梅原猛著『葬られた王朝』を読んで(前編)
梅原猛著の『葬られた王朝』(新潮社)を読了した。
小生は、三十代の半ば頃から、宇宙論と同時に、なぜか古代史や考古学に関心を抱くようになった。
それも、主に日本の古代史関連。
→ 「遮光器土偶・亀ヶ岡遺跡出土」 (画像は、「土偶 - Wikipedia」より) 「最古のビーナス像発見のニュースに関連して」を参照するもよし。
子供の頃や若い頃は、エジプトのピラミッドやインカ帝国など、世界の考古学や有史以前の話題に興味津々だったものだ。
今も、そういった世界の歴史には関心が薄らいだわけではないが、やはり、関心の焦点は日本に向かっている。
ところで、ショックなのは、本書を既に昨年の秋、丁度一年前の十月に読んでいたこと。しかも、そのことにずっと気がつかなかった。
どこか、記述に(図書館で借りて)読んだような感じがあったが、ほとんど終始、初めて読む本の印象だった!
← 梅原猛/著『葬られた王朝―古代出雲の謎を解く―』(新潮社) 「ヤマタノオロチや因幡のシロウサギなどで知られる出雲神話、それは天皇家につながるアマテラスの系譜とは別個の、スサノオを祖とした、もう一つの王家の物語である。もしこの王朝が歴史的に実在するものであったなら……。『隠された十字架』『水底の歌』以来の、日本古代史を塗り替える衝撃的な論考」!
まあ、寄る年波というところか(グシュン…)。
小生の関心からして、こんな本を目にしたら、手にしないわけがない。
一年前の日記には、以下のように書いている:
(前略)何故か同氏の本は古田武彦氏の本同様、大概、読んでる。学術的な面は分からないが、小説より面白いかも。いずれにしても、古代出雲王国の実在は最早、疑いないのでは?梅原猛の本は、『水底の歌』など、これまで大半の本は読んできた(「梅原猛著『日本の深層』」など参照)。 同氏の論理の妥当性はともかく、柿本人麻呂への関心を掻き立ててくれたのも、同氏の本。
出雲の王国の存在を強く匂わせる加茂岩倉遺跡(銅鐸)や神庭荒神谷遺跡(銅剣など)は、農道工事で偶然、発見されたという。
近隣などにどんな遺跡が眠っているか、想像が膨らんでならない。

→ 「勾玉(まがたま、曲玉とも表記)」 (画像は、「勾玉 - Wikipedia」より)
想像といえば、本書を読んで啓発されたことも多々あるが、ちょっと気になる点もなかったわけではない。
例えば、古代において珍重されたものに「勾玉」がある。
「勾玉は、先史・古代の日本における装身具の一つである。祭祀にも用いられたと言われるが、詳細は分からない」とされるもの。
梅原猛は、これを動物の形を模したものか、と考えておられるが、小生には納得がいかない。
むしろ、一部にその説が立てられているように、形状からして、「元が動物の牙であったとする説」もあるものの、小生は、「母親の胎内にいる初期の胎児の形を表すとする説」を採りたいのである。
「土偶は、人間を模して、あるいは精霊を表現して作られたと考えられる土製品」だが、「新石器時代の農耕社会において、乳房や臀部を誇張した女性像が多いことから、通常は、多産や豊饒を祈る地母神崇拝のための人形と解釈されることが多」いようである。
← 「ヘッケルの胎児の発生図」 (画像は、「胎児 - Wikipedia」より)
土偶が妊娠した女性(しかし、死産に終わった)の魂との関わりがあるとされる(あるいは土偶を意図的に破壊することで、厄除け的に使い、安産を祈願したとも考えられる)が、勾玉も生命という根源への畏敬の念の象徴だと、(あくまで直感で)考えているわけである。
動物の形を模するだけでは、勾玉に祭祀に用いるほどの霊性を感じられないだろう。
死産したりすると、女性の腹を割いて嬰児を取り出すという。
生命そして霊性の始原である胎児だからこそ、敢えて取り出して特別な形で葬ったのではなかったか。
その際のシンボルとして勾玉があり、珍重されたのでは、と考える。
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