雨絡みの創作の数々(後編)
強烈な精神、信念、論理、言語、明確な輪郭。そうしたものとは無縁な世界。虫けらにしろ、雨にしろ、湿気にしろ、分厚い石の壁や屋根と、ぴっちり締め切られた窓やドアで、外界を一切遮断できる、そんな割り切る論理など、通用しないのだ。曖昧な光と影の境目、拭いても拭いても滲み出る汗と脂。ウジの湧くように命が芽吹く。そして欲望。肉の衝動。雨と暑さで押し拉がれているはずなのに、気がつけばムラムラと本能の衝撃が精神の内側から、信念と論理の固い殻をぶち破って噴き出してくる。
「紅い雨」
「雨に咲く花」
「真夏の夜の雨」
「闇に降る雨」
過剰な暑さは精神を圧倒する。精神の働きを鈍らせる。ともすれば精神が眠りに付こうとする。だからこそ食べ物でも強烈な辛さを求め、絶えざる太鼓の音で、精神のリズムを外部から目覚めさせ活性化させ、命の鼓動で本能を、命を燃え上がらせ、雨にも湿気にも暑さにも怠惰にも負けまいとする。
「黒い雨の降る夜」
「白いドレスの女」
「誰がために走るのか」
「怪談? 雨の音」
「ピンク色の傘」
宣教師の島での影響力には敵わない女は、宣教師に白旗を上げる。他の誰彼にも助けを求める。しかし、宣教師の固い信念は揺るがない。島から追い出される前日も、女のもとへ説教をしにいった宣教師は、雨に負ける。体の芯から腐るような凄まじい湿気に信念が根っこから腐敗してしまうのだ。濃い緑と肥沃な大地と豊かな命の源である海と天の恵である雨とに穿たれる。
((*) 文中に挿入した小文は、書評エッセイ「雨に負けた」より抜粋。)
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コメント
こんばんは。
こちらも一昨日から今朝まで激しい雨でした。今日は風が強く飛ばされそうでした。梅雨に入りましたし台風崩れの低気圧は強烈でした。被災地は大変だったようです、そちらも大雨で大変だったようですね。
投稿: シゲ | 2011/05/30 21:43
シゲさん
そちらは被害とか、なかったのでしょうか。
富山、予想以上に強風、豪雨で、警報が出ました。
さらに、洪水警報まで。
結果的には、大きな被害はなかったけど。
(庭の植物に風に負けたもの、多数。)
投稿: やいっち | 2011/05/31 22:09