「NASAの大発見」余波
一時、地球以外で、そう、宇宙で生命体を発見か、という憶測が巷をにぎわせた。
話は、大きくなって、単なる地球外生命体どころではなく、宇宙人、発見か、とまで。
→ とある学校の脇を通りかかった。杉並木。あれ常緑樹のはずの杉なのに、一本、すっかり紅葉というのか、赤茶けている。日当たりや風などの条件は同じはずなのに…。不思議に思って近づいたら、杉は杉でもメタセコイアなのだった。幼少の頃から、しばしばその傍を通り過ぎているのに、ただの杉並木と思い込んでいた。紅葉したあと、落葉するという。今日の強風と雨で、一気に裸木になっちゃうだろうか。
いよいよ発表された内容は、期待をなし崩しにするものではなかったが、それでも大方の期待を裏切るものだったかもしれない。
「「NASAの大発見」は猛毒ヒ素で生きる細菌 J-CASTニュース」によると:
米航空宇宙局(NASA)などの研究グループは2010年12月3日、生命の維持に通常必要とされるリンの代わりに、有毒なヒ素を食べて増殖する細菌を米カリフォルニア州のモノ湖で発見したと発表した。生命を構成する基本元素が別の元素で代替できることが発見されたのは初めてで、地球上よりも過酷な環境で生物が生息できる可能性が出てきたという。
NASAの事前の発表では「宇宙生物学上の発見」という話だった。
それが期待はずれの細菌話では、がっかりするのも当然かもしれない。
発見した場所が地球上とあっては、それが隕石由来の可能性があるとしても、期待を持たせすぎなのかもしれない。
せっかくなので、もう少しフォローする記事を物色してみた。
すると、下記の記事がすぐに浮上してきた:
「NASA、「地球外生命につながる新生命体」を発見・・・ただし地球上で 写真3枚 国際ニュース AFPBB News」
これまで、生命の維持には炭素、水素、窒素、酸素、リン、硫黄の6元素が必須というのが定説だった。リンがなくても生きられる細菌が発見されたことで、生命の構成要素の再定義を迫られるとともに、地球上の未知の有機体や地球外生命体の探索に新たな希望が示されたことになる。この「GFAJ-1」という細菌は、ヒ素を食べるだけでなく、DNAと細胞膜でリンをヒ素と交換する。GFAJ-1の存在自体は知られていたが、こうした働きについては初めて明らかになったという。
発見者であるNASA宇宙生物学研究所のフェリッサ・ウルフ・サイモン(Felisa Wolfe-Simon)氏は2日の会見で、「地球外生命体の可能性へのドアが開かれた」と述べた。
可能性へのドアが開かれた…。
可能性へのドアだけなら、 小生だって、いつも開いているつもりだ。
上掲の記事では、以下のような続きがある:
論文を共同執筆したポール・デービス(Paul Davies)氏は「生命体は最初、ヒ素を通じて発生し、その後リンに適応したのではないか」と推測する。ただ、ヒ素が先か、リンが先かはまだ断言できないという。この細菌は、太古のヒ素の時代の「生きた化石」である可能性もある。
このポール・デービス(Paul Davies)氏とは、あの宇宙論(物理学)の啓蒙書を書かれる人気科学者で、日本語への翻訳も多々ある方なのだろうか。
(同名のポール・デービス(Paul Davies)氏では、高名な画家の方にもいらっしゃられるし、やはり有名なカントリーシンガー,ソングライター,ギタリストのポール・デイビス氏も、一昨年、亡くなられたばかりである。)
80年代の半ばから90年代初め頃まで、同氏の本を読み漁った小生には、懐かしい人物である。訳書の半分は読んで楽しませてもらったものだった。
← サイモン・コンウェイ・モリス著『進化の運命 孤独な宇宙の必然としての人間』(遠藤一佳/更科功訳 講談社) 宇宙において、地球外に生命(体)が生まれるのは必然だと考える科学者が多いが、人間型の生命体が生まれるのも必然と考える科学者は極めて稀だろう。サイモン・コンウェイ・モリスは、そう本書で説いている。「本書の主な目的は、進化に制約があり収斂がどこにでも見られるのであれば、私たちに似たものが出現するのはほとんど必然だということを明らかにすることだった(p.492)」。そう、本書は生物の世界における「収斂」が、得てして物珍しいものと捉えられがちだが、実は、収斂は広範に見られる現象であることをこれでもかという諸事実で伝えてくれる本でもある。その意味で、驚きの書でもある。ある意味、「収斂に収斂する(p.492)」書であるのだ。進化の必然の結果としての人間。但し、生命体が生まれ、人間型へと育ちうる環境を持つのは、広い宇宙において地球だけ…ではないか、とも説く。「生命は宇宙のさだめかもしれないが、私たちはそれでもやっぱり一人ぼっちかもしれない(p.492)」。だからこそ、「孤独な宇宙の必然としての人間」という副題が付せられるわけなのである。S・J・グールドやリチャード・ドーキンスの無神論的進化論への対抗心が剥き出し。唯一神たる神の似姿としての人間という尊厳を死守したいという欧米人の信仰が今も一般人だけじゃなく科学者にも根強いことを思い知らされる書でもある。科学者としての該博な知識(特に収斂について)と綿密な記述と、信仰告白としか受け止められない終盤の著者の本音の吐露との、あまりの落差。小生が知る限り、この書評「今週の本棚:海部宣男・評 『進化の運命…』=サイモン・コンウェイ=モリス著 - 毎日jp(毎日新聞)」がさすがに的確でバランスの取れた理解で参考になると思う。
折しも小生は、先週末より、サイモン・コンウェイ・モリス著の『進化の運命』(講談社)を読んでいたところで、昨日未明、そろそろ読了するところだった。
そこへ、地球外生命体を発見か、というニュースが、しかも、その日の夜、NASAがわざわざ会見を開くという…。
まあ、小生はさすがに宇宙人までは期待しなかったが、地球外生命体の発見そのものを期待したのは正直なところ、事実である。
まだまだ知性ある人間は、『進化の運命』での著者の主張が正しいかどうかは別にして、当分の間(それとも、ずっと?)宇宙においては孤独のままのようだ。
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コメント
NASAがどんな情報を持っているかまではさすがに関知や保障はできないものの、さらなる情報は持っていて普通だと思います。
その実感の根拠としては今回はシミュレートだったと思うからです。
普通に流せばよいのでは?と思うニュースを前振りして期待持たせて流したわけです。
こんなネタだったのかという視聴者の実感とともに世界的に注目を集め視聴者に免疫を作った側面があります。
実際に宇宙人を捕まえている、というよりは生命の生まれる条件の研究が進んでいるという可能性のほうが高いのはあたりまえかもしれませんが。
(こうやって慣らされていくのね~。)
投稿: 葉森木霊 | 2010/12/04 21:35
葉森木霊 さん
さすがに読みの深い理解だと感心します。
地球外での生命体の発見が、現実のものとなれば、理論的にはいくら予想していた(可能性を皆無としていなかった)としても、やはり、衝撃の事実、しばらくはどう受け止めていいか分からない現実に戸惑うことでしょうね。
ましてそれ以上の存在となると、ちょっと想像を絶するところです。
NASAは、一体、どんな情報を持っているのか…。ウィキリークスさん、情報、漏らしてくれないかしら。機密情報扱いになっていないと思うし。
投稿: やいっち | 2010/12/05 17:47
こんばんは。
木星の衛星エウロパに生命が存在するかもしれないという話はどうなったのでしょう?
松尾貴史ですか、と誰かの共著で、なぜ宇宙人は地球に来ないのか、なんてありますね。まぁわざわざ来る程の星ではないのでしょう、地球は。
しかしアダムスキーという人は金星人とあったとおおほらをふくし、ロズウェルにUFOが墜落したと話す人もいる。
だんだん宇宙人は人間の内面に入りこんできてUFOの中に入れられて身体解剖されたという話まで出てくる。
こういう話が流行る背景を考えると面白いですね。
矢追純一の本なんて昔読みましたよ。
投稿: oki | 2010/12/06 23:18
okiさん
今は、金星探査機「あかつき」の命運(通信障害)が気になっています。
なんとか、通信機能、回復して、金星探査を成功させてもらいたい!
そうそう、木星の衛星、エウロパのことも、続報が知りたいですね。
水(というより氷)の存在が確認された以上は、何らかの生命体が存在していてもおかしくないはずですし。
ただ、エウロパの探査プロジェクトは、アメリカでは予算が認められなくて頓挫したままのようです。
但し、「2007年には、欧州宇宙機関 (ESA) が将来の宇宙探査ミッションの候補の一つとして、NASAおよび宇宙航空研究開発機構 (JAXA) との共同による、エウロパを中心とする木星圏探査ミッション「ラプラス計画」を選定した。将来的には、エウロパ表面全体の高解像度地図の作成、氷の厚さの測定、氷の下の「海」の存在の確認、などを目標とした探査が期待される」とか。
近い将来の朗報(?)を待ちましょう。
宇宙人の中で、地球人より知能が高い存在がいるなら(小生がその立場なら)、地球人のことは、気が付かれないよう、観察するだろうなー。
そのほうが面白いし、気付かれないよう、さりげなく地球人の進化の方向にバイアスを掛けるかも。
地球人実験動物園のようなものです。
矢追さん、今もUFO研究されているようですね。
でも、小生としては、宇宙人がどうこうより、とにかく、まず、地球外生命体の発見への期待値が高い。
その上で、先のことを考えたい。
投稿: やいっち | 2010/12/07 22:28