ドゥアンヌ 著『数覚とは何か?』の周辺(後編)
(「ドゥアンヌ 著『数覚とは何か?』の周辺(前編)」の続き)
これらの感覚(五感)が人間にあることは、否めないだろう。
でも、これらだけなら、その感覚器官によっては、動物のほうがはるかに優れている。もしかしたら植物の中にも何か特別な感覚機構があるのかもしれないし。
では、何が人間を人間たらしめているのか。
→ 仕事柄、富山市内などを車で走ることが多い。今日(12日)は、一昨日の豪農「内山邸」に続き、薬種商の館「金岡邸」を見てきた。(売)薬業王国・富山の祖を成した家とも言える。つい先日の(テレビ)ニュースで、「09年医薬品生産額、富山が全国2位」と報じられたばかり。生憎、予想に反して観光客が結構居て、撮影が憚られたので、すぐに通り過ぎてしまった。画像は、仕事中、一服した「稲荷公園」。「総面積12haに及ぶ広大な総合公園。園内は自然に囲まれウォーキングや散策などで賑わう。また、スポーツ広場・赤江川・遊具場などもある」とか。富山駅からも、車なら10分も要さない。さすがに雪が積もったままで、人影はなく、駐車場が半ば、埋まっていただけ。公園の周りは樹高の高い木々が囲んでいて、樹木の連なり越しに立山連峰を見るのは、絶景(と小生は思っている)。
やはり、五感を超える(超えるという表現が適切かどうかは分かりかねるが)何か、ということになる(二足歩行などの身体的な特徴も考えておかないといけないだろう)。
感性という表現でしか表せない何か、そして想像力、言葉(言語)という(大方の人間が思っている特質こそが、人間たらしめていると思っている(正しいかどうかは別として)。
そこに著者は「数覚」を持ち出してくる。
本書は人間とは何かの書ではないので、別に「数覚」で以って人間とは、という問いに答えようとしているわけではない。
あくまで、数覚とは何かを認知心理学の立場から解明しようというもの。
現に本書においても、(人間以外の)動物における「数覚」もが扱われている。
誤解のないように注記しておくと、数覚といいつつ、よく言われるような、数学的センスというものとも、やや違う。
…違う、ようでいて、違わない面も論じられている。
本書において、数覚は生後において磨かれるもの、とも論じられている。
そうだとしても、数学のセンスがある、という場合、つい、生来(あるいは物心ついてから、それとも何かのきっかけで)数学の世界の面白みに嵌り、何かの数学の問題が出された時、即座に問題の性格を読み取り、答えを導き出す才能、と捉えがちである。
数学が好きになると、誰に言われずとも数学の問題に取り組んだり、数的関係、表面的現象の中の数的構造を捉まえようとする。
このセンス(才能)は、ある年代で決定的に有無がはっきりと分かれてしまう。
音楽や美術やダンスや商売のセンスの有無以上に、数学のセンスは有無の差が甚だしい(ように感じる)。
絵画(版画)を好む人、音楽に癒しを求める人は、その打ち込み具合を別にすれば、世の過半数の人が当てはまるのではなかろうか。小生のような鈍な人間でも、絵は好きだし、音楽は毎日、欠かさず聞く。
しかし、数学となると!
まして、人間と動物との間の違いは決定的だと思うのは、無理からぬことだろう。
動物にも数覚的なものはあるのだとしても。
いや、あるのだとしたら、それは、五感とは違う、もっと根源的な感覚なのだろう…か。
想像力や知的認識の萌芽的機構とは違うのか。言語の祖形とも違う?
著者の説明を読んでいて、肝心の数覚が、どうも、つかめない。
数学が苦手な小生だから?
← スタニスラス・ドゥアンヌ 著『数覚とは何か?』(長谷川 眞理子 訳/小林 哲生 訳 早川書房) 副題:「心が数を創り、操る仕組み」 ドゥアンヌ は、数学者から神経科学者(認知心理学)へ転身した。まさにそんな彼ならではの脳科学の本であり、数学…数覚の書。
どうも、本書を読んでいて、もやもやした気分が終始、晴れなかったのは、(小生には)肝心の数学のセンスの不可思議が今ひとつ、解き明かされていないように感じたから、なのだろう。
こんなことを愚痴のように書き綴ってしまうと、本書がつまらない本かのように思われかねない。
以下のように、歌人の松村由利子氏が褒めちぎっている書評もあることを念のため示しておく:
「『数覚とは何か? 心が数を創り、操る仕組み』 スタニスラス・ドゥアンヌ 著 (早川書房) - 西日本新聞」
本書の書評としては、以下が傑出している:
「書評 「数覚とは何か?」 - shorebird 進化心理学中心の書評など」
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