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2011/01/02

「根岸さん 人工光合成に挑戦へ」にちなんで

 人間にとって多くの花が魅惑的であるように、あるいはそれ以上に昆虫にとっては、花(の蜜)はなくてはならないものだろう。昆虫が花に誘われるのは、両者の長い関わりがあるのだろう。
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 花は人間に好まれるように進化したのか。そういった花もあるのだろう。そうでなく、勝手に人間の生活圏に侵犯する植物は、たとえ可憐な花が咲くものであっても、雑草とされてしまう。
 同時に昆虫に受粉させるべく進化した花もあるのだろう。
 人目の届くところで見受けられ愛でられる花の多くが綺麗なものなのは、分かるとして、人里離れた場所にある花であっても、美しく感じるのは何故なのだろう。単に花だから? それとも、昆虫などを魅するように進化したことが、たまたま人間の審美眼にも適ったということ?


 緑なす葉っぱは、まさに陽光を浴びるべく進化を遂げた。紫外線に耐性を持ち、あるいは万が一、紫外線により遺伝子が損傷を受けても、修復する遺伝子も備わっていたりもするという。
 それは、葉っぱだけではなく、花びらだって、そうした耐性などのメカニズムを備えているのだろうという。
 そうでなかったら、そもそも咲きはしないのだろうし。

 しかし、実際の花々を見てみると、花の命は短い。文字通り、儚い命を宿命付けられている。ということは、仮に(そして恐らくは)紫外線への耐性があったとしても、そのメカニズムは、葉っぱなどに備わる持続的な耐性(特に常緑樹)とは、自ずから違う脆弱なものである可能性も高いように思われる。
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 そう、蕾が開花し、満開になり、受粉、受精の時を迎え、蜜や香りなど(人間の目には美しく見える花の様子もなのだろうか)、さまざまな老獪なるテクニックを駆使して昆虫や鳥などに受粉の手伝いをさせる。その間は、植物にとっての生殖器を日のもとに晒す。生物にとってそこが損傷を受けると致命的でもあるはずの性器、生殖器を紫外線その他の危険にまともに晒してまでも、受粉受精の時を持つしかない。

 蠱惑(こわく)の時、勝負の時、運命の時。束の間の装いの時。

 身を誘惑と危険との極に置いてでも、次世代のために敢えて花を咲かせる。
 が、役目を終えたなら、花の多くは(それとも花は全て?)呆気ないほどに散ってしまう。紫外線などによる損傷など初めから承知なのだろう。
 受粉が叶わなくても、多くの花は落ち、花びらは、焼け焦げ、あるいは萎れ、凋み、地の糧、地の塵となっていく。そうすることで、次世代の安泰が確保され、本体である幹や茎や枝や根っ子や葉っぱたちが生き延びられるのだ。
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 花、それとも植物の奥の深さは、計り知れない。白熱する陽光の下の生きもの達のドラマは、それだけに床しい。路上で焼かれる花々を見て感動したのは、だからこそなのだと思ったのである。

[以上、拙稿「日の下の花の時」(04/05/16)より抜粋。昨日(BS)、今日(総合)と、「根岸さん 人工光合成に挑戦へ NHKニュース」をテレビで見聞きした。植物の蕾や芽の話を書いていた小生には絶好のタイミングのニュース。ということで、本稿を再掲した。(11/01/02 記)]


 花はどちらかといえば小さなものです。ひとつの花から誰しもさまざまなことを思いうかべます---花の思い。手を伸ばして花に触れる---前かがみになって香をかぐ---ふと気がつくと花に接吻していることがある---そして、誰かを喜ばせてあげたくて花を贈る。それでも---ある意味で---誰も花を見はしない---本当には---それは小さすぎる---私たちは忙しすぎる---友人を作るのと同じで、見ることにも時間がかかる。私がこの目で見ているように花の絵を描くことができたとしても、私の見たものは誰にも見えない。花が小さくあるように、私もそれを小さく描くだろうから。
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→ Barbara Buhler Lynes (著) 『Georgia O'Keeffe Museum: Highlights from the Collection』(Harry N.Abrams)

 だから自分に言いきかせた---自分が見ているものを描こう---私にとってのその花を。ただし、それを大きくして描こう。そうすれば、みんな驚きにかられて、時間をかけてそれを見てくれるだろうから。(ジョージア・オキーフ「私自身のこと」(1939)より)
[7年余り前、上掲の一文を引用したサイトは今(11/01/02)、調べてみたところ、既に削除されたようだ。代わりに、「ちょっとHな・・・ジョージア・オキーフの花」など参照のこと。(11/01/02 記)]

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コメント

久しぶりに携帯で投稿してみた。どうかな?

投稿: 通りすがり | 2011/01/03 09:37

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