体も心もメンテが大切
暑い日々が続いている。それでも、夕方になると、蒸し暑い中にも、幾分、過ごしやすい風を時折、感じることができるようになった…と思いたい!
遺品の整理が遅々として進まない。
あれこれ、迷ってしまうってこともあるが、これまで後回しにしてきた自分の体のメンテナンスということで、まずは手っ取り早く歯医者さんに通っていて、悪戦苦闘している(ほぼ毎日、治療に通っている)こともある。
生来の肉体的事情もあり、小生の場合、歯の治療もなかなか苦労がある(実際に苦労しているのはお医者さんなんだろうが)。
他にも体の不都合があるので、この秋には可能な限り、治療していきたい。
「ワインを嗜むように読書する」(08/16)や「夏バテ防止に愉悦の読書など」(08/17)で読書拾遺的な日記を書いた。
二週間余り経ったので、久しぶりに読書日記をメモっておく。
← ソフィ・ラフィット 著『チェーホフ自身によるチェーホフ』(吉岡 正敞【訳】 未知谷)
この間に読んだ本のうち一冊は、ソフィ・ラフィット 著の『チェーホフ自身によるチェーホフ』(吉岡 正敞【訳】 未知谷)である。
例によって図書館の新入荷本のコーナーにあり、返却すべき本をまだ手にしていたのに、とりあえず、本書を手に取った。
学生時代を中心にチェーホフ作品には随分と傾倒した。彼の作品の魅力に取り憑かれたようだった。
何か魔力のようなものがあって、人生の一端を感情移入もへったくれもなく、まさに冷徹な外科医の執刀する雌で部位を摘出され、これだよ、と見せ付けられるような気がした。
変に思いいれなどなく、とにかく描いて示す。
彼は少なくとも作家活動のある時期までは、芸術志向などまるでなく、あくまで生活のためにただ書き殴ってきたという。
まるで腕のいい外科医の手のもとに次々に患者が持ち込まれ、医師はそこに患部があるからメスで抉り取っているだけ、という感。
なのに、読み手に感銘を与えるのは、天性の才能があるのだろう。
さすがに執筆活動していたある時期、高名な作家に才能を褒められ、表現者たることに気付かされ粛然としたという。
彼のサハリン紀行も、外科医ならではの客観的な、淡々たる(しかし情熱を内に秘めた)観察に終始している。
受刑者の逃げ場のない島での暮らしの現実を、ドストエフスキーのタッチとはまるで違う風に描き切る。
本書は、題名にあるように可能な限りチェーホフの言葉でチェーホフ(文学や人となり)が語られているのがいい。
チェーホフ熱がぶり返しそうだ。
(拙稿「チェーホフ『六号室』の頃」参照。)
← エドワード・バーガー/マイケル・スターバード(著)『カオスとアクシデントを操る数学』(熊谷 玲美/松井 信彦(訳) 早川書房)
次に読んだのは、エドワード・バーガー/マイケル・スターバード(著) の『カオスとアクシデントを操る数学』(熊谷 玲美/松井 信彦(訳) 早川書房)である。
文系の本を読むと、次は理系(そのものではないが)の本を手にしたくなる。
本書は今年、出たばかりの本だが、新入荷本のコーナーじゃなく、すでに数学の書架に納められていた。
誰かが既に借り、返却されていたわけだ。
図書館で本を物色する際は、数学のコーナーは必ず立ち寄るのだが、聞き慣れない(目新しい)本書の背(の題名)を目にして、おやっ、珍しい本があるぞと、すぐに手にし、パラパラ捲って、即、借りることにした。
専門性は高くないが、数学の世界を楽しみつつ、数学の深さを感じさせてくれる本。
無限にも大小があるなんて話は、これまで何度となく読んできたのだが、そのたび、へえーと感心させられる。
カオスやアクシデント、あるいはフラクタル(非線形・複雑系)を扱う数学(物理)の本はもう珍しくはなくなった。
が、十数年前は(少なくとも一般人たる)小生には新奇な世界、驚異の世界だった。
数学者や物理学者らも、カオスの世界を感じ取り、その不可思議を嗅ぎ取ってはいたのだろうが、今世紀の半ば以降になってコンピューターが発達して、カオスを表現する数式を好きなだけ計算し、グラフに表記することができるようになった。
そのことで、カオスやアクシデントの世界を表や計算結果でまざまざと観察できるようになった。
パソコンの登場(発達)は、門外漢たる者にも、その驚くべき世界を手元のパソコンで表示させ、確かめることを可能にさせた。
計算し、あるいはその結果を図に表して初めて、直感では捉えられなかった世界を目の当たりにすることができたわけだ。
小生には食い足りない部分もあったが、でも、楽しみつつ読ませてもらった。
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