イルミネーションよりイリュミナシオン?
冬の間、富山の町を彩っていたイルミネーションの試みも二月いっぱいで終わり、今月に入って機材の取り外し作業に入っていた。
東京でもだが、富山でもイルミネーションで夜の町を彩るという発想。
キラキラして綺麗、ではあるが、上滑りという感があって、どうも馴染めない。
← 二月末、富山城前の広場にあった電飾。綺麗だねー。
街が賑わうことが一番なのだろうが、そうもいかないから、代わりにせめて電飾で賑やかしている、そんな風に思えたりする。
素直に楽しめないのは、小生の感性が貧弱なのだろう。
こんな感じ方は、不景気のどん底にある富山だから覚えるのかと思ったら、東京在住時代も似たようなものだったことを証しするエッセイがあった。
感じ方が一貫している?
考えようによっては、小生の人間的な成長が止まっている、という見方もありえなくはない。
(前略)
ところで、街中で電飾を纏わされた木々や植栽などを見て、これって植物を虐待することにならないのだろうかと心配したことがある(人工の樹木などは別儀だ)。
でも、懸念を抱くだけで、黙っている。
小生などが、こんな取り留めのない杞憂を抱いたところでどうにもならないし、下手に口にすると、独り者のやっかみと受け止められかねないし、どっちにしても野暮である。みんなが楽しんでいる時は、自分も楽しめばいいわけだし、どうしても楽しめないというなら、黙って薄暗がりに引っ込んでいるのがいいのだ。
それでも気にはなる。無数の電球が樹木の枝葉一杯に纏わせられている。細いとはいえ電線が縦横に走っている。結構、背負う重量だけでも負担になるに違いない。
しかし、植物は丈夫だから重さだけなら耐えられるだろうとは思う。雪国育ちの小生は、雪に降り積もられ枝葉を思いっきり撓らせて重みと冷たさに耐えている樹木の姿を見つめてきた。
ガキの頃は、自宅の庭木に積もる雪を物干し棹か竹の棒で突っついて、少しでも樹木の負担を減らしてやろうと努めたものだ。三十センチほども積もった雪を払うと、枝葉が自由を回復したかのように、思いっきり伸びをする。
(中略)
が、電球の明滅にはどうなのだろう。樹木のことも、電気のことも素人の小生には判断が付かない。
人は、たとえば、犬や猫などのペット類に電飾を纏わせようと思うだろうか。可愛い余りなのだろうけれど、犬に衣服を着せてやったり、雨の日の散歩など合羽を纏わせている光景に遭遇することがある。あれって、無駄だし、無駄以上に実は犬を虐めていることになるんじゃなかろうか…?
でも、そんな猫っ可愛がりする人も、犬や猫にイルミネーションを施そうとはしない。
犬や猫と植物は違うって?
そうなんだろうか。植物だって生き物じゃないか。仮に植物の体に電飾から洩れるかもしれない電気が流れないのだとしても、植物の神経(そんなものがあるのかどうか知らないが)を苛付かせることは間違いないような気がする。
これって、ただの杞憂、気のせい、心配のし過ぎなのだろうか。
→ 「TOYAMA CANAL PARK 2010」 (画像は、「イルミネーション 富山県の無料夜景壁紙 Page.1」より)
庭やベランダの植栽や、樅の木、ハナミズク、欅(けやき)などへの電飾は、通電されるのは夜の一時に過ぎない。電気が洩れることはない。豆電球だから光の刺激も弱い…(近年ならLEDだから、尚、植物などへ与える影響は少ない…とか)。
スポットライトは? これは拙い。ハロゲンランプはかなりの負担になることは誰にも分かる。光だけじゃない、熱だって強烈に発生する。だからスポットライトを植物の間近で照射するのだけは避けるべきだ…が、しかし、他の豆電球類だったら構わないのだ…。
構わないって、一体、誰が構わないと云ったんだろう。誰が大丈夫だと保障したのだろう。
結局のところ植物、特に立ち木の類いの多くは丈夫で、夜の一時(でも、この夜間の光の喧騒が一ヶ月余りも続くのだが…)くらいチラチラする豆電球の(これまたやたらと数が多い)可愛い光の明滅を受けたって、どうってことないのだ …。電飾だって、防水加工してあるものを使うし…。ホント?
ま、小生が聞き耳を立ててみても、電飾による樹木への悪影響云々という話は、あまり(全然だったかな)聞いたことがないので、樹木への実害がないのだろう(と思いたい)。
立ち木の皆さん、人間が楽しむためなのです、年末の一ヶ月あまりは辛抱してくださいってことか。
でも、素朴な疑問なのだが、電飾が威力を発揮するのは夜である。当然だろう。昼間に電飾に通電されていたら、消し忘れられた工事現場の誘導灯のようなもので、ちょっと間抜けだ。
電飾は、夜にこそ点灯される。
だとしたら、窓やベランダの手すりに電飾されるように、人工の樹木を(レンタルなどで)用意して、そこに電飾を施せばいいのではないか。
どうせ、夜だから、樹木が本物かどうかは分からない。それより、闇夜の中に煌く光のページェントこそが命なのだし、そもそも電飾というのは、幾分か離れた距離から眺めるもののはずだから、尚更、電飾の土台となる木々は本物である必要がないはずなのである。
ああ、しかし、やっぱり自分は野暮な人間なんだなと、つくづく思ってしまう。
余計なことなど考えないで、ただ、イルミネーションをイルミネーションとして楽しめがそれでいいものなのに。これだから、世間の仲間入りが出来ないんだな、こんな感懐を抱いていては、イルミネーションを楽しめるはずもない。
せいぜいイリュミナシオンの一節でも、闇夜の中で嘯いているのがお似合いなのだ。但し、Voyan(ヴォワイヤン=見者)ならぬ小生は、想像の中で薬物を使い放蕩の限りを尽くす、しかも、お茶を啜りつつ。
それにしても、イリュミナシオンのなんと幻惑的でエロティックなことか!
← 月影の眩さに敵うはずもなく。
永 遠見つけた。
何を? ─永遠を。
太陽とともに消える
あの海、その瞬間。ランボー
(02/12/19 作)
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コメント
夜の市街地に出かける機会がなかったので城址公園付近の電飾はわかりませんが、駅北のブールバール(最近この呼称、耳にしなくなりました)のそれは“寒々しい”もので、寒さ寂しさを電「殖」しているかのようでした。樹々への負荷、悪影響を語る論料をもってないのですが、私などむしろもっと樹々(樹形やその連なり)を巧みに生かし見る者を感嘆させるようなファンタジーイルミネーションができないのかと思います。それができないのなら樹々に負担を強いるものまねイベントはやめた方がいいと思います。このあたりで、やいっちさんと考えが重なります。
もう3月になりましたね。我がこころに鬱々と潜む漠とした不安は雪とともに消え去ってしまうわけにはいかないようです。
投稿: かぐら川 | 2010/03/05 23:43
かぐら川さん
寒い時期に青色や白色の電飾なんて、ちょっと不自然。
寒々しくなるのは当然だと思う。
まあ、クリスマスなど、短期にはいいだろうけど、冬の間中、寒色を光らせるのって、考え直したほうがいいと思う。
東京タワーは、夏場は寒色、冬場は暖色(オレンジ色)の照明でライトアップします。
これだと、多少は配慮というかセンスが感じられて、許せる範囲かなと思います。
富山城のお堀脇の電飾については、樹木じゃなく、鉄(アルミ?)枠の構造物を設置してイルミネーションしているから、いいようなものの、でも、寒々しいという印象に変わりないですね。
それより、街の賑わい(店舗ごとの照明とか)こそが一番の活気だし、望ましい。
それが不景気で疎らだから、尚、電飾の寂しさが際立つのでしょう。
まあ、みんな不景気が悪いんやー、というところでお茶を濁しておきます。
投稿: やいっち | 2010/03/06 13:58