扇風機をめぐるあれこれ
今朝のツイッターで誰かが扇風機のことでツイート(投稿・呟き)していた。
暑く寝苦しいので扇風機を終夜、回しておきたいが、体への心配もあるし、かといってタイマーが故障していて、寝入る時だけ使うってわけにもいかない、云々。
→ 「川崎型電気扇」 (画像は、「扇風機 - Wikipedia」より)
知り合いの方のツイートではないので、直接の返事はせず、扇風機を(もし強弱の切り替えが可能なら)弱に設定し、(もし可能なら)首振り機能を使い、且つ、扇風機の向きを体に向けるのではなく、壁に向け、間接の風が体にやんわり当たるようにすれば、それほど体への影響を心配せずに済む、なんてことを勝手に呟いてみた。
(残念ながら、小生のツイートはその方には読まれなかったようで、返事のツイートはなかった。)
小生には、数少ないながら、扇風機にまつわるエッセイがある。
一つは思い出話で、「猫と扇風機の思い出」である。
「猫扇(ねこせん)」などと略称されたりした隣室の飼い猫に絡む思い出話で、小生の拙稿の中では比較的読まれたほうの部類に入る。
他に、「扇風機のこと」と題した、これまた思い出話風なエッセイがある。
せっかくなので、後者を一部割愛してブログに載せる。
(「扇風機のこと」より)
記憶を辿ると、我が家に扇風機がやってきたのは、昭和三十年代の後半だったろうか。
我が家の近隣は、一帯のほとんどが田圃や畑、そうでなければ野原(!)で、集落風に寄り添うように農家が散在していた。目を閉じると、村から町になりたての光景が浮かび上がってくる。
夏ともなると、家の方々の戸や窓を開け放つ。泥棒さんだろうが、近所の方だろうが、その気になればいつでも、どの部屋へでも入り込める(昔の話!)。
実際、小生が物心付く以前、昭和三十年代に入りたての頃、我が家に泥棒さんが入られて、警察騒ぎになったとか。
田舎のこととて、そして当時のこと、泥棒さんがいらっしゃるなど、全くの想定外の事態だったのである。
そんな開けっぴろげの家。風は方々から入るし、何処からでも脱け出ていく。目の前には稲穂の原。その海原を渡って、風が吹き寄せてくる…。
はずなのだが、そうはいつもいつも風が来てくれるわけもない。ピタリと風が止むこともある。
凪。これが困る。簾もカーテンも、暖簾も洗濯物も微動だにしない。こうなると、団扇だけが頼りである。バタバタ、バタバタという団扇の音。
父は、夜や日曜日など、部屋に居る時は、ステテコ姿になり、上半身は裸。その肩に濡れたタオルなどを懸ける。濡れたタオルが体温で時の経過と共に乾いていく。その間、気化熱で火照った体の熱が奪われていく。少しは涼しくなる、という理屈である。
が、我が家で上半身だろうと、裸になれるのは父の特権であり、母たち女性陣はそうはいかない。
小生にしても、シャイというか、せいぜい、短パンにランニングシャツ姿が限界である。汗が滲むなら、ひたすらに団扇に依存するしかなかったものだ。
それが、或る日、とうとう我が家に扇風機がやってきた。文明開化の恩恵が我が家にも及んできたというわけである。
我が家にテレビが来たのと、扇風機がやってきたのと、一体、どっちが早かったのだろう。さすがに扇風機だったろうか。多分、値段からしても、そうだろうけれど、小生は覚えていない。
部屋に一人だけなら、扇風機は独り占めである。
が、居間(茶の間)で家族団欒の時となると、扇風機にしても、首振り機能を使い、こちらとしては、一定のリズムでやってくる風をひたすら待つしかない。
← 遠い記憶の中の我が家の近隣風景。田圃。藪。畑。農道。砂利道。肥溜め。観音堂。小川。野原。散在する農家。一軒だけポツンと、コンクリート製の二階建ての家。田圃の隅っこの墓地。
扇風機が首を振る。ファンが自分のほうに向いてくる。風が来る。弱い風が次第に強くなり、また弱くなり、過ぎ去って、風がなくなってしまう。誰か他の人のところに吹いている。その風が、暫時の後、また、こちらに近づいて来る。強くなる、そして弱くなる。
夏の夜、茶の間では、そんな繰り返しが就寝の時まで続くわけである。
床につく時には、扇風機には頼れない。蚊帳など釣って、その中に入る。
暑さが峠を越したとはいえ、まだ耐え難く暑い。寝苦しい。じっとしていても汗が滲む。
またまた、団扇をバタバタさせて、束の間のささやかな風を起こし、ひたすらに睡魔の到来を待ち望む。暑く長い夜の日々が一夏、続くのである。
小生が学生の頃、小学校、中学校、高校を問わず、エアコンは勿論のこと、教室には扇風機もない。
夏の日、休憩時間にグランドに出て野球などして、汗だくになって、さて、チャイムが鳴ると、教室に戻る。暑い。汗がダラダラと流れる。下敷きを団扇代わりにして、あるいは襟元を大きく広げて、襟をパタパタさせて気休めの風を胸元に流し込もうとする。
授業時間が過ぎていくと共に、やがていつしか汗が引いていき、授業が終わる頃には、背中に張り付いていたシャツも、肌から離れている。
でも、休み時間になるとまた外へ飛び出して遊びまわって、汗まみれになり…と、同じ事を繰り返すのだった。
小生が高校三年の五月。我が高校が理科棟などを残して全焼したことがあった。
文字通りの全焼だった。
夜の十時半頃だったか、友達から電話で高校が火事だと告げられ、小生は自転車を飛ばした。十数分ほどの距離に校舎がある。火事は真っ盛りだった。人盛りが凄い。熱気が凄い。
消防車が何台も学校の近くに止まっていて、懸命の消火活動を繰り広げていた。
夜空を焦がす紅蓮の焔、なんて紋切り型の表現に真実味を覚えた。
木造校舎である。呆気ないほど他愛もなく校舎は燃えていく。紅蓮の焔が校舎を舐めるように飲み尽くしていく。瞬間、夜の空に燃え上がる炎が綺麗だと不遜な思いに囚われたりした。
翌朝、学校に行くと、そこには灰燼に帰した、黒焦げの板切れの原。それこそ、出来て間もないコンクリートの研究棟と、門など以外に原形を留めているものはない。
火事の原因は、煙草の不始末だったという噂(それどころか、放火という説もあった)が一部に広まっていたが、さて、現場検証の結果はどうったのだろうか。
うやむやに?
受験校でもあったし、急遽、校舎が作られた。夏休みの頃(前か二学期が始まるまでにかは覚えていない)までには出来ていた。
といっても、本格的なコンクリートの校舎が建てられるまでの繋ぎの、プレハブの校舎だった。
燃えたのは五月。我が郷里は五月を過ぎると、フェーン現象などが生じて、情容赦のない暑さに見舞われる。夏になれば、暑さは耐えがたいものとなる。
その最中、プレハブでの学校生活というのは、悲惨なものだった。
→ 暑中見舞いなのか、プレハブ校舎で勉学に励む我らにプレゼントされた「氷柱」。教壇の脇、入口付近にデーンと! (画像は、「iceshop(旭氷業有限会社)氷屋、氷のお届け、氷の販売、氷のご注文、氷の相談、氷に関すること、氷は任せて!:」より)
そろそろ夏休みが近づいた頃だったか、何処かからのプレゼントだったろうか、氷柱が教室に運ばれたことがあった。生徒の歓声が上がった。
授業中、次第に溶けていく氷の塊。授業より、その溶けゆく様が気になってならなかった。
それにしても、あとになって考えると、氷柱もいいが、扇風機をプレゼントするという発想までは浮かばなかったのだろうか、なんて素朴な疑問が浮かぶ。
扇風機はまだそれほど高価なものだったのだろうか。
まあ、当時としては、氷柱がすこぶるありがたかったのだから、それでよかったのだろう。
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コメント
おはようございます。暑苦しいのでこないだ扇風機出しました。今も首を振って動いています、(笑)冷房はなんかあまり作動しないようなので使いません。風鈴とか昔ながらのものもいいですね。何しろあまり電気代使いたくない。日が一番長いこの時期、電気を消してというキャンドルナイトもありますね。知人はサッカーオランダ戦のとき、サッカー見ずに近くのキャンドルナイトの催し事に出掛けたそうです。しかしサッカーのとき僕は電車に乗っていたのですが、スマートフォンで一生懸命見ている人多かったですね!さて暑い夏です、ご両親にも水分補給はしっかりさせて乗り切りましょう。スイカが食べたいぞ
投稿: oki | 2010/06/21 07:42
okiさん
コメント、ありがとう。
扇風機は暑苦しい日中だけ、それとも、寝入る際も使ってます?
サッカー、オランダ戦、小生も見てました。見逃したらアカンと、録画までも。
外出中だったら、仕事の手を止めても見るかな。
何年か前のWCのときは、営業中だったけど、車を回送にし、公園の脇に車を止めて見てたっけ。
そんなことも、思い出しました。
確か、テレビも見れるカーナビで。
今はスマートフォンとか、便利なグッズが増えましたね。
鬱陶しい梅雨、梅雨が明けたら暑苦しい夏、とにかく、乗り切ること。
お互い、平穏無事に行きたいものです。
投稿: やいっち | 2010/06/22 16:23