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2011/03/01

ヒポクラテス『古い医術について』(後編)

 神聖病という章がある。
 神聖病とは、今風な言い方をしたら精神病とか統合失調症、もっと広く心の病全般かもしれない。当然、現代では、原因の必ずしも特定されないものから、脳に腫瘍が出来て、機能障害を起こし、結果として精神の病かのような理解不能な行動になってしまうものもある。

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→ 「春のやよいの このよき日 なによりうれしい ひな祭り♪」には、まだ早いけど、我が家の庭先の梅の木は、今年もちらちら花を咲かせてくれた。近所の家の壁を背に今日の午後、雨の中、撮影。

 古代においては、そうした神聖病は治療など論外で、ただ、時に神がかりの状態になり、常人では考えられない何かを神の啓示の如くに示す(いや、神の啓示、お告げそのものだ)と思われたのかもしれない。

 いずれにしても、触らぬ神に祟りなしで、だからこそ、神聖病と呼称されたのだろうが、多くは頑迷な<治療者>の手により、放置され、あるいは御祓いされるだけで、成り行き任せにされるのが常だった。
 直ったらお払いをした人のお陰だし、ダメなら初めからダメだったというわけである。

 しかし、ヒポクラテスは、神聖病を神がかりな病だとはみなさなかった。

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← 小生の育て方が下手なのだろう、梅の木の花は、疎ら。小生には枯れ木に花を咲かせる能はないみたい。…別に、「いじわるじいさん」になれるほどの覇気もないのだが。

 必ず何らかの気質的なもの、地上的なもの、体内の粘液の巡りが不全になって病的になるものと考えたのである。
 その説明は、やはり首を傾げるようなものがないではないが、当時としては誰もが治療どころか放置するのが当たり前の中にあって、病気なのであり、場合によりは治療可能なのだと考え、彼なりに治療も試みるという先見の明に溢れた洞察だったのだろう。

 本書の末尾には、有名なヒポクラテスの誓いが載っている。

 以下のサイトで小川鼎三訳での全訳を読める:
ヒポクラテスの誓い

 以下では、ある医療関係者による「ヒポクラテスの誓い」に対する感想などを:
『ヒポクラテスの誓い』への感想。 Sunny of place

 読んで分かるように、この誓いは何よりも神への誓いであることだ。次に、医師の仲間内の掟が何よりも重視されている。その次にやっと患者の養生の話が出てくる。

「いかなる患家を訪れるときも、それはただ病者を利益するためであり、あらゆる勝手な戯れや堕落の行いを避ける」という一項は、当時の医者の実情を憂えてのことだろうか。敢えて戒めなければならないほどに誘惑が多かったのだろうか。「女と男、自由人と奴隷の違いを考慮しない」というのは立派な姿勢だが、つまりは実態において、男と女の差別があり、自由人と奴隷の差別が厳然としてあったということなのだろうか。

 一般にヒポクラテスの偉大さは、医術を呪術から分けたことにあると言われる。誓いは神への誓いであっても、病は地上のものとして、決して神がかりには扱わなかったということなのだろう。

 神聖病への対処にしても、あくまで病として捉えている。相当に根強い偏見と反発があっただろうに。古代の医師の理念の中に、インフォームドコンセントを含め患者の権利などが十分に理解・反映されていないなどと述べるのは、無理な期待なのだと思う。

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→ 梅の木の幹の惨状を見たら、花はかろうじてしか咲かないのも分かろうというもの。今年も、梅の実の収穫は期待薄のようである。

 それより、徹底した経験と観察と、そして常識に囚われない勇気が医師には必要なのだと感じさせたことに感謝すべきなのだろう。

                            (03/08/21原作

 ヒポクラテスの『古い医術について』(小川政恭訳、岩波文庫)は、お医者さんや医療関係者にこそ、読んで欲しい本だ。
 …学生時代には、恐らくは読んだことだろうけど、改めて!

 それにしても思うのは、あくまで理想論に過ぎないのだが、医者は専門医たる前に、人間(の病、できれば心身共に!)に全的に向き合うようであってほしい。

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