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2011/04/20

チェルノブイリの赤い森

 つい先日、営業所の休憩所で、福島原発のことが話題になった。
 原発のことが話題に上るのは日常茶飯事だが、その日は、ちょっと違う話題に話がチラッと及んだ。

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→ 表の庭の隅っこの葉群も開花。

 それは、チェルノブイリの魔の館、あるいは魔の森といった話だった(正確には、どんな言葉(表現)が使われたか、小生の記憶が曖昧)。
 生憎、すぐに仕事が入ったので、その話題を持ち出した人に詳しく話を伺うことはできなかった。

 放射能の漏出を抑えようする石棺ならぬコンクリートの<館>の中で、放射能に汚染された動植物たちが、奇異な姿に変貌を遂げ、既存の耐性を超えた体を持ち、やがて彼らが棺という縛りを解いて、世界へ広がっていく…。

 何年か前、チェルノブイリの「不思議の森」伝説は、週刊誌をにぎわせたこともあったという。
 週刊誌を買わないし、読まない小生は、迂闊にもこの話題は初耳だった。

 せっかくなので、チェルノブイリの「不思議の森」伝説の周辺をさぐってみようと思った(たぶん、他人事ではないはずだから)。

赤い森 - Wikipedia」に簡潔に纏めてある。

 ほとんど、丸写しになりそうだが、関心が高いし、福島原発周辺のありうべき(あってはならない)近い将来の姿として、メモしておきたい。


 チェルノブイリの「赤い森」とは、「ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所から10km圏内にある森を指す」。
1986年4月26日のチェルノブイリ原子力発電所事故により放出された高レベルの放射性物質を取り込んだことにより枯死したマツが赤茶色に見えたので「赤い森」と呼ばれる。事故後の汚染除去作業で、赤い森の木々は伐採され埋め立てられた。この場所は現在でも世界で最も汚染された地域の1つである」という。

赤い森は立ち入り制限区域内に位置しており、原子力発電所の事故で放射性物質を含む煙やちりが雲となり、大量の放射性物質がこの地域に降り注ぎ、マツの木々は枯死した。事故を起こした4号炉の爆発と火災による土壌、水、大気の汚染は広島・長崎に投下された原子爆弾による放出量の20倍であった」とも。

Pripyat_ukraine_abandoned_city

← 「放棄されたプリピャチの居住地区、残存している樹木」 「チェルノブイリは死の世界か、自然の宝庫か」 (画像は、「赤い森 - Wikipedia」より)

事故後の汚染除去作業で、赤い森にあるマツの木々の大部分が伐採されて埋められ、その上を砂で厚く覆いマツの若木が植林された。伐採された木々は放射性物質による汚染がひどく、他の場所に移動させることは危険が伴うためその場に埋めざるを得なかった。木々が朽ちるにつれて放射性物質が地下水に達することが懸念されており、人々は赤い森の周辺の汚染された地区から避難することとなった」のである。

 今、福島原発の周辺でも、たとえば瓦礫の(廃棄あるいは焼却)処分方法について、有識者らの間で検討されているという。
 原子炉法では、原発の敷地内での放射能汚染物質(瓦礫、実際には放射能に汚染された防護服)の処分については、規定があるものの、20キロ圏外30キロ未満の自主避難地域など、敷地外の瓦礫の処分については、法的な決まりがないのだ。

 瓦礫の放射能汚染の度合いなどに応じて、処分が違ってくる。
 放射能に汚染された土壌についても、土壌の入れ替えや、表層と低層の混合(により汚染度合いを薄める)、などなどがされていくのだろう。

 一方、福島原発から20キロ圏内、10キロ圏内の住民は、場合によっては、一定の期間(相当年数の間)、居住が許されない(つまり、強制移住の)可能性も高い。
 なんといっても、水素爆発などで飛散した毒性の高いプルトニウムが散在している可能性がある以上は、居住は難しい。

 人間はともかく、動物たちは、人間がいなくなったことを幸いに、我が世の春とばかりにパラダイスを謳歌するかもしれない。
 高度な放射能汚染に適応したネズミやゴキブリ、ハエ、ノミ、野鳥…。あるいは「チェルノブイリの冷却水に生息するナマズ」…。

Abandoned_village_near_chernobyl

→ 「プリピャチの近くにある放棄された村」 (画像は、「赤い森 - Wikipedia」より)

1986年に人々が避難すると、放射性物質に汚染されているにも関わらず赤い森へ動物が移動してきた。事故後の放射性物質による汚染によって、赤い森における植物相および動物相は劇的な影響を受けた」。

 にもかかわらず、あるいは、放射能物質による汚染土壌(地帯)であるが故にか、「事故後、数年間で赤い森の生物多様性が増したように思われる」!

 ここから、都市伝説ならぬ、チェルノブイリの魔の森伝説が始まるわけである。
 一時期、一部巷間で話題になったりもした。

赤い森の植物の中に突然変異を起こしているものが多数存在するとの報告があり、それにより赤い森は強く変異した植物が多数存在する「不思議の森」であるとの確証のない話がされている。特に、木々の中には空に向って伸びずに枝を不気味に曲げているものもあった」というのだ。

事故後、数年間で巨大化した植物もある。形状は通常のものと同じであるが、サイズが平均よりもはるかに大きくなっているのである。赤い森における植物の巨大化や他の変異は立ち入り制限区域の中でも最も放射性物質で汚染された所で見ることができる」!

赤い森のある場所は、世界で最も汚染された地域の1つであり続けているが、この場所は驚くべきことに多くの絶滅危惧種にとって豊かな生息地になっていることが証明されている。原子炉を囲む地域から人々が避難したことにより、草木が生い茂り他に類の見ない生息地が形成されるに至った」というのだ。

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← 「チェルノブイリ原子力発電所(中央奥)の遠景」 (画像は、「チェルノブイリ原子力発電所事故 - Wikipedia」より)

 放射能汚染土壌(地帯)であるがゆえに、何らかのメカニズムで生物多様性紛いの結果を生み出したのか、それとも、単に、人…人間が避難したことで、絶滅を危惧されていた一部の植物にとってのパラダイスが創出されたという皮肉を思うべきなのか。

 そういった<パラダイス>環境は、植物にとってだけじゃなく、動物にとっても、当てはまる面がある…。

BBCの科学ドキュメンタリー番組“Horizon”が1996年に放送した“Inside Chernobyl's Sarcophagus”では、事故を起こした4号炉の中にできた大きな穴から鳥たちが出入りしているところが見られた」というのだ。

 放射能に汚染された体で鳥たちがパラダイスを謳歌するのみならず、その中の一部の鳥たちがパラダイス外の動植物と交流を持つだろうことは容易に想像される。
 別に放射能を撒き散らすとかじゃなく、遺伝子レベルで新奇な動物が生まれ、そういった動植物たちが世界に何かの影響を与える…。

Chernobylreactor

→ 「チェルノブイリ原子力発電所発電施設 2007年撮影時の様子」 (画像は、「チェルノブイリ原子力発電所事故 - Wikipedia」より)

 炉の中には、あるいは、<新種>の動物たちが、外の世界への進出の機会を待って、虎視眈々としているのかもしれない。
 放射能に耐性を持った動植物が世界を席捲する…。

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