« 「無限」に魅入られた天才数学者たち(後編) | トップページ | 「イヴの卵」とホムンクルスと(前編) »

2011/04/05

「日本の電力政策を問う」の周辺

今、BSフジLIVE のプライムニュースを見ていた:
BSフジLIVE PRIME NEWS

2011_0403071003tonai0031

← 山茶花だろうか、ピンクの花と黄色い雄しべとがマッチングしている。

テーマは、『日本の電力政策を問う どうする?原発の今後 太陽光・風力の可能性

中長期的に日本の電力・エネルギー政策をどうしていくべきなのかを議論する」というもので、まさに、この度の福島原発事故を受けて、これからのエネルギー政策をどうするか、という議論。

より詳しくは、「菅首相は3月29日の参議院予算委員会で、原発見直しの代替案として、太陽光やバイオマスなど、クリーンエネルギー推進の検討を示唆した。果たして、それで日本のエネルギーの安全保障は担保されるのか? 今後の原子力発電をどうするのか? 太陽光や風力などの再生可能エネルギーの可能性、さらに新エネルギーなど、今後の日本のエネルギー政策をどうしていくべきかを議論する」というものだった。

ゲスト:
近藤洋介 民主党総括副幹事長・政策調査会副会長 前経済産業大臣政務官
澤 昭裕  21世紀政策研究所研究主幹
小宮山宏 三菱総合研究所理事長

以上のゲストの中で、小宮山宏(三菱総合研究所理事長)氏の話が一番、面白かった。
番組を通して、同氏の話には自然と耳が向くのだった。
いかにも役人的柵(しがらみ)に雁字搦めの澤 昭裕氏との発想の柔軟さの違いが非常に面白かった。

内緒だが、小生は、キャスターの八木 亜希子さんの大ファン。
彼女がBSフジLIVE のプライムニュースのキャスターを務めてくれているので、可能な限り、番組を(彼女を)見るようにしている。


議論の一端をメモ書きしつつ(箇条書き風で、分かりづらいかもしれないが)、小生の考えも交え、とりあえず、番組の討議内容をメモっておく(やや正確さに欠ける恐れあり。且つ、満遍なく卒なくメモってあるわけではない)。


原発推進政策に異を唱えると、今、原発をなくしてどうするって、短絡的な反論をする人がいる。
原発推進政策に異を唱えるの意は、原発に過大に依存しようとする今の政策に疑義あり、なのだという点が大事。

エネルギー源(電源)は、多様化が望ましい。
(電力会社が地域によって一つしかないってのも望ましくないが、これはまた別の機会に)
現状の原発(今、稼動しているものは安全対策を徹底して)は当面、使い続けるしかない。
ただし、電源にしめる割合は将来に渡って、高くても全体の電源量の4分の1以下にとどめる。
石炭は、日本の技術力だと、効率のいい使い方があるし、懸念されるCO2 にしても、燃焼させた際、抽出することで、大気に排出させない方法がある(すでに北欧などで実施されている)。

しかし、そういった技術は、現に既に使っている日本より、アメリカや中国などの石炭を原料とする火力発電所でこそ、必要。
なぜなら、両国などは、思いっきり効率の悪い石炭の使い方をしている(日本の半分ほどか)。

原発を海外に売るのも悪くはないが(津波にはダメージを受けたが、地震自体には耐えられるということが証明されたかもしれないし ← この点は、福島原発の運営や造り方の過程など、徹底して究明されるべきだし、その分析の結果を世界で共有すべき)、高高率な石炭火力発電の技術を売るほうが、二酸化炭素の削減に大いに資する。

21111_2

↑ 最終エネルギー消費と実質GDPの推移 (画像は、「エネルギー白書2010 - 第2部 第1章 第1節 エネルギー需給の概要」より)


水力、それも小水力は有望。
風力も、林野庁などの問題を解決すれば、設置できる場所がたくさんある(海上でもいい)。
太陽光発電は、高いというイメージがあったが、すでに韓国などは非常に安い値段(日本の今の3分の1ほど)で設置できるようになっている。

日本も、投資した初期の経費は回収されつつあるので、太陽光パネルは、これからドンドン安くなっていく。
韓国に負けない値段での太陽光パネルの屋根などへの設置が可能(政府がもっと積極的に後押しすべき)。

日本の電力の4割は、工場(大企業)など産業界が占めているのだが、これらは省エネ化が進みつつある。
むしろ、これから手をつけるべきは、一般家庭。
つまり、太陽光パネルの設置、燃料電池の設置(電気自動車自体が燃料電池となる)、窓を二重にする、効率のいいエアコンの設置。
これらで家庭やホテルなど、日本の電力使用の5割以上を占めている民生分野や運輸部門での電力使用量を半減しえる。


政府の補助で、東京のホテルや家庭に二重サッシ化を進め、エアコンを高効率のものに変えるだけで、現在使用している電力は半分になる。
(東京のホテルの電気は、LEDを使っていない、窓ガラスは一重、エアコンはやたらと電気を使うだけなど、見かけは立派だが、省エネ、快適性の面で、相当に遅れている、と、海外の人は評価している。)

どうせ赤字国債を発行するなら、こうした面にこそ、投資すべき。

日本の消費する総エネルギー量は、これから段々と減っていく。
右肩上がりでエネルギー使用量が増えることはない。
(効率のいいエネルギーの使い方が一気に進んでいく。しかも、快適な生活の水準を下げないし、下がらないことが前提。車の燃費が昔はリッター5キロほどだったのが、今は20キロが当たり前。つまり、機密性を高め、窓ガラスの二重化などの工夫を重ねることで、省エネしつつも、生活水準を快適な方向に持っていくことは可能なのだ)。

138

← 小宮山宏著『低炭素社会』(幻冬舎新書) 未読なのだが、今夜の番組での同氏の発言を聞いて、興味が湧いた。

東北の復旧・復興が急がれる。
その復興の際のグランドデザインは、これから東北地方などの地元自治体を含めた関係当局や住民らの代表を含めて描かれていく。

その際、災いを転じてではないが、東北において、日本(や東京)の手本となるような、将来の希望となるような都市を作り上げる。
それは、まさに、スマートシティ(スマートグリッド)。

各家庭の太陽光電気や燃料電池などをリンクさせて、燃料電池の高性能化を前提に、快適な町を作る。
その際には、情報もネットワーク化させる。
たとえば、医療をインターネットを通じて高度化させる。
情報もスマートグリッドの中に組み込む。


東北において、復興を目指す際、地元の人たちの我が故郷をどう再生させるか、そのマインドは高齢者の方々など、地元の人が中心になるのだろう。
ただ、どうせなら、東京を始め、日本の各地方が羨ましくなるような、それどころか世界が注目するような、若い人が希望を持てるような、街づくりをすべきだろう。

家庭にいながらにして、診察を受けられるようにする。
段差のない街づくり、家作りをするのは、当然だろう。


太陽光パネルも小水力も、日本の国土の3分の2を占める山林の樹木を使ったバイオマスも、復興特需と併せ、地元の産業の活性化に繋がる。

とにかく、原発推進政策を見直すべきといっても、現実を見据えた、しかも、将来の日本の可能性に希望を持てる政策の可能性を模索すべきだし、今がその時期だということに尽きる。

|

« 「無限」に魅入られた天才数学者たち(後編) | トップページ | 「イヴの卵」とホムンクルスと(前編) »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

社会一般」カテゴリの記事

テレビ情報」カテゴリの記事

写真日記」カテゴリの記事

コメント

NHK今観ています、富山県の小学校。
今が日本の危機ですから、いろいろなことを問い直すにはいいチャンス。
たとえばサマータイムの導入がいわれています。
今までサマータイムの議論はあってもなかなか機会がなかった、いいチャンスです。
首都移転然り、エネルギー政策然り。
今まで大きなことが起こらなかったからだらだら続けてきたのです。問い直すいいチャンスなのです。
石原は花見を自粛しましょうなんていって、看板まで上野公園、井の頭公園に出していますが、心の自由を失ったらおしまいなのです。

投稿: oki | 2011/04/05 23:24

「原発推進政策に異を唱えるの意は、原発に過大に依存しようとする今の政策に疑義あり」 ― フジサンケイグループなどヤクザな企業体とはわかってますが、この前提自体が間違ってます。中長期には原発全廃が世界の基本です。原子力発電などには将来はありません。核エネルギーに関しては核融合へと歩みを進めることが大切です。

「二重サッシ化を進め、エアコンを高効率のものに変えるだけ」などは殆ど笑い話ですよ。総研にいながら全く世界の企業の開発部門の先端を把握していませんね。エアコンは外に熱気を出さなければ江戸時代のように必要ないのですよ。エアコンの必要ない社会を作ることの方が先決です。どうしても暑ければ都庁でも褌で胸当てさえしていればよいのですよ。

再生可能エネルギーは世界ネットさえ完成させれば有り余ります。日本でも地熱など限りない熱があるから暑いだけです。暑ければ人の多い所に住むな、行くな!それとも北海道、でっかいどー。

投稿: pfaelzerwein | 2011/04/06 03:36

なるほど、確かに、
とりあえず今後どうするか…についての提言内容と、
中長期的にはどうしていくべきか…についての提言内容が、
きちんと一直線に繋がってないといけないでしょう。

もちろん、原発は将来は全廃することを目指すべきと思います。
でも、そこにいたるまでには多くの道があり、そのために多くの段階を踏んでもいいのではないでしょうか。

なんて言う前に、最終的にどんな日本の姿にしたいかについて意見もいろいろなわけで。
電気のなかった時代をおおいに手本にするにしても、江戸時代にはもうもどれないわけですから、極論に走ることなしになんか考えなきゃいけませんわね。

投稿: 苑蜩 | 2011/04/06 12:54

okiさん

サマータイム、日本は戦後、一度、トライして失敗したとか。
役人らには、苦い体験だったのでしょうか。
失敗体験が、トラウマになっている?
休日をずらすってアイデアもアイデア倒れのようだし。

首都機能の移転は、企業が率先して、本社機能などを移転したらと思います。
政界と財界との、けじめというか、節度を保つためにも、節電のためにも。

石原さん、花見を自粛って、もう、センスがずれているのではないでしょうか。

日本を盛り上げるためには、省エネしつつも、快適で楽しい生活を追い求めること、この欲求は健全なものだと信じています。
利便性と省エネ、環境保全との二兎を追うのは、夢ではないと思います。
多くの人々もですが、科学者・技術者、日本が生き残るためにも、一段の努力を求めたいですね。

投稿: やいっち | 2011/04/06 15:49

pfaelzerweinさん

原発は、決してクリーンな電源じゃない、むしろ、この上なくダーティだし、人間が制御するには、実際には困難、乃至は取り返しのつかない側面があること、そのことが今、証明されつつあります。

汚染物質が処理され、最終的な廃棄物は地下に埋める、その発想自体、不健全のきわみですね。

一方、「核エネルギーに関しては核融合へと歩みを進めることが大切」と言われますが、核融合は現実性があるのでしょうか。
まあ、確かに太陽などの恒星の中で現に生じている反応なのでしょうが。
すくなくとも、「核融合反応を起こすための起電力を得るために、核分裂炉が必要」で、素人判断ですが、「核分裂反応のような連鎖反応がなく、暴走が原理的に生じない」とはいっても、原発より一層、危険度が増す気がします。

超巨大施設を作るって発想はもう、時代錯誤なのではとも考えます。
むしろ、電源は分散型が望ましいのではないでしょうか。
各家や工場、ホテル、施設などで個別に発電する。
ただし、ネットワークでつないで、万が一に対応すると共に、蓄電しつつ、余剰分を融通し合うのがエネルギー安全保障の面から考えても、理想に近いと思われます。


エアコンの必要のない社会。
屋上だけじゃない、壁面緑化とか。

そもそも、熱を外に排気するエアコンなんて、消費電力の大きさからしても、発想がまずいのは明らか。
熱を外に出して、お互いに環境を暑苦しいものに、つまりお互いに首を絞めあっている。

発生する熱をうまく処理し、外に熱を出さないような、さらには(夏場でも)熱をうまく再利用するようなシステムを考えるべきで、技術者なら考えられそうなものです。

電車内とかデパートの中、大手企業のビル内などは、夏は冷房が効きすぎです。

それはそれとして、エネルギー政策についての内田樹氏の発言は至当なのでしょうか:
http://blog.tatsuru.com/2009/07/04_1635.php

特定の集団に選択的に利益をもたらすエネルギー政策は存在するが、人類全体に利益をもたらすエネルギー政策は存在しない。
人類全体に利益をもたらすエネルギー政策があるとしたら、それは「世界中の国民が一斉に産業革命以前のライフスタイルに戻る」というものだけである。
                   (以上、転記)

そうはいっても、夏場の避暑など夢の小生は、今年もゴーヤや糸瓜作戦を敢行しますが、家の中では扇風機から離れられないでしょう。

投稿: やいっち | 2011/04/06 16:15

苑蜩さん

原発は、というより、超巨大施設に依存する(あるいは、特定の独占企業に依存する)エネルギー政策は、時代錯誤だと思っています。

上でも書いたように、電源については分散型で、その上で(医療・介護などをを含めて情報)ネットワーク化して、エネルギーを融通し合うシステムが望ましい。

原発については、今回の現在進行形の福島原発の事故の教訓と反省をいくら重ね、その上で既存の原発に対策を施しても、<想定外>の事故は、必ず起きるものと考えます。
別に悲観的になっているのではなく、そもそも作ったものは壊れる。
問題は、廃炉(廃棄)する前に、巨大な事故に遭わないよう、時間との戦いだというだけのこと。
運がよければ、事故が発生する前にめでたく廃炉となる施設も多いのでしょうが、そううまくいくものかどうか。

他でも書いたように、快適で便利で楽しい暮らしを追い求める人間の欲望は、基本的に望ましい、健全なものと思っています。
なので、科学者・技術者らの尻をたたいて、もっといいもの、もっと安全で快適な暮らしに繋がる発明と工夫をしろよと。

無論、自分たちなりにできる工夫は、やったほうがいいに決まってます。
とにかく、赤ちゃんからお年寄りまでが乗る船(地震と火山、風水害の多い)なのですから、誰もが一緒に乗り続けられる工夫が望ましいに違いないのですね。

投稿: やいっち | 2011/04/06 16:25

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「日本の電力政策を問う」の周辺:

« 「無限」に魅入られた天才数学者たち(後編) | トップページ | 「イヴの卵」とホムンクルスと(前編) »