中国(語)由来の花の名前
過日、花の名前についての話題で、ちょっとした一文を書いた。
花(草木)の名前で、漢字三文字表記のものが多いのは、偶然なのか、それとも気のせいで、実際には、漢字一文字や二文字での表記のものが多いのか。
そんなことが気になったのである。
→ 過日、営業中、信号に引っ掛かって交差点(右折)で止まろうとしたら、右手の角、コンビニの前の駐車場で騒動。若者が警察官四人に取り押さえられ、パトカーに乗せられるところ。が、若者が抵抗し、警察官たちが懸命に押さえつけている。すぐ傍で連れの女性なのか、呆然と(それとも冷然と)その様子を見守っている。
ところで、そんな漢字三文字表記の花の名前について、あれこれ書いていて、自分の中には、そうした草木の名称の語源というか由来は、中国のものが多い、という思い込みがあることに気づかされた。
漢字自体が中国からのものだし、まして花の名前は古くからのもので、仮に花が日本土着(固有)のものであっても、名称は中国語典拠に違いない、などと。
それというのも、草木の名称があまりに見事なものが多いからだ。
絶妙な表現に感服しないではいられない。
草木(や花)のイメージとダブルからだろうか、多くの草木の名称が絶品に感じられてならない。
そう感じるのは、自分だけではないはずである。
花の美は、実際に目にする実物の美から受ける印象や感銘に拠ると思うしかなかろうが、一方では、案外と植物に付せられた名称が齎すイメージも、植物の我々に与えるイメージの上での美の一因になっているのでは、という疑問も、ほんの僅かだが、湧かないわけではない。
現実に植物の名称などほとんど知らない小生(より正確には、名前と実物との一致がなかなか叶わないという現実に戸惑っている、と言うべきか)、路傍や人家の庭のみならず、我が家の庭の植物でさえ、名前が分からないことが多い。
可憐に咲く花を見て、美に打たれつつも、名前が分からずに、もどかしい思いに気持ちも、もやもやしてしまう。
← 母の日には間に合わなかったけど、仏前に花を供えて、お祈り。ひと気のない家。
さて、草木(特に花の咲く植物)の名前の話に戻ろう。
調べてみると、植物の名前の大半は、日本で付けられたものが多いと分かった。
つまり、いつごろ、どこの誰が名づけたかは分からないが、少なくとも日本固有の植物の名称は、われわれの先人が付したのだ:
「花の名前の由来・木の名前の由来」
上掲のサイトを覗いてみると、花の名前は、古くからのものもあるが、あるいはそんなに古来よりの名称ではないのかもしれないと思わせるものもある。
あるいは、花の起源の地では、その土地固有の名称があったのかもしれないが、時代の変化につれて、別の標準語的名称が与えられ、定着していった、という可能性が考えられる。
「秋田で栽培されているフキ」だから「秋田蕗」とか、「文字通り、朝に開いて昼には萎む」から「朝顔」といった名称はともかく、「きれいな花を見て摘もうとしたら棘があって、驚きあざむかれた。「アザム」が転訛して、「アザミ」(薊)に」なんて、耳を疑いたくなる。
「藍色が集まった「あずさあい」が転訛」して「紫陽花」ってのは、わりと知られているが、この「紫陽花」には、もっと入り組んだ話がある(拙稿「梅雨のあれこれ(紫陽花編)」参照)。
花の名前について調べようと、あれこれ観て回ったが、想像以上に奥が深い。
なので、以下は、「花の名前の由来・木の名前の由来」から、そのうち、個別にもっと詮索してみたくなった名称の花を幾つかリストアップしてみた(既に幾つか、多少のことをメモした花もある)。
→ 蔵前の小さな花壇には、今年も鈴蘭が一斉に開花し始めた。その右側はドクダミの群生。左隅には、突き抜け忍冬が咲き始めている。
キキョウ(桔梗):
名前の由来は「桔梗」の読み、「きちこう」が転じたもので、「桔梗」の由来は、根が「結実(ひきしまっている)」かつ「梗直(まっすぐ)」であることからきたといいます。
イヌノフグリ (犬の陰嚢 ):
実が犬の睾丸に似ている。去勢していない雄犬を真後ろから見ると、この形。
オキナグサ (翁草 ):
白いタンポポのような綿毛が飛ぶと、頭頂部が、禿げた翁のように見える。
キンポウゲ (金鳳花):
もともとは八重咲きのものを指し、花が金色に波打つさまから
クマガイソウ (熊谷草):
ふっくらとした弁を熊谷直実の背負ったほろに見たてた
サザンカ (山茶花):
中国名の「山茶花」は「椿」のことであるが、日本人が「山茶花」と「椿」を勘違いして、漢読「サンサカ」を「サザンカ」にあてた。サンサカ→ササンカ→サザンカと変化
サルスベリ (百日紅):
幹がすべすべして、猿も滑り落ちることから「百日紅」は、花期が中長く、100日も、どれかの紅い花が咲いているという「漢名」から
スイカズラ (吸葛):
花のみつを吸うと甘いこと、水を吸うこと、また毒を吸い取る作用があり、蔓性であることから
スイセン (水仙):
漢名の「水仙」(水にすむ仙人)を日本の音読みにしたもの
← 我が家の庭には、方々にムラサキツユクサが咲き出している。今日(14日)は、チューリップの球根掘りに精を出した。球根は、案外と深いところに根付いていた。
ツキミソウ (月見草):
月が見られる時間に咲く (太宰治は、小説の中で、主人公に「富士には月見草がよく似合ふ」と言わせている。太宰は開花している月見草を見たことがあるのだろうか。夜に?)
ツユクサ (露草):
朝に咲いた花が、昼にはしぼむさまが、はかない露のようだ
トウダイグサ (燈台草):
花の様子を、明かりをともす燈台に見立てた
ドクダミ (蕺草):
「毒痛み」(どくだみ)で、毒にも痛みにも効く薬草という説。
あまりの臭気に、毒が留まっている(毒溜め)という説
ナズナ (薺):
「撫菜」撫でたいほど可愛い花が咲く。また「夏無」(なつな)夏に枯れてなくなる。
ナデシコ (撫子):
古語の撫子は「かわいい子ども」も意味がある。かわいい子供を撫でる
ナンテン (南天):
中国名の「南天竹」「南天燭」から。「難を転じる」の意も
ハクウンボク (白雲木):
白い花が満開になると、木全体が白くなり、雲のように見える
ヒトリシズカ ( 一人静):
静御前が、亡霊である義経と二人で舞っている様に見立てた。
フキ(蕗):
「生吹(ふふき)が転訛」
モクセイ (木犀):
漢名の「木犀」の音読みで、幹肌が皮膚の堅い動物の犀(さい)に似ることから
ヤマブキ (山吹):
黄色の花をつけた、枝が柔らかくしなやかなので、少しの風が吹いただけで、揺れてしまうことから。「山振」、山春黄」。
ユキノシタ (雪ノ下):
白い花を雪に見立てた、雪の下でも葉が緑等、諸説ある。
別名の「虎耳草」は、葉の形を虎の耳に見立てた。
ヨモギ(蓬):
四方に根茎を伸ばして繁茂するという意味から、四方草(よもぎ )という説など。
別名 モチグサ、モグサ、ヤイトバナ、さしもぐさ。
→ 近所のお寺の前を通りかかったら、立派なツツジが。我が家のツツジ(やサツキ)とは、まるで違う勢い、豪奢さ。
レンギョウ (連翹):
漢名の音読み
レンゲソウ (蓮華草):
花の形が蓮の花びらに似ていることに由来。
ワサビ (山葵):
葉が葵に似ていたので、この漢字をあてたが、語源としては、鼻につんとくる辛さの「悪舌響(わるしたひびき)」の説がある。
別名「ゲンゲソウ(紫雲英)」は、一面に咲いている花の様子が、紫の雲のように見えることに由来。
ワレモコウ (吾亦紅):
「吾もまた紅なり」という説が一般的だが、家紋の「割れ木瓜」いう説その他諸説ある。
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コメント
知恵袋のような記事ですね。
イヌフグリは可愛い花だと思っていましたが、中学生のとき、名前の意味を知って仰天しました。
なんて名をつけるんでしょう!
プンプン。
ドクダミは実家にありました。
鼻をつまみたくなるニオイなので、薬にはなるかも。
でも、ドクダミ茶は飲めません(笑)
山葵の漢字が好きです。
投稿: 砂希 | 2011/05/15 21:14
砂希さん
イヌフグリって名前、あんまりですね。
命名した人、付ける名前に窮したのでしょうか。
花の雰囲気に合う、素敵な名前を募集するってのも、アイデアに思えます。
http://homepage2.nifty.com/tnt-lab/s/nat/inufuguri/inufuguri.htm
ああ、我が家の庭にも……。
ドクダミに我が家の庭、占領されつつあります。
どうしたらいいものやら、知恵が湧きません。
投稿: やいっち | 2011/05/15 23:34