アクゼル著『神父と頭蓋骨』(前編)
でも、その前に、数学や物理、生物、天文学などの書架をチラッと見て、と思ったら、何か奇妙な題名の本が目に飛び込んできた。
『神父と頭蓋骨』だって。
この題名から、小生、なにやらピンと来るものがある。
というのも、ちょうどその頃、読んでいた本の中に、ピエール・テイヤール・ド・シャルダンが北京原人の頭蓋骨(など)の発見に深く関わっている、という記述を目にしていたので、へーと思っていたのだ。
だったら、いつか、その関係のことを調べてみようか。
それがこんな形で、数日も経ないうちに、相手のほうからやってくるなんて!
小生が学生の頃、ピエール・テイヤール・ド・シャルダン著の『現象としての人間 (Le Phénomène Humain)』を読み齧ったことがある(はずである ? !)。
実に記憶があいまいである。
もしかしたら、その本を手にはしたが、偏見があって、読み飛ばしたかもしれない。
高校時代の一時期、熱中したアンリ=ルイ・ベルクソン(Henri-Louis Bergson)の世界と、思想は違うとしても、傾向(資質)において二人に何かダブるものを感じていたから、のように思う。
← アミール・D.アクゼル/著『神父と頭蓋骨―北京原人を発見した「異端者」と進化論の発展』(林 大【訳】 早川書房) 「一流の古生物学者、地質学者にして、敬虔なイエズス会士であったピエール・テイヤール・ド・シャルダン神父(1881‐1955)」の伝記。さすが、科学ノンフィクション作家であるアミール・D.アクゼルならではの、傑作。これまでアミール・D.アクゼルの本を何冊も読んできたが、外れはなかったが、本書はその中でも傑出していると思う。面白い。ピエール・テイヤール・ド・シャルダンの本を読み直す気にさせてくれた。…というより、小生は彼のことをまったく知らなかったのだ。
高校生二年のときだったか、世界の名著(中央公論社)シリーズで「ベルクソン」の巻があって、読み通した。
「哲学的直観」や「意識と生命」が載っている中、特に『形而上学入門』には痺れた(『道徳と宗教の二源泉』は、退屈した)。
その後、大学生になって、『笑い』(林達夫訳、岩波文庫)には、感心したものの、肝心の『創造的進化』(真方敬道訳、岩波文庫/ちくま学芸文庫)や『物質と記憶』(ちくま学芸文庫)や『時間と自由』は、読み齧るのも苦しいほど、つまらなかった。
何か神秘思想めいたものを感じるばかりだったのだ。
科学の裏付け・素養はあっても、あっさり形而の世界を離れ、飛んでいってしまっていると思えてならなかった。
その経験があるので、ピエール・テイヤール・ド・シャルダンのことをベルクソンの二番煎じ的な存在としか見做せなかったのだ(ちゃんと読まなかったことの言い訳にもならないが)。
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