クラドニからストラディバリへ
マーカス・デュ・ソートイ/著『シンメトリーの地図帳』(冨永星/訳 新潮クレスト・ブックス 新潮社)を読んでいたら、久しぶりにクラドニの名に行き逢った。
しかも、クラドニ図形(パターン)の話題から、ストラディバリ(バイオリン)の話題につながっている。
→ 昨日は、報恩講に関連して、山間にある親戚の家へ往復。サルやイノシシはもちろん、クマも出ることがあるという山里に宵闇が静かに迫る。
クラドニ図形(パターン)とは、ドイツの物理学者であるエルンスト・クラドニ(Ernst Florens Friedrich Chladni 、1756年11月30日 - 1827年4月3日)が、音響学の分野で成した功績(方法)である。
「モーツァルトと同じ年に生まれたエルンスト・クラドニは、ドラムの音を目で見る方法を編み出し、ドラムの表面に砂を乗せて皮を振動させて、さまざまなシンメトリーの模様を作り出してみせた」。
つまり、「平面の振動を可視化する方法」を開発したわけである:
それらの模様は、バイオリンの弦のさまざまな和音の波形に相当するもので、バイオリンの弦の場合は、振動すると、弦の長さに見合ったさまざまな組み合わせの正弦波が生まれる。さらに、弦の真ん中に指を乗せれば弦の基音より一オクターブ高い倍音、弦の三分の一のところに指を当てれば基音より完全五度高い倍音というように、バイオリンの音を構成している和音を取り出すことができる。クラドニは、実はドラムの音もこういったさまざまな倍音からなっていて、それらの倍音がドラムの表面一杯に広がるすばらしい二次元図形を生み出すことに気づいた。しかも、バイオリンの弦のあちこちに指を当てるのと同じようなやり方で、ひとつひとつの図形を取り出すことができる。こういったさまざまなパターンが組み合わさり、対応する周波数が組み合わさって、そのドラム固有の音になっているのだ。 (『シンメトリーの地図帳』 p.347)
↑ 「クラドニ図形(Chladni figures)」エルンスト・クラドニは、ドラムの表面に、多種多様なシンメトリーのパターンが潜んでいることを発見した (図像は、「神が音に託した「指紋」 - クラドニ図形 DDN JAPAN - (DIGITAL DJ Network) 音楽・映像・アート・8-BIT周辺情報メディア」より)
クラドニはヨーロッパの宮廷をこうした実演をして回って大成功を収めた。ナポレオンもクラドニの巡業演目に魅せられ、かなり高額な謝礼を支払ったとか(上掲書より)。
上掲書の以下の記述が興味深い:
今では、安いバイオリンとストラディヴァリとの音の質の違いを生み出しているのはこれらのシンメトリーだということがわかっている。イタリアのバイオリン職人たちは、実に見事な技量の持ち主で、胴の中でひじょうにシンメトリーの強い音の波が生まれるようなバイオリンを作ることができた。
ストラディヴァリの音の秘密は、バイオリンの表面に塗るニスの違いにある、とか、「ストラディヴァリの特別なサウンドは、当時のヨーロッパの寒冷な気候にある」なんて説が以前、あったが、このシンメトリー説のほうが説得力がある(拙稿「自然という書物」の中の、トマス・レヴェンソン著『錬金術とストラディヴァリ―歴史のなかの科学と音楽装置』(Thomas Levenson 原著、中島 伸子訳、白揚社)をめぐっての記述など参照)。
← Chris Johnson /Roy Courtnall /Yehudi Menuhin 著の『The Art of Violin Making』(Robert Hale Ltd 1998/04刊)
もっとも、現代ではすでに、ヴァイオリン(ストラディバリ)とクラドニ法との関連は常識に属する話のようである。
なお、Chris Johnson /Roy Courtnall /Yehudi Menuhin 著の『The Art of Violin Making』(Robert Hale Ltd)には、「板厚の調整方法」として、「クラドニ法」についての記述もあるらしいが、小生は未確認である(「バイオリン製作参考文献」参照)。
(「音楽の新たな地平を拓くパイオニア ∼カーリン・ハッチンス博士とグレゴリー・セドフの挑戦∼ 21 世紀の新しい ピッコロ・ヴァイオリン ピッコロ・バイオリン研究会代表 川島 佳子」も参照)
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