富山市街地には坂がない
「富山市の市街地随感」などで、我が富山市の町並みなどについて、あれこれ印象風な雑談をしてみた。
わが町ながら、好きな町ながら、何かしら、面白みに欠ける憾みがある。
何故なのか。
← 我が家の庭先の大きな甕に育つハスに花(蕾)が生っていることに、昨日(日曜日)気づいた。我が家のハスに花が咲くだなんて、びっくり。初めてみた光景だ。どこか古代ハスの雰囲気が漂うような。
古代ハス二千年の夢と咲く (や)
上掲の記事などで縷々、愚痴ってみたが、ふと、他にも理由があると気づいた(といっても、正解かどうかは分からない。あくまで小生の印象に過ぎない)。
それは、街中、市街地に森が少ないこと(親水公園や稲荷公園などがあるが)、そして、街路樹がやや貧弱なこと、である。
街路樹がないわけじゃない。
というより、随分と小奇麗な街路樹があることはある。
清掃も行き届いているし、市街地だと、街灯に小花を寄せ集めたバスケットが添えられている。
車などで、あるいは徒歩で歩きすぎると、結構、綺麗だなと感じたりはする。
が、その街路樹は、やや痩せぎすである。
ほとんどが新しく植えられたばかり。
なので、街路樹といった印象を受ける通りが少ないのである(桜並木などの立派な街路樹の道もある)。
これは、戦災で戦前からの街中の樹木がほぼ全焼してしまったことが大きいのだろう。
まあ、これは時間が解決するのを待つしかない。
あれこれ考えてみて、町並みそのものにも面白みが足りない。
洒落た店が少ないとか、そんなことじゃなく、歌舞伎町とまではいかなくとも、入り組んだ商店街、花町、いわゆる商店などの立ち並ぶ路地が少ないのである。
これも、やはり戦災の後遺症なのだろう。
細い路地の町は、消え去ってしまって、街中のどの商店街も、戦後のもの。
新しい街なのである。
新しい街のよさもあるが、古くからの歴史を感じさせる街の魅力は、市街地を見回る限り、あまり見出せない(あるのだろうし、小生が気づかないだけなのかもしれない)。
歴史の積み重ねのある街の魅力というのは、あるいは、小説の舞台や背景となった一角が方々にある街というのは、歩いているだけで妙に楽しいものである。
さて、富山市に帰郷してみて、散歩するにしても、何か物足りないと感じるのは何故なのか、改めて考えてみる。
歴史、重厚な街路樹、入り組んだ路地などが少ない…といったことだけなのか。
→ アヤメ? 菖蒲? 杜若? 今頃になって咲くなんて、狂い咲きだろうか。
昨夜だったか、ふと気づいたことがあった。
小生の場合、30年以上、住み暮らした東京と比べるから、物足りなく感じるのも無理はない。
美術館や博物館などの数の圧倒的な差。
イベントの数もそう。
東京だと毎日、何処かで何かしら大小のイベントを遣っていて、その中から選べる。
交通の便も悪い。電車やバスは、悲しいほど限られた路線と数しかない。
都会は車社会のイメージがあるが、東京は、実は、地方ほど車社会の構造にどっぷり嵌ってはいない。
地方は、車依存社会なのである。こんな言葉があるかどうか分からないけど、富山(など地方都市)は、カーホリック社会?
高速道路が市街地を通っていない。
地下鉄がない(作る必然性は全くないのだが)。
立体交差する、いかにも都会的な風景には富山では、決して出会えない。
でも、そうした数々は都会と地方を比べての差異で、別問題である。
そうではなく、昨夜、ふと気づいたのは、東京が(案外と)坂の町だ、ということである。
文京区にしろ、港区にしろ、羽田空港や田園調布のある大田区にしろ、みんな坂の町という別の顔を持つ。
渋谷界隈でさえ、原宿も表参道も坂の町なのである。
対して、富山市は、平坦な街である。
北方を覗いて、南方を中心にグルッと立山連峰が市街地を取り巻いていて、まるで盆地の印象を受けたりする。
まさに扇状地の真っ只中。
河川の氾濫なども頻繁にあり、川の流れも市の中心部でも何度も変更されてきた。
そのたびに、街も再開発され、歴史の痕跡が消えていく。
そして、市の中心部には坂がない。
富山市全域を見渡すと、呉羽山近辺には当然ながら、坂はある。峠道もある。切通しもある。
市町村合併で、富山市が肥大化し、「坂の町」を標榜する八尾という魅力的な町が富山市の一部に含まれたりする。
でも、市街地、市の中心部には坂が(ほとんど、あるいは全く)ない。
← 過日、ひょんな事情があって、書家であり北陸書道院常任理事でもある青木春嶺(しゅんれい)氏のご自宅を訪れる機会に恵まれた。同氏は、昨年秋、仏ワインのラベルで大賞を受賞されている。日本芸術をフランスワインのアートラベルにする企画「Paris芸術誕生録」に採用され、全作品の中から大賞に選ばれたのだ。青木氏の書「桜」は、平成20年のブラジル移民百年祭に合わせ、同国で開催された美術展の出品作。「桜」の一字が淡墨のにじみを生かして表現されている」。以上は、主に北日本新聞(2010・10・7)の記事に拠った。「桜」のワインは貴重で数が少なく、小生は、「慈」の一文字が描かれたワインをいただいた。光栄である。もったいなくて、呑めない!
坂の道の魅力というのは、言い尽くせないものがある。
ダラダラと登る(下る)につれ、光景が変わり、次々と風景が変わる、その不思議な魅力は、東京の山の手では当たり前に満たされる。
坂の道は古びた入り組んだ細い路地にも似て、想像力を刺激するのだ。
常に隠れ家的空間がそこにある錯覚を与えてくれる。
(「東京は坂の町でもある」「無言坂…早く昔になればいい」参照)
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コメント
富山市には行ったことがありません。
坂がないんですか。
自転車にやさしい都市ですね(笑)
最近、渋谷に行くことが多いのですが、坂ばかりで疲れます。
人が多くて見通し悪いし。
ところで、ステキなラベルのワインですね。
もったいなくて飲めない気持ちがわかります。
何かのお祝いがあったとき、パーッと飲んじゃうといいですね。
投稿: 砂希 | 2011/06/28 21:57
砂希さん
富山は(少なくとも市街地から海辺にかけては)、坂がありません。
そう、自転車に優しい。
東京在住時代、電動自転車を買っていて、富山に持ち帰ったのですが、蔵の中にしまったままです。
父が使っていた、ママチャリで、十分、間に合う。
坂の街じゃないことも、富山の市街地に何か物足りないものを感じさせる一因なのかな、と。
「人が多くて見通し悪いし」!
そうです。やはり、人の数の少なさ、あるいは多様な人の存在の有無は、決定的ですね。
ワイン、ちょっと飲めないね。
そもそも、お酒に弱いので、ボトルを開けても、呑み尽くすのに数日は要する。
となると、ワインの味がドンドン、気抜けしちゃう。
いいんです。
見せて、自慢するんですから。
投稿: やいっち | 2011/06/28 22:30
東京と富山は比較するには少し無理があるかも
富山と比較するのは金沢が的確かも
距離はさほど離れていないですが、かなり違った都市です。金沢は戦災が少なかったのか、古い建造物も多く見かけました、
兼六園なども平地ではない印象があります、サイホン式の噴水とか。
京都も周辺は山ですので、八坂神社とかの名称が有りますが、中央の市街地は平坦と思います。
神戸は海岸部は平坦ですが、山手部は坂そのものです。
地形が住民に及ぼす影響は知りませんが何かはあるのでしょう。
投稿: 健ちゃん | 2011/06/29 16:54
坂で思い出した。
町田市版画美術館行くのはものすごい坂をくだる。
ということは帰りはものすごい坂を上ることになるわけで息がきれる。
書かれているように渋谷も坂の町ですね。
渋谷川がながれていたんですよね、銀座線の駅は
地上に出ている。渋谷は竹久夢二の住居もあったんですよね、調べると面白い。
弥一さんも富山の歴史探訪されているのかな?
しかし今日は暑がった、富山はいかがですか。
もう異常気象なんていってられない、これが普通になっちゃった。
投稿: oki | 2011/06/29 23:17
健ちゃんさん
東京と富山を比べるのは、無理があるのは承知の上です。
たまたま小生が東京在住の時間が長いので、どうしても富山市の街の特徴を考えるうちに東京のことが意識されてしまうわけです。
富山人間として、金沢は常に意識しています。
なんたって、前田の殿様の縄張りなのですから。
新幹線が通ったら、富山は通過駅になり、金沢に観光客が今まで以上に奪われるのだろうなー、なんて。
地形や土地の位置などは、どうしたってそこに住む人に影響すると思います。
投稿: やいっち | 2011/06/30 21:35
okiさん
町田市版画美術館へは行ったことがありますが、坂を意識したことはなかった。
というのも、小生はオートバイで当地に向かったので、坂を感じるはずもなかった。
なるほど、公共機関を使って、現地の周辺を歩けば、美術館に限らず、体でいろいろ感じるものなのでしょうね。
バイクでは分からない何か、ですね。
渋谷にしても、緩急はいろいろあっても、坂の町ですね。都会というイメージだけじゃ、括れない。
『春の小川』(作詞:高野辰之、作曲:岡野貞一)は、高野辰之が当時住んでいた東京府豊多摩郡代々幡村(現在の渋谷区代々木)周辺を流れる河骨川の情景を歌ったもの。
http://www.worldfolksong.com/songbook/japan/ogawa.htm
暑さ、もしかしたら今がピークなのかも、なんて、希望的観測かな。
梅雨が明けて、夏になったら、冷夏だった、なんてありえないのでしょうかね。
もう、暑さには耐えられない体ですから。
投稿: やいっち | 2011/06/30 21:41