心は夜空の吟遊詩人
日々、真夜中過ぎから早朝未明に掛けての外仕事をやっている。
バイクを使い(雨の日は車)、家々の軒先に品物を配って回る。
車のときは、車中での移動の際、ラジオに聞き入ったり、CDを楽しんだりする。
しかし、バイク(スーパーカブ)だと、ラジオも何も楽しめない。
無理にラジオを聴取しようと思っても、バイクのエンジン音に掻き消されるだろうし、そもそもヘルメットを被っているので、聞こえるのはバイクのエンジン音ばかりである。
となると、バイクで移動中、何が楽しみって、吹く風であり(半袖のポロを着て快適なのは今の時期だけだが)、夜空の眺めだけである。
街中の風景は真暗。
街灯があるじゃないか?
街灯に照らし出される風景は何か物悲しい。
不意にポツンと窓明かりが見えたりすると、床しくてならない。
中にどんな人がいるのだろう。
灯りを灯して何をしている。勉強? テレビ? 夜通しのお喋り? 読書?
それとも、単に灯りを消し忘れている?
バイクの音が窓外を通り過ぎても、まず窓を開ける人などいない。
変に突然、窓が開いても怖い!
まあ、原付きバイクの音が聞こえたら、何の仕事をしているか、窓外を覘かなくたって分かるというものであろう。
小生が受け持っている地域だけの特色なのか、電柱の明かりは蛍光灯でありふれたものだが、一部の地区は、街灯がオレンジ色の灯りになっている。
蛍光灯なのかどうか分からないが、オレンジ色の蓋が被さっていて、足元を周辺をオレンジ色に染めてくれている。
蛍光灯の白々しい、どこかうら悲しい色合いとはまるで違って、暖かで柔らかな雰囲気が醸し出される。
街作りの一環として、暖かみのある街灯を敢えて採用しているのかもしれない。
コンビニも、営業上の必要があるのだろうけど、あの青白く眩く輝く明かりじゃなく、もっとソフトな灯りが外に漏れ出るようであれば、町の雰囲気も随分と変わるだろうに、などと思ったりする。
余談はともかく、バイクでの仕事だと、町の風景も闇に沈んで単調になるし、空さえ晴れているなら、夜空の眺めが折々の楽しみとなる。
家を出る際、天候を気にする、ついで、晴れているなら、雲の多さ、星が見えるか、そして何と言っても、月影を探し求める。
日々、月影を追うので、自宅を出た瞬間、月影が拝めるはずの空の方角を望んでしまう。
家の玄関を出て数歩、庭先を歩くと、振り返った屋根越しの空低くに月影が見える。
一昨日は欠けた満月だったのが、昨日は(目で見る分には)満月になっている。
月が日ごとに高い位置で出るように見受けられる。
正確に言うと、満月の出ている位置が高くなってきているというべきか。
前回、満月を見たのはいつだったか。
27日余り前前後は、家の不幸もあって、月影をあまり見なかったように思える。
それとも、前回の満月の際は、空の低い位置にあって、家々の屋根や塀や木立ちに隠れて、追い求めても見ることは叶わなかったのかもしれない。
それが、昨夜というか今朝未明までは、かなり低い空にだったけれど、(ほぼ)満月がずっと望めた。
バイクで走り回るので、背後になったり、不意に左前方、家々の屋根の硲に挟まれるようにして満月がポッカリ浮かび上がってきたり、ともかく、目線は月影を追ってしまう。
満月がもっと高い位置にあって、地上世界を睥睨するように照るようになると、星影は(少なくとも月影の周辺は)月の光に蕩かされてしまうのだろうが、月影が低いものだから、雲が疎らな夜空の星星は、その数を減らされることもない。
まさに、星月夜というわけだ。
これがさらに27日あまり、またさらに27日あまり経つほどに、満月の位置もグイグイと高さを増し、西欧ほどではないにしろ、本格的な星月夜を堪能することが可能になる。
今年は異常に暑い夏である。
日中は必要最小限の外出に止めている。
何処かへ風景を愛でに行くなんて気分になれない。
その分、真夜中過ぎから早朝未明までの、バイクでの夜の移動は、仕事の最中でゆっくり愛でられないのは言うまでもないとしても、心は夜空の吟遊詩人となっているのだ。
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