« 診察の待ち時間(前編) | トップページ | ウィンスロー・ホーマーなるアメリカの画家はご存知? »

2011/08/24

診察の待ち時間(後編)

 その日、愚痴を零された方は、内臓の病の方。
 ただでさえ、体が憂くてならない。それなのにずっと待たされ、辛かったという。
 
Carl_sagan1

← カール セーガン (著)/アン ドルーヤン (著),『はるかな記憶―人間に刻まれた進化の歩み〈下〉』( 柏原 精一/三浦 賢一 /佐々木 敏裕 (翻訳) 朝日新聞) 「愛・献身という「人間的な」性質だけでなく、暴力・差別などの「非人間的な」側面をあわせ持つ人間。この予盾に満ちた性格はどこから来たのだろうか。最新の科学の成果をもとに、「人間性の起源」を解きあかす、待望の書」という。十数年前、読んだ本。帰郷して、古い蔵書から、あれこれ選んで主に車中で再読している。画像は、下巻のものだが、今は未だ、上巻を半ばほど、読んだところ。データ的には古くなった面もあるが、セーガンの良さは、幅広い観点・知識と、読んで面白いと感じさせる筆致。無類のサイエンスライターでもあったことを改めて実感させられている。

 午前、11時の予約だったのに、診察が終わったのは、一時過ぎ。
 薬を出してもらうためにも、また、待たされ、病院を後にすることができたのは、結局、2時を回っていた、という。
 しかも、診察はほんの数分、とも愚痴られる。


 

 いつ、呼び出されるか分からないので、喉が渇いても何も飲めず、トイレへもおちおち行けず、いつ来るとも知れない、呼び出しの声を待っていたという。 
 この待ち時間で体力が消耗する、という年配の方は、随分と多いのではなかろうか。

 小生は、年初に二週間余り、京都の病院に入院していた。
 その病院では、受付をすると、その際に、診察のためのカードや問診表、その他の用紙の入ったクリアーファイルが渡される。
 案内に随って、当該の病棟の当該の窓口へ。
 まあ、こんなのは、何処の病院でも、似たり寄ったりだろう。
 この病院でも診察まで、結構、待たされたし。

 大きな病院で、下手すると迷ってしまいそうなほど。
 院内には案内を専門にするスタッフも居るし、案内所もある。
 

 この病院のシステムで、工夫されてるなと感じたのは、ポケベル。
 受付の際、ファイルと共に、ポケベルを渡される。

 診察の順番が近づいたら、あるいは緊急の呼び出しがあったら、ポケベルで呼び出される。

  
 ポケベルは、この大学病院の院内だったら、有効。
 なので、病院内の食堂で、あるいは他の病棟で、図書コーナーで、それとも、別の階のフロアーで待とうが、構わないわけである。
 小生などは、院内のいたるところに展示されている、寄贈された絵画作品を見て回ったものである。
 診察を受ける部屋の前で読書しつつ待機してもよかったのだが、せっかくだからと、絵画作品の数々を鑑賞して回った。

 そのうち、ポケベルが鳴る。
 すると、ポケベルの液晶画面に案内が表示され、診察時間が迫っていることが伝えられる。
 おもむろに、当該の診察室へ向かうわけである。

 このシステムだと、さすがに院外へは出られないが、院内であれば、何処にいてもいい。
 喫茶店やレストランで待つも良し、トイレもいつだって利用できるし(緊急の場合も、ポケベルの液晶画面に表示されるから、場所を問わない)、自分が少しでも居心地がいいと思う場所で、待っていればいいわけである。

 待ち時間の解消には直接、つながらないが、待ち時間の難儀さを緩和することには、確かに繋がっていると感じた。
 
 このポケベルシステムというのは、他の大病院でも、すぐにも採用できるのではなかろうか。
 事務的な手続きがやや煩瑣になるとしても。

 とにかく、病院は、診察を受けに来る患者さんたちが、診察の時を待つ、その長い待ち時間を、少しでも苦痛や難儀さを緩和する工夫をすべきではなかろうか。
 知恵を絞れば、ポケベルシステム以外にも、方法がありそうなものである。

|

« 診察の待ち時間(前編) | トップページ | ウィンスロー・ホーマーなるアメリカの画家はご存知? »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

タクシーエッセイ」カテゴリの記事

社会一般」カテゴリの記事

コメント

都会だと病院はタクシードライバーのトイレ休憩にも利用できますね。
病院ー母が死ぬ前に入っていたところは、看護婦がパソコンにデータを打ち込む冷たい雰囲気でしたね。
病院もいろいろありますが、東大病院には世話にならないほうがいいと東大の先生がいっています。
待ち時間ーみんな辛いんですよね。
僕の行っているクリニックなんて待合室が狭く立って待ってる。
さすがに不評をかって九月から分院に診察がみな移ります。

投稿: oki | 2011/08/24 23:04

ポケベルを渡されるとは便利ですね。
安心してお茶することができます。
私のところは、液晶画面に診察間近な4人の番号が表示されるので、自分の番号がなければ、30分以上の猶予があるとわかります。
私は仕事をしたり、エッセイを書いたりして待ちます。
異常にはかどるのが不思議…。
でも、お年寄りにはツラいですね。
ベビーカーのようなものがあればいいんですが。

投稿: 砂希 | 2011/08/25 20:28

okiさん

東大病院のことは知りませんが、大学病院(臨床研究が熱心な病院)って、あくまで印象の上では、患者への対応も、あくまで研究の上の素材、症例という扱いに感じられる。

いつだったか、慶応大学病院へ歯の治療に行ったときも、一切、説明抜きで、いきなり歯を抜かれて、呆気にとられたことが。
その女医さんの無言の、素っ気無い表情に、能面の冷たさを感じました。


とにかく、病院での診察の待ち時間って、ただでさえ、ドキドキしているだけに、病院側の患者らの不安を緩和する工夫を期待しますね。

投稿: やいっち | 2011/08/25 22:42

砂希さん

聞くところによると、新しいシステムを導入している病院だと、待合にポケベルを使っているところが多いとか。
富山は、まだ新しいシステムが導入されていないってことのようですね。

> 液晶画面に診察間近な4人の番号が表示されるので、自分の番号がなければ、30分以上の猶予があるとわかります。

なるほど、それも工夫の一つなのですが、それでも、待合所に居て、確かめる必要がある。
とにかく、待合所を離れても、診察の順番が近づいたことが分かるってのが便利なんです。


> 私は仕事をしたり、エッセイを書いたりして待ちます。異常にはかどるのが不思議…。

そう、不思議ですが、診察の待ち時間って、読書などすると、かなり読み進められる。
集中するからなのでしょうか。

でも、それも、仰られるように、若い人は何とか我慢できる(時間の無駄とかは別儀として)。

やはり、院内であっても、喫茶店で待てるとか、自由度が必要。
お年寄りなどは、畳の部屋とか、横になって待てる場所があればいい。

投稿: やいっち | 2011/08/25 22:51

病院といえば救急車がつきものとの印象が。
救急車が足りないから、迷ったら9110でしたっけに電話してと言いますが、救急車の搬送だと受け入れるまで探すからきちんと診察は受けられるんですよね、搬送中に亡くなるのは悲しいですがー。
9110で自分でタクシーで行ったりすると必要な医療が忙しいもろもれで受けられないと聞いたことがありますね。
弥一さんは9110された方乗せたことあります?


9110は警察に関することでしたね、普段救急車を呼んだらいいか迷ったら?ってやってるのは何番?

投稿: oki | 2011/08/25 23:25

そうなんですよね。「待つのは仕方ないでしょ、みんな一緒なんだから」と言わんばかりな病院もあるし、実際アタシも喧嘩腰で訴えたこともありましたよ(笑)ポケベルはいいですね。それくらいの経費ならすぐに導入すべきでしょ。ホスピタリティの問題ですよね、具合悪くて待ち時間でさらに悪化なんて…

投稿: akko | 2011/08/26 08:30

okiさん

「警察に通報した方がいいのかわからないとか、救急車を呼ぶのが適切かわからないとか、そこまでではないけど心配とか、そういうときに相談できる電話番号というのがある」という話は聞いてました。

調べてみたら、警察の方は「#9110」、救急や消防の方は「#7119」だとか。

つまり、「110番の前に#9」ってのと、「119番の前に#7」ってことのようです。

分かりやすい…ような、ちょっと緊急の際には、番号が浮かばないような。
まあ、自宅などの場合は、電話の前に、番号を記したペーパーを貼っておくのがいいのかな。

小生は、今のところ、そういった関係者と関わりあったことはないです。

投稿: やいっち | 2011/08/26 22:02

akkoさん

ポケベルシステム、確かに便利でありがたいです。
実際、京都の病院に診察に行った際は、ありがたみを実感しました。
診察の前の待合所に釘付けってことはなかったので、病院内をうろうろできましたもの。


病院は、ナースなど人材不足で、患者はともかく、診察に来る人、付き添う人の待ち時間の苦痛ことまでは気が回らない、まわす余裕がないのかな。
でも、特にお年寄りなどは、大変な負担になっているのは事実です。
しかも、体の不具合を抱えているわけですから。

投稿: やいっち | 2011/08/26 22:06

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 診察の待ち時間(後編):

« 診察の待ち時間(前編) | トップページ | ウィンスロー・ホーマーなるアメリカの画家はご存知? »