謎の頭痛事件(前編)
なぜか、本を読み始めると蟀谷(こめかみ)の辺りなどが痛み出す。
鈍いような痛み。頭蓋…顳顬(蟀谷(こめかみ))が痛いような感じもある。
脳みそ自体に痛みを感じないような。
というより、痛みの箇所が自分でもはっきりしない。
やがて、吐き気がしたり、熱が出たりしてくる。
← 同じく、庭先の山茶花を撮ってみた。雨に濡れて、色っぽい。
とてもじゃないが、読書する気分じゃない。
老眼鏡を外し、ロッキングチェアーに体を沈めて、しばし目を閉じ、瞑目する。
気持ちの悪さはなかなか取れず、やがて(時間が許すときは)ベッドへ倒れこんだりした。
一眠りすると、大概は頭痛も含め、不快感が薄らぐ。
さっきの痛みは何だったのかと思うほど、すっきりするときもあれば、鈍痛が波のように寄せては返す時もある。
慌しい日々ではあったが(父母が体調を崩したりして、例えば庭や畑の仕事は昨春からは一切、手が出せず、雑草も含め、荒れ放題になっていた。そういった雑事が溜まっていた)、それでも、週に一度は図書館へ足を運び、本を二冊(返却し)借り出して、読むのが楽しみだった。
同時にCDも3枚、借りて、在宅の際は、CDを回しっぱなし。
家の中は、テレビが点いていようとどうだろうと、クラシックかジャズの音楽が流れてやまない。
クラシックなどのCDを借りるのは、読書の際も、BGMとして曲を流しておくから。
ボーカルがあると、つい、歌詞に耳が向くので、読書の妨げになる。
時間があるなら、歌謡曲でもポップスでも借りて聞くのだが、そんな音楽のみに耳を傾けるゆとりの生活は夢の夢だった(し、今も相変わらず事情は変わらない)。
→ 裏の通りに面して育つナナカマドも、一斉に芽吹き始めた。
さて、性懲りもなく、時間を見つけては、十分でもいいから、読書する。
傍らには珈琲だったり、お茶があって、湯気と香りを恵んでくれている。
十年ほど前から使い始めた老眼鏡を架け、本を開き、活字の世界、しかし、脳の中の想像の世界へ遊びに行く。
…はずなのだが、やはり、しばらくすると、頭痛が襲ってくる。
そして、吐き気だったり、熱が出たりする。
たまらず、読書は中断し、ロッキングチェアーに体を沈めていく、それでもダメならベッドに倒れこんでいく。
そんな症状が日に何度か、あるいは週に何度か出る。
必ずしも毎日ではないが、それでも何故かお気に入りのロッキングチェアーに腰を埋め、本を読み出すと頭痛などの症状に見舞われるのだ。
脳みそに何か異常があるのだろうか。
父母が相次いで亡くなって、我知らず心に負担があって、父母の永眠や、その後の法要などの葬祭で喪主として気を張っていたのが、大体の節目は越えて、気が緩み、こんな変な状態に陥ってしまったのか。
そんな中でも、父と同様、病院嫌い(というより、病院が怖い)な小生、病院で症状を見てもらうことはしなかった。
父母に続き、この上、小生まで天に召される、そうでなくても、母のように病院で長い療養生活を送るなんて、真っ平である。
← ナナカマドの芽吹き始めた芽をアップで。
幸いにして、そんな不快な日々は昨年末で(一旦は)終息してくれた。
理由は自分でも分からなかった。
夏の日々の過剰な緊張などの疲れのせいだったのだろうか。
今年に入っても、読書し始めると始まる、例の症状は起きなかった。
でも、脳裏のどこかに、また何かの際に再発するのではないか。
症状が治まったように見えるのは、むしろ逆で、病状が深く静かに進行しているのであって、再度、症状が表面化する際には、今度は重篤な、もしかすると手遅れの状態になってしまっているのではないか。
けれど、父母の世話に明け暮れていた日々は、新聞配達など、夜中のバイトしかできなかったのが、今はもう、正規の仕事に就くことができる。
一月の入院・手術も終わったし、一月の終わりからは就職活動でハローワーク通い。
面接も何度かしたが、最終的には二月の上旬、今の会社に(今は未だ見習いの形だが)拾ってもらった。
→ 四月も中旬に差し掛かると、庭にはいろんな植物が生い茂ってくる。葉っぱだけだと、雑草かどうか、小生には分からない。
その間、不快な症状も起きないでくれている。
直ったのか? 再発はしないのか?
そんな不安は、見習いでの懸命な日々に掻き消されつつあった(…脳裏の片隅に埋み火のように消え残っていた)。
その謎の頭痛につい先日、再会してしまった。
再発!
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