夏と言えば幽霊(ゾクゾク編)
そう、俗説では、人魂というのは、人の遺骸が土中で腐り、雨が降り、人体の中にあった燐が溶け出し、やがて土の表面に近付いた燐が、何かの拍子に暖められて燃え出すのだと、説明されている。
この説は正しいのだろうか。だれか実験したのだろうか。そうはいっても、今更、人の遺骸を埋めて腐らせるわけにはいかないって。
← 鳥山石燕『画図百鬼夜行』より「狐火」 (画像は、「狐火 - Wikipedia」より)
そんなことは、ないはずである。やる気があれば、何事もできるはずである。
そもそも、何も人の屍骸に拘る必要などない。愛するペットちゃんが死んだら、火葬(荼毘)に付すのだろうか。
そういう奇特な方もいるのだろうが、土中に埋める形で埋葬に代える人も多いはずだ。
そうした動物の屍骸であっても、人の遺骸と原理は同じ筈なのである。実験する機会、観察する機会はタップリあるはずなのである(繰り返すが、小生はしない。怖いし)。
仮に燐が人体ないし動物の屍骸から腐敗により屍骸の表面に浮き出し、さらに、土中に染み込んだ雨などで燐が次第に土の表面に浮いてくるのだとして、その燐が燃えるとしたら、土の表面でなのではないか。
小生は、医学にも疎い人間なのだが、人体に含まれる燐というのは、赤燐だと聞いたことがある。この赤燐は、下記のサイトによると、「紫燐他の固溶体。赤紫色、無毒、マッチに使われる」とある。さらに、「マッチの原理」として、「摩擦熱により側薬中の赤燐(Pn)から少量の黄燐(P4)が気化し(以下、難しいので省略)」と続く:
http://www.h7.dion.ne.jp/~wco-act1/deta.htm
ちなみに、「白燐(黄燐) P4」については、上記のサイトによると、「精製されたものは透明の白色ろう状の固体で一部は赤燐に変わっている。α黄リンとβ黄リンがあり、立方晶系の結晶である。黄燐は化学的に活発で、空気中で酸化されて燐光を発し、有毒である。かつてはマッチの発火剤に使用されていたが、ポケットに入れていたりすると、自然発火して危ないため、使われなくなった。」とある。
要するに、赤燐は燃えづらいし、まして燃えるためには赤燐が黄燐に変化する必要がある。
無論、赤燐が土中において、どのような化学変化を被って黄燐に変化しないとも限らない。例えば、下記のサイトに見られるように、「自然発火するのは有毒な黄燐だが、動物の体内にあるのは無毒な赤燐である。そして、赤燐は簡単には黄燐に変化しない」のであり、どうしても、「死体の燐が燃えるという俗説に説得力をもたせ」たいならば、「土中で赤燐が黄燐に変化するプロセスを明快に説明してやらねばならない」
つまり、土中の「酵素やバクテリア類の働きでそのようなことが」生じるのかどうかを示さないといけないわけである:
「納涼怪異現象レポート」
赤燐が人魂の原因だというのなら、そのメカニズムも含め、自らの責任で主張すべきだということになる。
さて、人魂の発生原因としては、他にも(有力な?)説がある。つまりメタンガス説である。
このメタンガス、知られているように、とても燃えやすい。メタンガスは古い沼などで発生しやすいという。ペースト状の泥の中で有機物が発酵して、メタンガスが発生することがあるのだろう。
このガスは、燃えやすいだけじゃなく、比重が、この人魂現象に向いているというのか、軽くもなく重くもないので(素人臭の強い説明で申し訳ない)天候次第、風向き次第では、人の目線の高さで漂ってしまうこともあるらしい。 そうした空中に漂うメタンガスが燃えると、夜の闇の中では人魂というか人玉というか、火の玉に見えることもある、というわけである。
となると、誰しもが思い浮かぶのは、肥溜めである。それも、ポットン式のトイレの下の肥溜めではなく、古(いにしえ)、青空にあった肥溜めである。
→ 「ウィルオウィスプ」 (「ウィルオウィスプ」とは、「世界各地に存在する、鬼火伝承の名の一つ」。(画像・情報は、「ウィルオウィスプ - Wikipedia」より)
もしかしたら、そうした肥溜めの中の成分が肥の中で練られ発酵してメタンガスに変化することもあるのではないか。だとしたら、他にも気象条件その他が合わさる必要があるだろうが、火の玉も、そうした場所の近辺で発生する事もあったのではなかろうかと推察されるのだが、はて、どんなものだろう。
オナラとかゲップもメタンガスだという。だったら、発射された瞬間のオナラも、上手く点火してやれば、一瞬くらいは燃え上がるのではなかろうか。尻に火がつくとは、このことを指しているのではなかろうか。
どうも、推測が多すぎて困る。何しろ話題の対象がガスだし、人妻と混同されがちの人魂だし、仕方ないとは思うのだけれど。
(04/04/25 記)
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