澄明なる時
障子越しに蒼白い光が部屋の中に漏れ込んでいることに気付く。最初は暗闇だったのが、次第に薄明に変わって行く。まるで光の洪水だ。
光の洪水。だけど、決して騒々しいものではない。むしろ静か過ぎるほどである。外の世界に漲っていた光が、窓のほんの僅かの隙間を通して足音を忍ばせて流れ込んできたのだ。そして部屋の中が青い光で溢れかえっているのだ。
それでも、走っているうちに橙色の灯りを遠くに見つけることがある。あれが目的地だ! なんとなくそんな気になってしまう。当てどなく走っていたのが、そこに筋道が出来たような気がする。はるかに遠いあの弱々しげな蝋燭の焔に会いに行くのだ。蛍の光にも似た命のささやかな慄きに触れに行くのだ。
そのために生きているような、そんな気さえしてくる。
空が白みかけている。もう、帰らないといけない。誰にも気付かれないうちに家に入って、蒲団の中に潜り込むのだ。
そうそう、鍵を閉め忘れちゃダメだぞ。
そうして、朝になりお袋に起こされるまでの残り少ない眠りの中で、勇気がなくて実際には行けなかった、はるかな彼方へ、それとも限りなく透明な青い空へと旅する夢を貪るのだ。
最後に野暮な質問。
場所を特定されない写真だけを見て、夕焼けか朝焼けの光景なのかを識別しえるでしょうか?
(10/05/16 作・編)
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