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2011/06/18

蘇る風景そして写真(後編)

 その兄さんがじきじきに補助輪なしの自転車乗りを指導してくれるというのである。

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→ バラは今日も元気。入梅したとはいえ、雨の降らない日が続いているので、バラにも、毎日、水遣り。


 その場には、普段の近所の遊び仲間の連中もいた。
 小生が補助輪のない自転車に恐々乗るのをお兄さんが後押ししたり、自転車を支えたりしてくれている。
 あるいは、こうやってバランスを取るとか、とにかく熱心に教えてくれていた。

 何時間、コーチされていただろうか。
 数時間だったのか、あるいは、実際のところは、ほんの一時間だったかもしれない。
 自分としては、夢中と言うか懸命だったこともあって、気持ち的には数時間が経過していたように感じられた。

 気がつくと、もう、宵闇が迫りそうなころあい。
 家によってはもう夕餉の時間、あるいは夕食前のお風呂の時間である。

 そんな時間になっても、小生はとうとう補助輪なしの自転車に乗れなかった。
 十メートルも走ったかどうかというところで、倒れそうになったり、道路脇の生垣に突っ込みそうになったり、砂利道の穴に振られたりして、あっさり足を付いてしまう。

 とうとう、お兄さんをはじめ、みんな去ってしまった。
 小生は悔しかった。
 恥ずかしくもあった。
 さびしくもあった。

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← サイモン・シャーマ著『風景と記憶』(高山 宏/栂 正行【訳】 河出書房新社) 「原初の森に分け入り、生と死の川をわたり、聖なる山々に登る―人間は風景をどのように見、創りあげてきたか。これまでの歴史学の手法をすべて捨て去り、大いなる小説を読む感動を与える風景論の名著」といった本。6年前の刊行。4年前、図書館で借りて読んで、深い感銘を受けた。このたび、敢えて購入。金曜日から読み始める。再読といっても、所蔵の本となると、新鮮な気持ちで読める。本書を参考に、幾つか関連記事を書いたっけ。

 大抵は、何回か、後押しをしてもらい、そのうち、支えているよ、と言いながら、その実、手を離しているのに、ちゃんとペダルを漕いで走れているよ! という状態をめでたく迎える、はずなのである。
 なのに、小生は、できない。
 つくづく、自分の運動神経のなさに落胆したものであった。
 
 一人、取り残された小生は、自転車を前に呆然としていた。
 でも、ただ眺めていても、埒が明かない。
 
 自転車の右側に立ち、ペダルに右足を乗せ、自転車を押し、少しだけ勢いのついたところで、自転車に跨り、サドルに腰掛け、ペダルを漕いで…、という練習。
 
 みんなが去ってから、小生は、教えられる逆のほうで試みてみた。
 自転車の左側に立ち、ペダルに左足を乗せ、自転車を押し、後は同じ要領で乗ろうとしてみた。
 すると、一遍で成功してしまった。

 自転車に跨りサドルに腰掛け、ペダルを漕いでも、それまでと違って、ぜんぜん、ふらつかないで、ずっと走れるではないか!

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→ 我が家の庭に育つ謎の植物は多々あるが、これもその一つ。庭のあちこちに点々と生えている。

 なーんだ、簡単じゃないか! ってなわけである。
(人に教えられたのとは逆にやったら、すぐに出来る。へそ曲がりな小生の性分が歴然としている。)

 嬉しかったのか、自転車の脇に誇らしげに、嬉しそうに微笑んで立つ小生の写真を撮ってもらった。
 ビデオはもちろん、カメラだって貴重だった頃のこと、まして小生を写した写真は数少ない中、十歳頃の貴重な記念写真となっている。

 小生の、数少ない、ややひねくれた成功体験なのだった。

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コメント

自転車では苦労したおぼえがあります。
すり傷、青あざだらけになって練習しましたよ。
でも、コツをつかめば、転ばず乗れるようになるんですね。
自分でその方法を見つけるなんてスゴッ!
利き足が、左右逆だったってことなんでしょうか??
幼い頃の成功体験は、先々の人生に影響を与えると思います。
発想の転換ができるようになったとか、プラスの面があるんでしょうね。

投稿: 砂希 | 2011/06/18 20:45

砂希さん

自転車、懸命に練習されたんですね。
その熱意に脱帽です。
小生は、怪我しないよう、びくびくもので練習していたような。

自転車もだけど、オートバイの免許(練習)でも、結構、苦労しました。
不器用で、そもそも、自動車学校でバイクに接するまで、イタズラでも一度もバイクに跨ったことがない。
小型免許は苦労の賜物。
その代わり、大型免許は、スムーズに取れました。
自動車学校でも、上手だ、教えるところがないって言われたっけ。
不器用で覚えるのに時間が掛かるけど、覚えると忘れないタイプなのかもしれないです。

投稿: やいっち | 2011/06/19 23:49

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