ロズウェル事件の真相とパイロットを救った奇跡の球(後編)
→ 裏の畑の隅っこにある、隣家の畑に用水路を挟んで接する花壇。久しぶりの休みを利用して、整地し、不要になったブロックを連ねて枠を組んで囲いを作り、立派な花壇に仕立てた。従来は、通路の道と漫然と繋がっていたのだ。整備を終えて、チューリップの球根を植えた。ここは、遠くからも、よく見渡せる場所なので、花が咲くと、彩となる、はずなのだ。
過日、紹介した(今も読んでいる最中の)リチャード・ムラー著『サイエンス入門Ⅰ』 (訳:二階堂行彦 楽工社)の中で、ロズウェル事件の真相を筋道を立てて詳しく書いてあったので、勉強も兼ねて、ここにメモしておく:
ロズウェルの円盤の真実の物語は、第二次世界大戦の終わりごろ、物理学者のモーリス・ユーイングが考えた独創的な発明品から始まります。モーリスが発明したのは、太平洋上を飛ぶパイロットの応急用具セットに入っているSOFARという球形の物体でした。パイロットは、もし撃墜されて、救命ゴムボートで海上を漂流することになったら、SOFARを海中に落とすように指示されていました。そして、24時間以内に救助されなかったら、またひとつSOFARを落とすことになっていました。
この奇跡の球には、何が入っていたのでしょうか。もし敵がSOFARを接収して、開いて見たとしても、中は空っぽで、何も出てこなかったでしょう。では、この空っぽの球がなぜ救助に役立ったのでしょうか。この球にはどんな機能があったのでしょう。
その答えを、これから説明しましょう。もともとユーイングは海洋の研究をしていて、水中の音の伝わり方にとくに興味を持っていました。彼は、水深が深くなるほど海水温が低くなり、そのため音の伝わる速度が遅くなることを知っていました。しかし、水深が深くなると、水圧が上がるため、音の伝播速度は速くなります。この2つの効果は相殺されません。モーリスは詳細な研究を行って、音の速度が水深によって変わることを突き止めました。この研究結果でもっとも興味深い点は、水深1キロメートルくらいが、ほかのどの深度よりも音速が遅くなることでした。のちほど説明しますが、これは、音を収束して同じ水深の層に閉じ込める「音響チャンネル」がこの水深に存在することを暗示していました。ユーイングは、ニュージャージーの沖合いで何度か実験を行い、自分の予想通り、音響チャンネルが存在することを確かめました。
SOFARは、中は空洞でしたが、水より比重が大きくなっていました。SOFARは水に沈みますが、音響チャンネルの深度に達するまでは水圧に耐えられるだけの強度がありました。しかし、音響チャンネルの水深に達すると同時に、破裂して大きな音を出す仕組みになっていました。この音は、何千キロも離れた場所でも聞こえる音のパルスになりました。海軍では、この音から、撃墜されたパイロットのおよその場所を割り出して、救助隊を送りました。
ユーイングが発明したこの小さな球は、(当時はまだわかっていませんでしたが)クジラ同士がコミュニケーションを取るために使っている方法と同じ現象を利用したものでした。つまり、クジラも音響チャンネルの中で起きる音の収束を利用しているのです。これについてはのちほど説明します。
第二次大戦が終わると、モーリス・ユーイングは、同じアイデアに基づいた新たな計画を提案しました。この計画は、「モーグル計画」と名づけられました。モーグル計画では、極秘目的の――核爆発を検知する――ために、「フライング・ディスク」が使われました。これは、大気中の音響チャンネルを利用するものでした。しかし、このフライング・ディスクは、1947年にニューメキシコ州のロズウェルに墜落し、大々的に報道されて、現代の伝説となったのです。
(本書 p.352-4)
← リチャード・ムラー著『サイエンス入門Ⅰ』 (訳:二階堂行彦 楽工社) 「世界87ヵ国の人々が絶賛! 驚くほどわかりやすい科学/ハイテク入門」だって!
本書においては、上記の転記文に続き、「ロズウェル事件の事の顛末を理解するには、音の物理について知る必要があります。そして、音を理解するには、波について知らなければなりません」として、音や波の物理の説明へと続いていくわけである(ここでは割愛する)。
念のため(参考のため)、「SOFAR」について、ネットから得られる情報で補足する。
「音響チャンネル(SOFAR), 音響哨戒網(SOSUS) - 海の音響技術 中編 」によると、
「音速が変化することによって進行方向が屈折するため、上層に向かうと温度上昇によって屈折し、深部に向かうと圧力によって屈折するため、ある幅の深度の海中を蛇行しながら長距離伝播します。この音波が長距離伝播する層は「SOFAR(Sound Fixing And Ranging)」と呼ばれています。 SOFAR層は(海洋)音響チャンネルと呼ばれるように、太平洋をまたいだ沿岸同士のような長距離での伝播が可能です」とある。
さらに、「音響チャンネル(SOFAR), 音響哨戒網(SOSUS) - 海の音響技術 中編 」によると、「冷戦下の米国は軍事目的で、世界中の海洋音響観測を行うSOSUS(Sound Surveill-ance System)という音響哨戒網を設置していました。SOSUSは冷戦が終了した後、学術目的などにも利用開放されたため、海底火山やクジラなどの海洋生物の発する音などが観測できます。広い海洋中に生息しているクジラの生態の音響的リアルタイム観測が可能になるなど、学術目的での利用に有用な音響観測網となっています」という。
→ 表の庭の片隅にある花壇。過日、コンクリートブロックで整地した。今日は、中の土壌を整地し、ここにもチューリップの球根を植えた。ここは、人の出入りの多い場所。人の目にも触れる機会が多い。来春、綺麗に咲いてくれるだろう!
上掲の転記文中に、「クジラも音響チャンネルの中で起きる音の収束を利用している」云々とある。
この点についても、「音響チャンネル(SOFAR), 音響哨戒網(SOSUS) - 海の音響技術 中編 」に若干のことが書いてある。
また、防衛大学の「研究室紹介「海洋音響学研究室」」なる頁を覗くと、「SOFAR (Sound Fixing And Ranging)層」などについて、グラフも添えて、丁寧に説明してあって、参考になる。
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コメント
潜水艦や魚雷でこうした音響特性を使うことは聞いたことがありましたが、こうした長距離の伝達は知りませんでした。大気中でも電離層で、短波などの伝達の影響が顕著なのと似ています。
投稿: pfaelzerwein | 2011/11/19 05:29
pfaelzerweinさん
海の底、千メートルの海域に、音を減衰させずに遠くへ伝える層があるなんて、下手なUFOマニアには、到底敵わない研究成果。
お陰でクジラが遠くへ意思を疎通させる秘密までが解けたわけですし。
音、というより、ソリトンなど、波の性質の、想像を超える世界に、素直にびっくりです。
投稿: やいっち | 2011/11/19 20:33