退院し何はさておき図書館へ(後編その2)
さて、「退院し何はさておき図書館へ(後編その1)」の続き。
← 降り積もった真綿のように白い雪を払うと山茶花の花が顔を出した。冬、雪を払うのはいいことなのかどうか。文字通り、真綿のちゃんちゃんこを被って、一定の温度以下に下がらないように、零下の外気に触れないようにしていたのかもしれないし。でも、布団を、シーツを剥いで、中を覗きたいという欲望に勝てなかったのだ。今夜半から、遅くとも明日の日曜日からは痛烈な寒波が襲うというのだが…。
退院した翌日に向かった図書館で借りた二冊のうちのもう一冊は、アニル・アナンサスワーミー 著の『宇宙を解く壮大な10の実験』 (松浦 俊輔 訳 河出書房新社)。
著者のアニル・アナンサスワーミーは、小生には全く初耳の方で、『ニューサイエンティスト』誌の編集者、ライターだという。
→ 我が家は道路に面する庭は竹垣。けれど、いったい、いつごろ、敷かれたものなのか。朽ち始めてからでさえ、久しい。
本書のあとがきによると、小説を書くのに行き詰っていたところ、ある人の勧めでこの企画に取り掛かったというから、不思議な切っ掛けで生まれた本なのだ。
現代物理学(宇宙論)は、ダークマターやダークエネルギーという、普通の物質とは違う何かにずっと悩まされてきた。さまざまな実験や観測で、大雑把な概要は見え始めているようだが、それでも、ほとんど正体不明といっていい現状にある。
← 裏庭の竹垣など、崩壊寸前…。というより、人によっては、すでに朽ち果ててると見做すだろう。
それらを説明する理論の候補はないわけではないが、理論はあくまで理論だ。
アインシュタインの理論のように、その理論の美しさが正しさを保証するという、古きよき時代はとうに終わっているようである。
また、理論はあっても、実験するのがとてつもなく困難になっている。
検証するにも、巨大な施設が必要だったり、施設の設置場所にしても、既存の場所ではダメで、南極(点)だったり、地下鉱山(の跡地)だったり、バイカル湖だったり、チリの山上だったり、あるいはヨーロッパの山中だが、施設が想像を絶する規模だったりする。今は、徐々に宇宙へと観測装置の舞台が向かっている。
→ そんな竹垣の竹たちだが、健気にも竹垣たらんとしている。溢れ出ようとするササ(クマザサ?ミヤコザサ?)の勢いに押されつつも、懸命に堪えている。以上、いずれも27日撮影。
そう、今や、「天文学はただ夜空を見つめるだけの優雅な学問ではな」くなっている。
実験・観察の裏舞台こそが、最先端の研究の最前線と言える。
「本書は、著者が宇宙観測の最前線に出かけ、研究者がどのような苦労の下で実験・観測を続けているかを追体験した体当たり報告記」なのだ。
← アニル・アナンサスワーミー 著『宇宙を解く壮大な10の実験』 (松浦 俊輔 訳 河出書房新社) 「宇宙の謎はどこまで解けたのか? シベリアや南極、高山、地底奥深くなどの極限の環境で日々繰り広げられる、科学者たちの驚くべき「挑戦」から、宇宙論の最先端を明らかにする」といった本。理論と実験が相俟って科学が深化する。ますます巨大化し、困難を極める実験(現場)を支える研究者・技術者・土木などの業者らの格闘ぶりを通じて、宇宙論の最先端の課題が描かれる。(画像は、「【書評】『宇宙を解く壮大な10の実験』(評・池内了) - MSN産経ニュース」より) 余談だが、本書の訳者である松浦 俊輔氏についても、同氏の翻訳した本を結構、読ませてもらってきた。ジョン・D.バロウ〈John D.Barrow〉【著】『数学でわかる100のこと』(松浦 俊輔 小野木 明恵【訳】 青土社)、ジョン・D・バロウ著『宇宙に法則はあるのか』(松浦 俊輔【訳】 青土社)、ジョン・D.バロウ著『無限の話』(松浦俊輔訳 青土社)、ロバート・カプラン著『ゼロの博物誌』(松浦俊輔 訳 河出書房新社)、アーネスト・ゼブロウスキー著『円の歴史―数と自然の不思議な関係』(松浦 俊輔訳、河出書房新社)などなど。
巨大な実験設備の態勢も一部は整い始め、いよいよ、そろそろ、データが出始めるという期待もある。
生命の誕生についても、海底の熱水噴出孔などでの研究で、知見が得られそうだし、どんな宇宙像が描かれるのか、焦がれて待つばかりである。
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