富山を走り回ります(これで完結)
前回の日記に書いたように、小生は東京でタクシー業に携わった当初から、「流し」営業でずっと通してきた。
東京という大都会で、自分なりにお客さんのいそうな場所を想定し、工夫を凝らし、空車で流して、お客さんを見つけ、お乗せするわけである。
← 薬種商の館 「金岡邸」 「300年の歴史をもつ、富山売薬業に関する資料が保存展示され、国内でもまれな売薬資料館」なのだとか。過日、紹介した「内山邸」、「浮田家」、「森家」、そしてこの「金岡邸」などが観光の目玉なのは、無論、それぞれに富山において果たした意義、建物としての(歴史的・建築史的)価値もある。
喩えが悪くないとしたら、海や川へ釣りに行き、狙ったスポットで釣る(お乗せする)わけである。
最初の何年かは、それでうまくいった。
小生の性分として、ホテルにしろ病院にしろ、何処かに待機して、ずっとお客さんを待つってのができない。
まして、営業所に待機していて、無線が空車の車たる自分に架かってくるのを待つのはいやだった。
ここには、単にスタイルの好悪以上のものがある。
タクシーというのは、運送業のようであって、実は、対人の仕事であり、サービス業なのである。
現代においては、ますますサービス業となっている。
対人間業なのだ。
→ が、こういった建築物が観光の目玉なのは、実のところ、富山市は特に市街地は空襲(戦災)で壊滅的に焼失し、江戸時代以来の文化的な価値を有していた建物などの史跡(の可能性のあった施設)がことごとくダメージを受け、観光の目玉が乏しいこともある。隣県(石川県)の金沢市との比較はおろか、富山県の拠点市である高岡市と比べても、贔屓目に見ても遜色がある。だからこそライトレールや親水公園(運河や川での遊覧船)など、逆に新しい都市作りに挑戦できる、という面もあるのだが。
営業で事務員がお客さんからの電話を受け、営業所の休憩所やタクシーの中で待機する運転手にどこどこのだれそれと伝えられ、ドライバーが当該の家や場所へ向かう。
向かったら、ドライバーは車を降りて、後部の(客室)ドアを開けて、お客さんをお乗せする。
礼儀も大事である。服装も大事である。
何より、お客さんを人間として大切に扱わないといけない。
当たり前のこと?
そうなのである。
小生は、人間嫌いってことはないが、人間が苦手ってところがあって、東京で流しのタクシーをやっていたのも、丁寧な営業、安全・迅速・的確な営業を心がけてるのは当然として、お客さんを下ろした後は、たぶん、二度とその方と会うことは無いだろうという、無機質なところが好きでもあった。
← 「主屋は明治初期の商家、新屋は、総檜造りの豪華な建物」という。タクシー乗務員としての研修中、勉強のため、訪れてみた。ただし、中は見学していない。
持続的な人間関係を構築するのが何より苦手でもあった。
だから、「流し」のタクシーをずっと東京で続けてきたのである。
センチメンタルなエッセイを書けたのも、そんなスタイルの故でもあった。
それが、営業所での待機スタイルでは、お客さん(その顔や性格、自宅、よく車で向かう場所などを含めて)を覚えておいて、お客さんを乗せたら、お客さんが黙っていても、目的地へ向かえるようでないといけない。
まだ営業の実務を富山で始めて一週間だが、営業のスタイル自体には慣れつつある(多数にのぼるお客さんの顔などなどは、ほんの少ししか覚えていないが)。
→ 「国指定重要文化財 浮田家住宅」 2月半ば、タクシー乗務員としての研修中、富山市の観光拠点の一つ、ということで、場所を覚えるため、訪れてみた。
営業所が市街地からやや離れているということもあって、利用してくださるお客さんは、ビジネス関係は別にして、かなりの割合でお年寄りの方が多い。
若者などは車を使うが、あとに残された年配の方たちは、市から配給されたタクシー券などを使って、タクシーで、それこそ下駄代わりに何処へでも向かうわけである。
スーパー、病院、カラオケ、パチンコ、コンビニ、何かの施設などなど。
← 「江戸時代中期の豪農民家の建築様式を旧態のまま残しており、昭和54年に主屋、表門、土蔵の3棟が国の重要文化財に指定され」たのだとか。
昨年、小生は父母を亡くした。
あまりできなかった父母への孝養を、我がタクシーを利用してくださる地元のお年寄りの方たちへ、可能な限り懇切丁寧な営業をすることで、尽くしている、そんなふうにも思ったりする(虫のいい話かもしれないが)。
ただ、人間が苦手で不器用な自分だけれど、だからこそ、敢えてその苦手にチャレンジする、という気持ちもあるのだ!
冒頭の引用で、「この結論に至るのには、実は、人に言えない悩みがあった」と書いているが、小生の一番、苦手な対人関係(つまり営業とはそういうもの)を、人並みにできるか心配だ、というのがあったのである。
→ 訪ねたのは、初めて。さすがに二月の中旬では、観光に訪れる人もいないようだ。閉館中ではないらしいのだが。春からの観光シーズンに備えてだろうか、工事中だった。肝心の建物の中は見物していない。あくまでタクシーでの観光案内のための勉強である。とはいっても、一度は、見学しておかないと。
できるような気もする。
難しいような気もする。
まあ、自分がこれからどうなっていくか、楽しみである!
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コメント
こんばんは。
タクシー業務を再開されたのですね、おめでとうございますといってよいのやら。
今は車にカーナビがついてますから、お客さんが眠っていても目的地につけますね。
今度の日曜が四十九日法要でして、骨と位牌を持っていかなければならないので、タクシー頼まないとー。
土地は売って、マンションに住むことになりそうです。
そうすれば、何千万もまた手に入るとかー。
弥一さんの広い家での一人暮らし、早く相続が解決して、ゆっくり落ち着けることを願っています。
もう富山で骨をうずめると決められたのでしょうか。
投稿: oki | 2011/03/01 23:36
okiさん
相続の件、まだ中途半端なのですが、生活のほうが厳しくなっているし、正業に就くことに決めたのです。
(財産はなかったし、家屋や土地を維持するのが大変。マンション住まいしたかったのですが、望み薄でした。)
ハローワーク通い、しましたが、自分には何かの職業をやる技能がないってことを思い知らされるだけでしたので、タクシーという仕事が選択肢の中で唯一、残ったのでした。
富山でのタクシー業は、東京での経験が生きる、とは到底、言えないのですが、頑張るだけです。
投稿: やいっち | 2011/03/02 20:45
こんばんは。
富山ではタクシー使われるのはお年寄りが多いのかな。
あさってが四十九日なので、京王タクシーに電話してみたら、ながしている車が多いので当日二十分前にでも電話くれれば走っている車を必ずつかまえます、といわれました。つまり予約はできなかったのですが、弥一さんの経験から、タクシーとはそんなものなのでしょうか?
タクシー、サービス業なのはそうなのですが、中には「防犯カメラ設置」と書いてあるタクシーもありますね、弥一さんのところは?
三月になっても寒いですねえ、お互い気をつけましょう。
投稿: oki | 2011/03/04 23:01
oki さん
>富山ではタクシー使われるのはお年寄りが多いのかな
富山では、と限定していいのか、分かりません。勤めている会社は地元密着型で、特に新人は、地元の常連さんを覚えるのが、最初の責務のようなものですから。
そういった地元の常連さんは、年配の方が多いです。
特に、足腰の弱った、しかし、積極的に外に(買い物、温泉、病院)出ようという意欲を持っておられるご婦人方が多いみたい。
あとは、ベテランだと、マスコミとか葬祭関係の仕事が多めになるみたいです。
タクシーは、東京と富山のようなローカルな地域とは事情が違うと思います。
東京だと、地域によりますが、流しのタクシーが、それこそ有り余るほど走っているから、何も予約しなくても、出掛けにパッと外に出たら、いつでも空車が見つかることが多いのではないでしょうか。
でも、予約を断る会社ってのは、疑問符の付く営業をやってますね。
「防犯カメラ設置」という会社は大手。
小さな会社だと、カードリーダーもないし、ナビもないし、ドライブレコーダーもないし、ひたすら地道に遣っていくしかないみたいです。
お互い、独り身、体に気をつけて晩張りましょう。
投稿: やいっち | 2011/03/06 18:24