頓(コントン)(疲れてとまり、動きがとれない)」「整頓(セイトン)(ととのえておちつける)」「頓躓(トンチ)」。
3{動詞}どんと重みをかける。とんと急に動く。とっさに変化する。「頓足=足を頓す」「頓仆(トンボク)」。
4{名詞・単位詞}腰をおちつける休み所や宿。転じて、休み所で一食するのを一頓という。《類義語》屯(トン)・(チュン)。
5{副詞}とみに。ずしんと。どんと。にわかに。「頓挫(トンザ)(ずしんとくじける)」「頓死(トンシ)(急死)」。
「「頓挫」や「頓死」といった事例はともかく、「頓知」にも使われている。「頓服薬」という言葉もあったっけ。
「頓に」で、「とみに」と読む。
ほかに漢字三文字の言葉というと、「短兵急(たんぺいきゅう)」がある。
「故事百選 短兵急」によると、「突然、出し抜けに行動をしかけてくることや、せっかちに迫ってきて結果を出そうとすること」という意味で、「後漢書」の光武紀の中の「賊急追し、短兵接す」なる文に由来するとか。
わが身を振り返って、ついつい連想してならない言葉として、「素寒貧(すかんぴん)」がある。
「とても貧しいこと。貧しい人を罵る言葉」という意味で、なんだか、文字の字面から受ける印象そのままの言葉のような気がする。
今日の話の意味合いとはやや違うが、「与太郎」という言葉(名前?)も、落語などで聞き慣れていることもあってか、語感も面白いし、やはり言及しておきたい言葉である。
「与太郎(よたろう) - 日本語俗語辞書」によると、「与太郎とは、「馬鹿」「間抜け」を意味する擬人名」だというのはいいとして、「与太郎が普及していく中で与太(よた)と略して使われたり」していたってのも、なるほどと思う。
語感も意味も、面白さとは程遠いが、漢字三文字の言葉として「断末魔」が思い浮かんだ。
意味は、「人間が死ぬ直前の状態のこと。臨終」というのは、常識に属するとして、「元々はサンスクリット語に由来する言葉」だというのは、そういえばそうだったっけ、である。
「苦しみながら息を引き取る瞬間を表すことも多い」とあるのは、なんだか切ないし怖い。
三字熟語ということなら、結構な数、あるようだ:
「ちょっと美しい日本語 三字熟語」
ただ、上記したように、できれば、語感や音的に面白いか変わっているか、何かしら愉しいものであってほしい。
「安本丹」などは以前、採り上げたことがある:
「風船から安本丹へ」や、特に「安本丹のこと(増補版)」にて
「天邪鬼」や「依怙地」ってのも、なかなか面白い。
「韋駄天」なんて、語感からして、かっ飛ばしそうな勢いを感じる。
「金釘流」は、言うまでもなく、「金属に釘で書いたように見える下手な字のこと」といった意味だが、字の思いっきり下手な小生、肉筆の文字にはコンプレックスがあり、この言葉は敬遠気味である。
自分で自分の書いた文字を見ると、手先が不自由云々以前に、脳みその血管にフン詰まりとか小さな梗塞があったりして、滑らかに表記できないのではないかと、しばしば疑ってみたものである。
日記を肉筆で綴るたび、病気(脳梗塞)の予感(懸念)を覚えることがしばしばである(← マジ)!
「閑古鳥」を巡っても、既に一文を物している(こうしてみると、以前から、意味も含め、語感の面白い三文字熟語への関心はあったようである):
「閑古鳥が鳴く!」
「橋頭堡」や「金輪際」も、恰好いい言葉なので、使いたいが、安易には手出しできない気もする。
「殺風景」は、我が家の庭や家の中(心の中も)の様子をそのままに物語っているようで、殺伐の感があり、さっさと通り過ぎる。
「大団円」なんて言葉は、以前、「大円団」と思い込んでいた節があり、恥ずかしがりながら、雑文を綴ったものである。
「美人局」は、「つつもたせ」で、意味合いも知られている。
が、何故にこうした表記で「つつもたせ」と読ませるのかは、謎のままだった。
単細胞の小生、ありがちな想像(妄想?)をしたが、どうやら、博打から出た言葉のようで、拍子抜けである。
そもそも当て字なのだから、表記から読みは繋がるはずもないのだ。
「桃源郷」は、この頃は、妄想の中でさえ、枯山水気味で、我ながら情けない。
「破天荒」も、語感的に突き抜けたものを感じさせ、三文字熟語として傑作である。
「朴念仁」なる言葉に久しぶりにお目にかかった。
でも、自分のことが言われているようで、やはり、さっさと通り過ぎる。
別に小生の本名が「朴念仁」というわけではない。
「摩天楼」も、語感もいいし、言葉の感じと意味合いがぴったりだと感じる。
ここまで書いてきて、まだ「頓」なる言葉の印象を引きずっている。
「頓痴気」、これまた語感が表現内容とぴったり。
「「とん」は「とんま」の「とん」、「ちき」は「いんちき」などの「ちき」に同じものか」とか、「擬人名「頓吉(とんきち)」の転<広辞苑第四版(岩)」とか諸説あるらしい。
一体、誰が作った言葉なのだろう。
この言葉で忸怩たる思いがするのは何故なのだろう。
気のせいと思いたいが。
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