病院で読んだ本(その3)
「病院で読んだ本(その2)」の続き。
このままではある程度は予想される(この程度は、と覚悟している)入院料が、本代の上乗せで退院後の生活が侭ならなくなる。
売店で買った本があと一冊で読み終えるという段階になって小生は、危機感を持って院内にある図書コーナーへ向かった。
← 開高 健著『オーパ!』(写真:高橋 昇 集英社文庫) 「ジャングルを蛇行するアマゾンは魚たちのユートピア。名魚トクナレや殺し屋ピラーニヤ、黄金の魚ドラドなど、巨魚・怪魚を求めて褐色の大河に挑んだ60日、驚異の16、000キロ」といった本。何十年も前から気になっていた本。でも、何故か手に…はしたが…、読むことができずいにいた本の一冊。著者の開高の健康優良児的な風貌が、若かりし日の(文学を志すものは青ざめ痩せた奴じゃないといけないような偏見に満ちた)小生には、許せなかった ? ! まあ、冗談はともかく(案外、的を射ているようでもあるが)、ようやく読み通すことができた。 これも入院生活の賜物か。あとで振り返ってみると、昨年11月、バルガス=リョサ【作】〈Vargas Llosa,Mario〉『緑の家〈上〉』(木村 榮一【訳】 岩波文庫)を読んで感銘を受けていたので、似た雰囲気の本を知らず知らず探していたようでもある。凄まじきかなアマゾン、やるなー、開高!
実は、最初に買った2冊を読み終える間際、図書コーナーへ足を運びたいと思っていたのだ。
が、生憎、土日に掛かってしまった。
土日は、図書コーナーは閉鎖されている。
というより、図書コーナーは外来フロアーにあって、その外来棟自体が立ち入り禁止になっている。
これじゃ、どうにもならない。
立ち入り禁止のロープを張られた、薄暗い廊下の向こうに図書コーナーがあるのだが、指を銜えているしかなかった。
で、仕方なく、最初の2冊に加え、3冊を売店で買ってしまったのである。
← ギルバート・ホワイト(Gilbert White)著『セルボーンの博物誌』(山内 義雄 訳 講談社学術文庫) 「セルボーンはハンプシャー州の東端、ロンドンの南西約80キロメートルに位置する小さな村である。著者ギルバート・ホワイトは神学校の学生時代を除いて全生涯をこのふるさとの村で過ごした。 ホワイトは村の教会で聖職につきながら、自然の景観や植生、村人の暮らしぶりに重ねて、小鳥を中心に昆虫などの生態観察の記録をふたりの博物学者に送り続けた。その書簡をまとめたものが本書である」。博物誌関連の本の記述というのは、ともすると単調になりがち。好奇心に釣られて読み出しても、そのうち投げ出してしまったり。が、本書は違った。著者のギルバート・ホワイトの文章力が(その秘密がどこにあるのか、小生には分からなかったが)、読み手を飽きさせないのだ。環境破壊とか何とかを別にして、読む楽しさを味わえる。「フランス革命が始まった年に出版されたもの」だとか。病院での発見の一書だ。惜しむらくは、入院生活最後の日に手にした本で、全編を読み通すことができなかったこと。
売店の傍にある医学書専門店もひやかしで眺めてみたが、まさに専門書ばかりで、一般向けの本は乏しい。食指の動く本は見当たらなかった。
大学病院内にある図書コーナーは、前にも書いたが、フロアーの隅っこの単なる一角といったものではなく、広々ゆったりしたスペースを与えられている。窓も大きいし、眺めはいいし(四階)、病院ということもあって、清潔なのは言うまでもない。
それに、蔵書も数千冊はある。
全ては、寄付による蔵書。
入院していた人が残していったものだったり、寄付・寄贈によるものだったり。
← 桐生操著『やんごとなき姫君たちの饗宴』(角川文庫) 「美しいお姫さまたちの華麗なる晩餐会や舞踏会。そこではどんな食器でどんなものを食べていたのか。そして交わされていた会話は?」といった内容。「歴史は食卓で作られる」なんて、掴みも上手い。小生、桐生操のファンなのか、同氏著の『本当は恐ろしいグリム童話』(ベストセラーズ)などなどを読んできた。病床で読むに楽しい本…。というのも、手術をして食事制限が続いていて、ずっとお粥(かゆ)ばかりだったので、せめて本の中でグルメしてみたかったのだ。
さがせば、小生が十数年前に入院し退院した際に残していった本も見つかるかもしれない(あるいは、小生が入院していた診療科の待合所かもしれないが。病棟内での引越しなどがあったらしい。今の科にもあるが、当時、治療を受けていた科の待合所にも患者ノートがあって、患者やその親たちが書いた日記やメッセージには、感動させられてばかり。読むたび、涙する。今回の入院でも、改めて)。
こうした善意で成り立っている図書コーナーの蔵書は、町の書店とは全く違うし、図書館の蔵書内容とも違う。古書店とも違う。学習参考書の類は見当たらないし、高度な専門書・啓蒙書もない。
案外と画集があったりする。小説が多いのは予想通りだろう。
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