朋あり遠方より来る(後編)
その部屋の暗い窓を見た瞬間、胸が痛んだ。
ああ、あの部屋で母(や父)が一人、入院生活を送っていたのだ、一人、長い夜を過ごしていたのだ、最後を迎えたのだ、と思うと、遣る瀬無い気持ちで胸が一杯になったのである。
その近所の方もだが、長く親の介護を家でやっていた。
入院する直前までは、壮絶な日々だった。
デイサービスを利用しているといっても、毎日、利用できるわけではない。
普段は家のものが世話する。
小生などは、父母が自宅にいる間にどれほどの世話もできなかった。
後になって考えると、いろんな手立てがあったのだと反省の念が湧いてくる。
→ 薔薇の木の新芽の芽吹き。黄緑色の若葉が目に優しい。
父母が亡くなった際には(葬式など一通り、雑事が済んだ後で)、親戚のものに、もっといろいろできたはずなのに、何もしなかったと詰(なじ)られたのだった。
小生は何も反論も弁解もしなかった。
悲しみの際には、誰かが遣り切れない気持ちの受けてになるしかないと覚悟を決めていたからだ。
中には、小生のことをそんな風に思っていたのかと、驚くような非難もあった。
全くの誤解もあった。
その誤解を解く努力もしなかった。
そんな気になれなかった。
家にいて二十四時間、病人と生活を共にする。
その気苦労は想像を絶するものがある。
しかも、結果的に昨年の夏に父母は相次いで亡くなってしまったのだが、父は、小生が帰郷した3年前、あと十年は頑張るからと豪語していた。
あと十年、夜のアルバイト(新聞配達や運転代行など)をしつつ、親戚のものには石潰しと思われながら(少なくとも一番近い親戚のものには、まるで働きもしないで、親のすねを齧って財産を食い潰して、と言われた)、何の展望もない生活を送るのかと思うと、絶望的な気持ちになった。
親と同居できる幸せと言いつつ、日々の暮らしは、下世話なことの繰り返しである(詳しくは書けない)。
長期戦を覚悟していたので、無理はしない、できることを淡々と続ける、自分を追い詰めない、そんな姿勢。
そんな姿勢が、手抜きと親戚のものには映ったらしい。
← 内庭のカエデも、若葉の成長が勢いを増している。紅葉もいいが、緑のカエデも素晴らしい。
近所の親戚の方は、親と生活をともにしての労苦を経験し、昨年の九月(我が家の両親の死から二ヶ月後)、親を見送った。
なので、労苦を共感し合える。
病院の真っ暗な窓を見て、胸が痛んだという話をした際、小生は不覚にも涙が浮かびそうになった。
できることはもっとあったはず、とは小生も思う。
自分のできること、できるはずのことをしなかった面も多々ある。
そう思うからこそ、他人に(近い親戚のものも含め)何と思われようと、どう言われ非難されようと我慢する。
もっともっとできるはず、だったのである。
近所の方とのお喋りは、久しぶり。
自分が不在がちだし、居ても家の中に篭っているか、草むしりや庭掃除をするだけで、近所付き合いも町内会の所要も何もしていないから、ほとんど近所の方と顔を合わせることもない。
近所の方には、親もなくなって、親の財産でのうのうと暮らしていると思われているようだ。
→ 南天の木も、芽吹きの時を迎えている。新芽がドンドン、生え育っている。
夕方近くになって、買い物に出かけた際、近所の知り合いの方とすれ違った。
その際、何やっているんだと聞かれたので、「タクシードライバーです」と答えたら、
「そうだのう、タクシーくらいしか仕事ないもんのー」と彼は言った。
タクシードライバーというのは、何も仕事にありつけない連中の最後の駆け込み寺風に世間では思われているようだ(東京でもそうだったが、富山でも同じだと分かった、というか、富山では一層、そういう理解が強いようだ)。
実際、タクシードライバーの平均年収は、普通のサラリーマンの半分以下。
コンビニのアルバイト店員より手取り年収は少ない(少なくとも小生はそう)!
見下されているのである。
それでも、定職に付いている事に間違いはない。
今は仕事に慣れる、覚える(地名・町名・ビルや店の名前・会社名・飲み屋)ことに懸命。
← 今日は、夏日のような陽気に恵まれた。蝶々やカエル、トカゲの姿を我が家の庭のあちこちに見かけた。トカゲが縁石の上で気持ちよさそうに日向ぼっこしている。
そのうち、少しは慣れたら、ブログに書く日記の内容も変わってくるだろう。
もう少し、この3年間のあれこれの心の後遺症が癒えたら、創作を再開したいとも思っている。
自分がやりたいのは、創作だと、この頃、改めて、つくづくと感じてきている。
妙なもので、今日は、ほかにも、あれこれ思うことがあったのだが、とりあえずは、これだけにしておく。
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