現代のヒーローは
じっくり観て楽しむわけにはいかないが、食事の際などに、録画しておいた映画版「眠狂四郎」を二作品、流し見た。
ある年代以上の方なら馴染みのあるキャラクターであり作品であり、人物像であろう。
→ さいとう・たかを作「無用ノ介」 連載されていた「週刊少年マガジン」(講談社)は、大学生になっても、ずっと読み続けた。テレビドラマは、凝った時代演出、舞台設定で見応えがあった。画像の絵は、小生が中学生の時に描いたもの。
「『大菩薩峠』(中里介山著)の主人公机竜之助に端を発するニヒル剣士の系譜」を継ぐ人物。
柴田錬三郎の小説作品で、「1956年5月から『週刊新潮』に連載された「眠狂四郎無頼控」で初登場」という。
はっきりとした記憶はないのだが、テレビでの再放送もだが、映画館で観たように思う。
ニヒルの系譜。「平然と人を斬り捨てる残虐性を持つ」というが、妙に独特にゆがんだ風にだが、モラリストでもあるように見受けられる。
ホントにニヒルだったら、ニヒルに対してもニヒルなり、世を浮かれ流すに違いない。
ゴツゴツと、あちこちでぶつかりトラブルを起こすなんて、頑なに守り通すものがあるからなのだろう。
平幹二朗や田村正和、片岡孝夫と、いろんな俳優が演じたが(驚いたことに、一番最初は、鶴田浩二だったらしい)、小生にとっては、やはり、市川雷蔵に尽きる。
ストーリーは当時、何故か流行った、御落胤とか、公儀の秘密とかを巡って、忍者らが暗躍する。
見所は、「円月殺法」という殺陣のシーンなのだろうが、
虚無的な雰囲気を漂わしつつ、妙にいい女に深く関わり、映画では、必ず、美女の裸身を垣間見せるシーンがある。
ガキだった小生には、そのシーンこそが楽しみだった。
接して漏らさずではないが、ニヒルだからこそ、女に持てるのかなーなんて、見当外れの想像を逞しくしたりしたものである(実際、逸物も逞しくさせてもらった最初の映画の一つだ。あとは、例えば、「007」など。初めての射精の原因か)。
以後、たとえば、テレビでは、「あっしには関わりのねぇこって」という科白で一世を風靡した、中村敦夫主演の「木枯し紋次郎」(笹沢左保原作)とか、さいとう・たかを作の「無用ノ介」(伊吹吾郎が主役に扮した)とか、何故かニヒル系の主人公が活躍するドラマが持て囃された。
あるいは、高倉健や鶴田浩二らが主演してヒットした東映ヤクザ映画も、系譜は違うだろうが、時代に背を向けるという点で、何処か同じ匂いを感じてしまう。
もう、ほとんど忘れられた存在なのか、天知茂の主演した「非情のライセンス」シリーズ(原作は生島治郎)も、ハードボイルドだということ以上に、ニヒルな雰囲気を醸し出していたように感じていた。
時代は、高度成長期に突入し、戦後の混乱期を脱し、誰もが経済的(生活の上での)向上に狂奔し始めている。
そんな時代だからこそ、流れに付いていけない、行く気にはなれない、背を向けてしまう人間こそがヒーローだったのだろう。
見つめなおすべきなのかがあるはず、なのは分かっていても、大概の連中はエコノミックアニマルと化して、大切なことを忘れるか、敢えて目を背けて物的な豊かさという一点で日本人が総白痴化してしまう。
どんな場合でも、流れに抗する人間は、理想のヒーローであるかどうかは別として、悲劇(時には喜劇)のドラマの主人公に相応しいのだ。
← 雨が降るかと、ヒヤヒヤしながら、バイクでの未明の仕事。なんとか持ってくれて、ホッとして車で帰路に。
ストーリーはほとんどの作品が単純そのもの。というより、ドラマの複雑さやテーマの深刻さとか面白さより、主人公のキャラクターに感情移入していたのだし、共感できるヒーローに憧れていたのだろう。
今の時代にヒーローはありえるのか、なんて大仰な問い掛けはしない。
ワールドカップで全力を尽して闘った選手たちこそがヒーローなのだろうし、とにかく何かしらに夢中になれる、自分の全てを賭けられる、そんな人生を送っている人間こそ、脚光を浴びようが日陰の存在だろうが、凄い人だと思う、今はそれだけである。
(10/07/02 作)
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