地上に叶ったシンメトリー
← 「ラ・ジェオード (La Géode)」 「ラ・ジェオード (La Géode) とはパリのラ・ヴィレット公園内のシテ科学産業博物館にあるオムニマックスシアター」。
ラ・ジェオードは、遠目には完璧な球に見える。しかし近づいてみると、建築家がどうやって球に見せかけているのかがわかる。この建物の表面は三角形のかけらでできていて、計六四三三個の三角形が使われている。曲面を覆うには、さまざまな形の三角形を使う必要があり、その種類は全部で一三六に及んでいる。いくつかの三角形が寄り集まって六角形になっている所もあれば、五角形になっている所もある。ラ・ジェオードの基礎となる枠組みは、実は正二〇面体――二〇枚の正三角形からなるプラトンの立体――で、建築家は、正三角形をさらに小さな三角形に分けたうえで外側に曲げて、建物を球に近づけている。
(略)ラ・ジェオードのまわりには、鐘の音のような不気味な音楽が流れていて、この世のものならぬ感じが一段と強められている。これはどうやら音楽時計の音らしく、その鐘の音が建物のどのあたりから聞こえるかによって、現在の時刻がわかる。
「カバス (Cabasse) 社が設計した 12.1ch 音響システムを備えるのは世界中でここだけである」というから、上記の音楽というのは、その音響システムの奏でる音楽なのだろう。
→ 「ルーブル・ピラミッド(フランス・パリ)」 20世紀のアメリカを代表する中国系アメリカ人建築家イオ・ミン・ペイ(I・M・ペイ)の設計したガラスピラミッド。パリのルーブル美術館にできた風変わりな入り口。
ルーブルのピラミッドは中ががらんどうだ。技術者たちは、三角形の強度をうまく生かしてこのピラミッドを建てた。三角形をした面のひとつひとつは格子になっていて、小さな三角形やダイヤモンド形になっている。六〇〇枚以上のガラス板でできたピラミッドは、水に囲まれており、水面の反射もあいまって、まるでプラトンのシンメトリー図形のひとつ、正八面体のように見える。
なお、「ピラミッド前、円形の植栽部の下に逆さピラミッドがある」という。「ルーブル美術館逆さピラミッド - Archstructure.net」を参照。
← マーカス・デュ・ソートイ/著『シンメトリーの地図帳』(冨永星/訳 新潮クレスト・ブックス 新潮社) 「あまりにも巨大で美しい数学的業績があった。知られざる天才数学者たちの姿!」と銘打たれている。著者も世界的な数学者で、ベストセラーの『素数の音楽』の著者でもある。
→ 「グランダルシュ(Grande Arche 新凱旋門)」 「フランスのパリ近郊のラ・デファンスにある超高層ビル」。
この門に向かって歩いていくと、歩道に自分の影が映る。影は、本来三次元の立体であるわたしたちの二次元イメージだ。こちらが動いたり回ったりすると、影も形を変える。しかも影の中には、たとえば横顔のように、わたしたちの形が三次元でどう見えるのかをかなりうまく表しているものがある。この門を作るときに使われたのは、実は、ルネッサンスの画家たちが平らな二次元のキャンバス上に三次元のものを見ているような幻想を作り出すために使ったのと同じ方法だ。たとえば二次元のノートに立方体を描きたいのなら、大きな正方形の中に小さな正方形を書くことで、三次元の立方体の形をある程度とらえることができる。
この門は、この幻想の次元を一つあげたもので、四次元の超立方体を三次元に映すと、大きな立方体の中に小さな立方体が入った形になる。組み合わさった立方体の形をした門に向かって歩いていくと奇妙な現象が起きる。天気がごく穏やかな時でも、広場から門に向かって風が吹き付けているのだ。ひょっとすると、四次元図形の影を作るというのは、かなり危険なことなのかもしれない。(以下、略)
[本文中の引用は、「wikipedia」からのものを除き、全て、マーカス・デュ・ソートイ/著『シンメトリーの地図帳』(冨永星/訳 新潮クレスト・ブックス)より。]
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