「ダーウィンの珊瑚」の周辺
このところ、直接間接を問わず、ダーウィン(の進化論)絡みの本をよく手にする。
フロイトは、やや揶揄気味に扱われるようになり、マルクスの著や思想は書庫の奥で埃を被るようになったが、そんな中、ダーウィンの理論だけは、いよいよ確固たるものとなってきている。
← ホルスト・ブレーデカンプ:著『ダーウィンの珊瑚』(濱中 春:訳 叢書・ウニベルシタス949 法政大学出版局 2010年12月刊) 副題:「進化論のダイアグラムと博物学」 「ダーウィンの進化のモデルは、もともとは種の間にヒエラルキーをもたらす系統樹ではなく、無秩序に枝分かれし、絶滅した種と生存する種を同時にあらわすことのできる珊瑚(サンゴ)であった」という内容。
図書館でも、遺伝子関連の本でなければ、ダーウィン理論を扱う本に目が向いてしまう。
さて、よく目にする進化の系統発生を表す系統樹は、文字通り、樹木の枝分かれであって、そこには、当然ながら絶滅した種の行方は見かけ上、見えない。
→ 『生命の樹(Tree of Life)』 「旧約聖書の創世記(2章9節以降)にエデンの園の中央に植えられた木。命の木とも訳される」もので、「カバラではセフィロトの木
ダーウィンは、(『進化論』の書を世に問う)ぎりぎりまで、死滅した化石種を点線などでも描ける、進化のダイアグラムとしては、珊瑚をメタファーとして考えていた。
現実に発見される種の痕跡も、すべてが連続する形で見つかるはずもなく、進化がジャンプしているかのような(点線の途切れが大きめになったりといったような)図像にならざるを得ないわけである。
← 「枝状の霜」 これは、小生の勝手な趣味で載せた窓に降りた「霜」の画像である。今朝はさほではなかったが、朝の出勤の際、これまでずっと車の窓に降りて張り付いている霜に悩まされてきた。ダーウィンが進化のダイアグラムで、系統樹か珊瑚かで迷ったという高尚な話からは随分、卑近だが、ふと、枝分かれの様子など、連想も働いたのである。(画像は、「霜 - Wikipedia」より)
が、強力なライバルの出現もあり、当時の世に受け入れやすい、樹木の枝の枝分かれ、つまり系統樹という表現に落ち着いてしまった。
彼には、当然ながら、「生命の木」という、キリスト教的思想とのイメージ上の重なり、への懸念もあったようである。
→ 「Acropora」 死に瀕する珊瑚。系統樹が曲がりなりにも描かれるとして、それは、死滅した種の断続的な連なり…のようでもある。(画像は、「Acropora - Wikipedia, the free encyclopedia」より)
余談だが、本書を読んで(掲載されているダーウィンの手になる図像を見て)ダーウィンの図(絵)は、贔屓目に見ても、下手と気づかされた。
ダーウィンは、若い頃、珊瑚が好きで、珊瑚礁の研究もしている。「ダーウィンの沈降説」なんてものもあるくらいである。
絵の下手なダーウィンのこと、珊瑚のメタファーだと系統樹より、描くのが(少なくともダーウィンには)もっと難しかった、というのが珊瑚のメタファーを最終的に断念した真相だったりして。
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