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2010/03/22

ダワーの新著で知った<国威発揚映画>の真価

 ジョン・W・ダワー著の『昭和 戦争と平和の日本(JAPAN IN WAR AND PEACE)』(明田川融監訳 みすず書房)を読み始めたのだが、自分の素養のなさもあろうが、随分と教えられること、考えさせられることが多い。

Hawai_mare_oki_kaisen_poster

← 「ハワイ・マレー沖海戦」 (画像は、「ハワイ・マレー沖海戦 -Wikipedia」より)

 といっても、まだ、冒頭の三十頁ほどを読んだだけなのだが、それでも、引用したり、知った事実を元に何か書いてみたい衝動に駆られることが、随所にあったし、ある。

 ジョン・W・ダワーの本を読むのは、「『敗北を抱きしめて 上・下』(三浦陽一・高杉忠明訳、岩波書店刊)」以来だから、8年ぶりとなる。
 本書もなかなか読み応えがありそう(現に既に実感させてもらっている)。

 本稿では、本書の感想ということではなく、本書の「2 日本映画、戦争にへ行く」にて採り上げられている、日本映画をコメントや感想を抜きに列挙する。
 後日、機会があれば観てみたいという意味合い(願い)もこめて。

 著者のジョン・W・ダワーによると、戦争直前や戦争中の国威発揚的な日本の映画のはずなのだが、随分と出来がよくて、当時のアメリカの映画の消息通が出来栄えを高く評価しているという。
 アメリカの当局が日本の国情や風俗などを知るために日本の映画を研究するのは理解できるとして、純粋に映画として完成度が非常に高く、映画によっては、戦闘のシーンがあまりにリアリティがあったため「本物の戦闘シーンを撮ったものと信じこみ、オリジナル・フィルムを探すのにわざわざ時間を割いたほど」、なんてエピソードもあったりする(下記する「ハワイ・マレー沖海戦」で、「特撮:円谷英二」とあれば、さもありなん、であろうか)。

 まあ、詳しくは映画の専門家やマニアに任せるとして(あるいはリンク先を覗いてもらうとして)、上記したように、ここでは採り上げられ論評されている映画の数々(の一部)を順不同で列挙するに止めておく。

 とにもかくにも、従軍した画家らの描いた戦争の絵も含め、単純に国威発揚とか、国策に沿っただけの作品と看做すには余りに勿体無いとだけ、付記しておく。

西住戦車長伝」  昭和の軍神西住戦車長の逸話
(1940 松竹大船 監督:吉村公三郎 出演者:上原謙、佐分利信、笠智衆、桑野通子ほか)

 第二次世界大戦前の支那で大活躍した、久留米戦車第一連隊の小隊長であった西住小次郎中尉(死後大尉)の伝記映画。昭和はじめての軍神と呼ばれた西住中尉は、剛毅実直で部下思いの名指揮官であったと言われ、必ず戦場偵察には自ら赴き、支那人に対しても心優しい配慮をするなど多くのエピソードを残している。徐州包囲戦で自らの偵察によって敵弾を受けて戦死するまで、第二次上海事変、南京攻略戦と30回にも及ぶ戦車戦を指揮している。

五人の斥候兵
(1938 監督 : 田坂具隆 出演者:小杉勇 見明凡太郎 井染四郎ほか)
 日中戦争を描いている。1938年ヴェネツィア国際映画祭においてイタリア民衆文化大臣賞、キネマ旬報により1938年の日本映画ベスト・ワンに選ばれている
 北支戦線の前線基地、岡田部隊長は兵たちに休息を取らせながら、今後の方針を検討していた。翌日いやがる負傷兵を病院車に乗せると、本部から敵陣の様子を探るため斥候を出すよう伝令を受けた。そして、藤本軍曹以下五人の斥候兵が敵陣へと向かった…。戦中、戦地の兵隊の勇猛果敢な様子を銃後の人々に見せて戦意高揚を図ろうと作られた映画のひとつ

チョコレートと兵隊
(1938年、東宝映画、小林勝原作、鈴木紀子脚色、佐藤武演出作品。製作主任は本多猪四郎)
長らくアメリカに没収されていて、あちらで、日本人研究用に使用されていたらしい幻の国策映画。
本作を観たフランク・キャプラをして、「このような映画に我々は勝てない。こんな映画は10年に1本作れるか作れないかであろう。大体役者がいない」と言わしめたという作品である。
 
(註:フランク・キャプラ 「誰か昭和を想わざる チョコレートと兵隊」参照)


戦ふ兵隊/戦う兵隊
(1939年 監督 亀井文雄)

 当時派手に喧伝された武漢作戦に従軍する兵士や戦地の住民の姿を捉えたドキュメンタリー。
 撮影の三木滋・撮影助手の瀬川順一・録音の藤井慎一と亀井監督が従軍して撮影。戦闘シーンはあまり無く(一部あるが、再現シーン臭い)、戦火に焼かれた農村や漢口の街並み、焼け出された中国人たち、そして戦いに疲れて休息する陣中の兵士の姿などを克明に映し出している

 これは「戦う」兵隊ではなく「疲れた」兵隊だ、と試写を観た軍の関係者が洩らしたという逸話の残る『戦う兵隊』
(「「PJ NEWS 192 - 『戦う兵隊』反戦平和の映画監督、亀井文夫のメッセージを舞台化=26日から28日、あんがいおまる一座が上演」や「戦う兵隊を観て 『創作の箱』 別館-短信-」を参照のこと。)

ハワイ・マレー沖海戦
(監督:山本嘉次郎  特撮:円谷英二 出演:原節子 大河内傳次郎 黒川弥太郎 木村功 花沢徳衛など)
 

1942年に海軍省の至上命令によって東宝映画が製作、社団法人映画配給社配給で公開された戦争映画・国策映画である。情報局国民映画参加作品。
1941年(昭和16年)12月8日の真珠湾攻撃および12月10日のマレー沖海戦の大勝利を描き、国威称揚させることを目的として、海戦の翌年に開戦一周年記念映画として1942年(昭和17年)12月8日に公開された。戦後も東宝の配給で再公開されている[1]。戦時下に作成された戦争映画の白眉である。

07517

← ジョン・W・ダワー著の『昭和 戦争と平和の日本(JAPAN IN WAR AND PEACE)』(明田川融監訳 みすず書房)


ジョン・ダワー関連拙稿
ジョン・ダワー著『敗北を抱きしめて』雑感(1-3)

                                 (10/03/21 作)

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