« 自殺する動機、増える生活苦 | トップページ | ツバメの巣を巡る小さな思い出 »

2010/05/17

澄明なる時

 空の様子や雲の流れ行くさま、太陽の姿の時間を追っての変化は、日々見慣れているはずなのだし、見飽きないのは何故だろう。
 微妙に形を変えているのだろう。
 とはいえ、昨日今日でそう変化するわけのものではないのだが。

2010_0515071003tonai0024

 それは、潮の満ち引きや木々の緑や葉っぱの風に揺れるさまや、もっと卑近なところだと緩んだ蛇口から垂れ零れる水滴を見飽きないのと同じ…なのだろうか。

 障子越しに蒼白い光が部屋の中に漏れ込んでいることに気付く。最初は暗闇だったのが、次第に薄明に変わって行く。まるで光の洪水だ。
 光の洪水。だけど、決して騒々しいものではない。むしろ静か過ぎるほどである。外の世界に漲っていた光が、窓のほんの僅かの隙間を通して足音を忍ばせて流れ込んできたのだ。そして部屋の中が青い光で溢れかえっているのだ。

2010_0515071003tonai0022

 それでも、走っているうちに橙色の灯りを遠くに見つけることがある。あれが目的地だ! なんとなくそんな気になってしまう。当てどなく走っていたのが、そこに筋道が出来たような気がする。はるかに遠いあの弱々しげな蝋燭の焔に会いに行くのだ。蛍の光にも似た命のささやかな慄きに触れに行くのだ。
 そのために生きているような、そんな気さえしてくる。

2010_0515071003tonai0019

 空が白みかけている。もう、帰らないといけない。誰にも気付かれないうちに家に入って、蒲団の中に潜り込むのだ。
 そうそう、鍵を閉め忘れちゃダメだぞ。
 そうして、朝になりお袋に起こされるまでの残り少ない眠りの中で、勇気がなくて実際には行けなかった、はるかな彼方へ、それとも限りなく透明な青い空へと旅する夢を貪るのだ。

2010_0515071003tonai0015

 最後に野暮な質問。
 場所を特定されない写真だけを見て、夕焼けか朝焼けの光景なのかを識別しえるでしょうか?

                             (10/05/16 作・編)

|

« 自殺する動機、増える生活苦 | トップページ | ツバメの巣を巡る小さな思い出 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

駄洒落・戯文・駄文」カテゴリの記事

旧稿を温めます」カテゴリの記事

富山散歩」カテゴリの記事

写真日記」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 澄明なる時:

« 自殺する動機、増える生活苦 | トップページ | ツバメの巣を巡る小さな思い出 »