『セルボーンの博物誌』の周辺(後編)
[本稿は、「『セルボーンの博物誌』の周辺(前編)」からの続き]
本書の魅力は、やはり、読んでみないと分からないかもしれない。
→ 「ウェイクス荘(セルボーン)」 「1758年に父が亡くなると、ホワイトはセルボーンに戻り、ウェイクス荘に定住。1763年に正式に相続」。ホワイトの足跡を求めて、日本からも少なからぬ方々がセルボーン村を訪れる。 (画像は、「ギルバート・ホワイト - Wikipedia」より)
学術的にも、(特に博物学的知識、動植物への知識や観察眼を持つ現代の人なら)、記述上の間違いを指摘しえるはずなのである(小生でさえ、??と思った箇所がないわけじゃない)。
小生にしたって、読み出したら、妙に(読んでいる当の自分でさえ、なぜか分からないままに)その文章の力に誘われるがままに退院の日(金曜日)の慌しさの隙間を縫って読み、よほど、あと一日、退院の日を延ばそうかと思ったくらいである(退院した翌日は土日だから、新たに入院する人もいないだろうし、退院の日は金曜日以降であれば、自分の意思で決められた)。
描かれているのは、観察の対象の地であるセルボーン村の鳥や昆虫などであり、要は草木鳥獣などの自然観察と分析とに、天候を含めた自然界のことに尽きる。
シェークスピアのような人間ドラマなんかじゃないのだ、が。
(ホワイトの生誕地セルボーンについては、たとえば、「木島タイヴァース由美子のブログ » セルボーンの博物誌の故郷を訪ねて」が写真も豊富で、とても参考になる。「英国セルボーン村」もいい。)
← ギルバート・ホワイト/原著『セルボーンの博物誌の鳥たち』(井沢浩一/編纂・訳 黒田万知子/挿画 生態系トラスト協会) 「博物誌」「の紹介と共に登場する全ての鳥のイラストを加え、その真髄が伝わるように編纂した完全対訳本。セルボーニアンである著者の心意気が伝わる名著」とか。本書は未だ手にしていない。
本書の日本語訳書にしても、各種ある。
その中のある訳者「西谷退三氏は七十三才の生涯を『セルボーン』の翻訳に精魂をかたむけ『セルボーン』の文献収集のために渡英したが『セルボーン』の刊本百三十余種九十一冊を持ち帰ったという。西谷氏はホワイトと同じく生涯結婚せず、高知の郷里に閑居し、ホワイトの幻影を追うように孤独てんたんな生涯を送り、一千枚の訳業を残して世を去った」という(本書・奥田夏子氏による解説より)。
(「セルボーン案内」の中にて「西谷退三 小伝」が読める。井沢浩一氏は、西谷退三の研究をしているとか。)
本書の奥田夏子氏(英語学者?)による解説によると、「ホワイトは臨終の日、愛する懸崖林が窓外に見える居間にベッドを移し、林を眺めながら息をひきとったという」。
(11/02/07(8)作)
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