ビニール傘のこと
鬱陶しい日々が続いている。毎日、曇天が続く。雨…でなくても、いつ降り出すか分からない空。
富山は、九州や東京のようなゲリラ的な豪雨の惨禍には見舞われていない、それだけは幸いである。
今も窓外の雨の音が聞こえている。
そんな梅雨空の日々となると、傘が手放せない。
傘の有り難味を感じるとき、傘を一番、身近に感じる季節なのかもしれない。
ふと、何年か前に書いた、ビニール傘を巡るエッセイを思い出した:
「梅雨入りに傘のことなど」
ビニール傘、それも、透明ってのがミソである。
別にビニールにこだわるつもりはない。
要は透明であればいい。
理想を言えば、透明であることを必須条件として、太陽光発電ができる伸び縮みする素材の生地で傘ができたらと思ったりする。
せっかくなので、ブログに載せておく。
梅雨入りである。
梅雨と言うと、傘。なので、傘の話題を中心にあれこれ思いを巡らせて見る。雨に纏わる話題については、「雨の目蛇の目」で既に大方、触れてしまったことだし。
昨日、車中でラジオを何気なく聴いていたら、我が意を得たりと頷くような意見を窺うことができた。それは大よそ、次のような話だった。
この季節、傘に世話になることが多いのだが、中でも、不意の雨に活躍するのがビニール傘。かなりの人は、用が済むと、捨て去るか、でなければ、気が付くと何処かに忘れ去ってしまう。
でも、ビニール傘のいい面もある。それは、傘を透かして風景が見えるということ。
聴いたのは、演歌歌手でもある女性(南かな子)がキャスターを勤めるラジオ番組である。
彼女は、雨の日の風景を眺めるのは好き、だから、透明なビニール傘というのは結構、気に入っている、できれば、そこそこの値段で、ファッション性のあるビニール傘を売り出してもらえないか、そんな話をしていたのだ。
値段は、彼女は三千円を切るほどなら、買うかも、などと言っていた。
小生には、手の届かない値段で、この辺りは、ちょっと経済観念が違うのか、それともファッションに掛ける思い入れの問題なのかと思ったりもする。
ところで、小生、ビニール傘は重宝している。
よってビニール傘にちなみ思い出があったりする。
もう、十年ほど昔、失業時代の冬の夜のことだった。
その日は夜になって雪が降り出し、一面、真っ白になっていた。そろそろ我が邸宅に帰り着こうとするところで、ある商店街の路上にビニール傘が落ちているのが目に入った。見た感じ、真新しい。捨て去られたものなのか、拾い上げてみると、骨が一箇所、折れている。
そう、小生、その時、生憎、井上揚水の歌じゃないが、傘がなかったのである。
骨が折れていることなど、何の問題もない。小生は、ありがたく、そのビニール傘を差して帰宅したのだった(拾い上げる際、チラッと、周囲を見回したことは言うまでもない。失業保険で生活している身分とはいえ、さすがに世間体を気にしていたのである)。
拾ったもの。骨が折れているとはいえ、交番に届けるべきなのだろうか。もう、時効なのだろうね。お巡りさん、世間の皆さん、御免なさい。
そのビニール傘。一体、何年、お世話になったろうか。一年や二年ということは、小生の場合、ありえない。モノを紛失したり忘れたりしない、ケチな性分なのである。
その傘、では、一体、いつ、どのようにして我が手元を離れていったのか、情なくも明瞭には覚えていない。
微かな記憶を辿ると、いつだったか、雨の日にその傘を差してスクーターの止めてある場所へ行き、トランクの中に入っている合羽を取り出し着用。差してきた傘は、スクーターの取っ手の部分に差し込んで走らせた。目的地に付いた時には傘がまだあったのかどうか、はっきり覚えていない。
翌日、またスクーターに乗るときには晴れていたので、ビニール傘のことは、不覚にも自分としたことが、まるで意識に上らない。
やがて、幾日か経て、また、雨の日がやって来た時、あれ? ビニール傘がない! ということでやっと傘の不在に気が付いた、そんな経緯だったような気がする。
いつだったか田舎で正月の福袋を(紳士モノの売り場で)父のために買った際、中に立派な(小生には高級すぎる)折傘が入っていた。が、父は何本も傘を持っているということで、その折傘は小生が貰い受けた。
その傘を今も使っている。
でも、そんな立派な傘は、普段は仕舞いっ放し。お世話になるのはビニール傘である。
さて、話が戻るが、別に素材がビニールである必要はないのだが、とにかく透明な傘、それも、利便性を考えると折り傘タイプで、布地が透明の傘が売り出されないかと思う。
雨の日、雪の日だと、ただでさえ視界が天候事情で限られがちなのが、傘を差すと、その傘の布地で一層、視野が遮られてしまう。せめて、生地が透明であることで、視界の多少の確保が得られるのではなかろうかとも思うのである。
同時に、無粋な小生ではあるが、雨、あるいは雪でもいいのだが、そんな傘の必要な町、でも風情ある落ち着いた雰囲気の町の風景を愛でたいという思いがあるからである。
| 固定リンク
« 七夕幻想 | トップページ | 天の川…星への想い »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- ナボコフからクンデラへ(2025.02.07)
- 耐震シェルター欲しい!(2025.02.06)
- 「寿司といえば、富山」(2025.02.04)
- あなたを・もっと・知りたくて(2025.02.03)
- 夢で目覚める日々(2025.02.02)
「思い出話」カテゴリの記事
- 浜辺の古木(2025.01.26)
- いつか掃除機も綺麗にしたい(2024.12.31)
- 身を粉にして柴作り(2024.12.27)
- 入浴も体力消耗の因?(2024.11.28)
- タクシードライバー談義(2024.11.19)
「駄洒落・戯文・駄文」カテゴリの記事
- ナボコフからクンデラへ(2025.02.07)
- 柳 宗悦著『民藝四十年』に学ぶこと多し(2024.11.11)
- 生け垣の補修はしたものの(2024.10.01)
- 「昼行燈2」を夜になって書いた(2023.09.16)
- 新しいスマホで野鳥を撮る(2023.09.14)
「旧稿を温めます」カテゴリの記事
- 夏の終わりの雨(2024.09.04)
- 休日なのに本が遠い(2024.08.27)
- 菌類が世界を救う ?!(2024.08.26)
- モモやリンゴやシジミにアサリ(2024.08.20)
- 水の流れが変わった!(2024.08.12)
「富山散歩」カテゴリの記事
- 重慶の前に錦州爆撃があった!(2024.12.22)
- ぬるま湯の茹でカエル(2024.12.19)
- 黒blackと炎flameはみな同じ語源を持つ(2024.12.17)
- 竹にまつわるエトセトラ(2024.12.12)
- 水鳥たちはいずこへ?(2024.10.22)
コメント
弥一さんおはようございます。お久しぶり。ビニール傘、透明がおすきですか。僕は黒が好きです。とはいえいつ雨がふってもいいように折りたたみをつねに鞄に入れています。ビニール傘、百円ショップで簡単に買えますね、何でも売っているもので、ぼくの腕時計も百円ショップで買いました、笑。しかし電車のなかで傘を忘れる人多いですね。あと普通の傘は美術館等では持ち込み禁止でいちいち警備員が指図するから面倒です。さて母が特別養護ホームに入ってもう五年になります。立川昭和記念公園の花火大会はモノレールから花火見ることができます。今年も花火の季節になりました。雨ふらないといいのですが。富山は花火大会ありますか?息抜きにご両親をお連れするなんていかがでしょう
投稿: oki | 2010/07/09 07:46
okiさん
ビニール傘、透明だから便利だと思うんです。
透明なら材質は何でもいいのですが。
腕時計、小生も百円ショップで買いました。百円では買えなかったけど。
今年もそろそろ花火大会の時期ですね。
富山県でも、幾つも花火大会があります。
とんな中、富山市での(北日本新聞主宰の)花火大会は、半世紀にわたる歴史を持つ由緒あるモノです。
「北日本新聞納涼花火は、その空襲で命を落とされた方々への鎮魂の花火大会」なのです:
http://atky.cocolog-nifty.com/bushou/2007/08/post_25ad.html
投稿: やいっち | 2010/07/15 20:34