病院で読んだ本(その1)
昨日14日の午後3時頃京都の病院を退院し、夕方、郷里の家に戻ってきた。
長い長い治療の過程が続く。
その一つのステップをまずは無難に越えたとは言える。
← ピーター・D・ウォード・著『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』 (垂水 雄二・訳 文春文庫) 副題が「絶滅も進化も酸素濃度が決めた」とある。まさにこのテーマが一貫している。恐竜の跋扈した時代は、気温も高かかったと思われがちだが、「実は恐竜の祖先が生まれたころの酸素濃度は、現在の2分の1。ヒマラヤ並みの薄さであった」。その中で繁栄するには、多種に際立つ特質があった。その最大の一つは、気嚢(きのう)を体内に獲得したことだろう。酸素を他のどんな生物たちより効率よく摂取することができたのだ。やがて、この気嚢(きのう)が鳥類を空へと誘った。一方、本書ではなぜかあまり書いてないのだが、この気嚢(きのう)が恐竜の繁栄のみならず、巨大化を可能にしたのだと思われる。巨大な体なのに、気嚢(きのう)のゆえに酸素を存分に消費しえたのみならず、体を相対的に(体に比して)身軽にしたのではなかろうか。巨体でありながら、機敏な動作・行動を可能にしたのだろうとも<憶測>しえるのである。 書評には、たとえば、「asahi.com(朝日新聞社):恐竜はなぜ鳥に進化したのか [著]ピーター・D・ウォード - [評者]瀬名秀明 - BOOK」など。
病院では長い病床生活が待っている。
なので、読書の時間がたっぷりある。
前回の入院生活では、谷崎潤一郎の『細雪』など、これまで気になっていたけど読めずに居た長編を幾つも読んだ。
← 大仏次郎著『猫のいる日々』(徳間文庫) 「飼っている猫が常に10匹以下になることはなかったという、著者の猫に関する随筆、小説、童話集」。著者曰く、15匹以上は飼わない、家出する、と奥さんに宣言したんだって。「鞍馬天狗」や「赤穂浪士」など、一時は流行作家だったのだが、今や忘れられつつある? 小生も、病院という環境だったから、売店で選択の余地がなくて買ったもの。買って後悔はしていないが。猫好きはもとよりだが、無類の随筆集としても絶品である。
今回もそのつもりでいた、のに…。
たとえば、プルーストの『失われた時を求めて』を今度こそ、全編を一気に読み通すか、なんて野望を抱いていた、のに…。
音楽CDを楽しむ環境も、パソコンを弄る環境もない中、読書だけが楽しみのはず、なのに…。
なんと、前はあったはずの書店が病院の近くにない。
一旦、入院すると、検査となあるし、退院も主治医の許可が要る。外出は当分、無理。
そうと分かっていたら、入院の手続きを済ませる前に京都の駅前などで本を物色したのに。
← 宮部みゆき著『スナーク狩り』 (光文社文庫) 宮部みゆきの小説を読むのは、『理由』以来。稀有のストーリーテラーだと感じた。本書でも改めて実感。だが、ストーリーや構成に頼りすぎて、人間が描かれていないのでは、なんてのは、ないものねだりの感想だろう。悲しいことに、最後の最後に来て、やや拍子抜けの結末を迎え、ハシゴを外されたような感覚を覚えてしまう、あの『理由』同様の感想を強く裏書してしまったのである:拙稿「宮部みゆき著『理由』」
とりあえず、入院した4日の翌日の手術を挟む数日は、持参してきたピーター・D・ウォード・著の『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』 (垂水 雄二・訳 文春文庫)で退屈を紛らわすことができるが、そのあと、どうするか。
小生は手術の結果の心配以上に、手術後、読むべき本をどうするか、頭の中は一杯だった。
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