思い出は褪せていく 竹垣の朽ちるように
→ 我が家は道路に面する庭は竹垣。けれど、いったい、いつごろ、敷かれたものなのか。朽ち始めてからでさえ、久しい。我が家を囲繞する竹垣で、遠目には竹垣の体(てい)を成しているのは、この一角だけ。
今の竹垣がいったい、いつごろ組み立てられたのか、小生は覚えていない。
まさか、小生が小学生や中学生の頃ではあるまい。
それだと、竹垣が設置されて40年を超えることになる。
普通、竹垣の寿命はどれほどのものなのか。
← 裏庭の竹垣など、崩壊寸前、乱杭状態。というより、人によっては、すでに朽ち果ててると見做すだろう。夏には西日が厳しい。なので、簾(スダレ)が必須。できるだけ、杉などの樹木の枝葉を生い茂らせるように努めているのだが。
近所でも、これだけ惨めな姿を晒している竹垣はない。
そもそも、竹垣の家は少なくて、大抵が立派なブロック塀だったり、コンクリート塀だったりする。
要は、大概の家が改築されて間もない。
我が家のように築50年をとっくに過ぎている家は、近所では見当たらないのだ。
→ そんな竹垣の竹たちだが、健気にも竹垣たらんとしている。溢れ出ようとするササ(クマザサ?ミヤコザサ?)の勢いに押されつつも、懸命に堪えている。以上、いずれも27日撮影。
そんな古びた竹垣だけれど、山茶花の道、竹垣の道で、小生が育ったのも事実だし、ささやかなドラマもあったりする。
だからだろうか、小生の織り成した掌編でも、竹垣が登場するものが幾つか見受けられる。
たとえば、「いつか来た道」、そして、「雨宿り」など。
← あったはずの竹垣が朽ち果て、生垣となっている箇所も。竹垣の代わりに、縄で括って、雪の重みに耐えかねて倒れるのを防いでいる。この生垣の直下には、燃えるゴミ置き場があり、カラス避けネットの紐が生垣の枝に引っ掛けられるのが常となっている。
小学2年か3年の頃、初めて買ってもらった自転車を練習したのも、この竹垣の道でのこと。
最初は補助輪を付けていたのを、なんとか補助輪なしで乗れるよう、近所の兄ちゃんらにコーチしてもらったのだが、うまくいかない。
人が見ていると、プレッシャーになって力が発揮できないのは今も昔も同じ。
→ この箇所も竹垣が崩壊して久しく、かといって、ナナカマドや山茶花などが勢いのままに道路にせり出してくるのを放置もできず、納屋の奥でほこりを被っていた、こんな木製門扉を竹垣代わりに設置している。いっそのこと、竹垣をやめて、全部、この木製門扉で統一したほうが見栄えがいい? でも、それもおカネが掛かる。
みんなが呆れ果ててか、それとも時間が遅くなったからなのか、誰もいなくなって一人きりに。
気を取り直して練習したら、すぐに乗れるようになった。
そんな姿を見守ってくれたのも、竹垣の道、山茶花の道だったのである。
そんな思い出も、雪の融けるように、色褪せていく。
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